支離滅裂

 触れようとすると傷つけるから、少し間をあけて、落ち着いたのを見計らって、そうしてやっと触れてみたら、やっぱり傷つけられて、私は、どうしてこんなことばかりしてしまうのでしょうね。今更愛されたいというのでしょうか。けれども私はあなたを愛せそうもないのです。毎回毎回、意思を持ってなのか、それとも無意識なのか知りませんけど、傷つけてくるあなたを、私は殺したいほど憎んでいます。しかし、救われてほしいとも思っております。

 今すぐに湯を張った風呂桶に頭を押し込んで、暴れても、私の腕を掴んでも、決してその力を緩めてやりたくないと思うのと同時に、もし、私があなたの親なら、配偶者であったなら、誰にも傷つけられぬように、傷つけられても優しく抱きしめてやれるようにしたいと、そう思ったりもするのです。

 哀れなあなた。私は絶対にあなたみたいにはなりません。けれどもあなた。その呆れる行為はきっと仕方のないことなのでしょう。仕方のないことだけれども、私にはそれが言い訳にしか聞こえず、あなたは言い訳を私に叫びながら、ずっと足を引っ張ってきた。

 助けてほしい時には必ず助けてくれず、自分の立場を使って私を屈服させたい時にだけ身を乗り出してでしゃばってきた。そうして周りの大人たちも愚かですから、私よりもあなたの言葉を信じるんです。一晩中、布団の中で泣きながら、確実な人の殺し方を考えたことがありますか。ぬいぐるみを抱きしめながら、大丈夫と唱え続けたことがありますか。

 ああ、もう、私は憎いのです。いいですか、あなたを殺してやりたいのです。もしかすると、これは愛なのかも知れません。もしくは祝福かも知れません。

 愛しいあなた。私は絶対にあなたにはなりたくないのに、年々あなたに似てきます。声が、言動が、嫌味が、死にたくなるほどに似てきます。

 私を産んだことで不幸になったような顔をしているあなた。だったら私を殺してくれればよかったのに! 私は、こんな思いをしてまで、生きながらえたくなかったのに!

 よろしいですか、私はあなたを憎んでおります。殺してやりたく思っております。これは祝福です。愛です。でなければ一体なんだと言うのだ。

 ああ、ああ、しかし、けれども、私は、だから、私は、祝福を受けたいだとか、愛してもらいたいとか、人を愛したいとか、そんなことは、もう言いません。もう誰も信じません。せめて、出来ることと言えば、この胸に刺さった無数の矢を、見ないふりすることぐらいです。

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