第8話 反省会?
「なあヘル、さっきの戦闘でオレは結局何も出来なかった訳だが……何かアドバイスは無いのか?」
「ん~そうですわねぇ、それでしたら今日はもう遅いですし反省会も兼ねて酒場でゆっくり話しませんか?」
ふむ反省会か。
オレもさっきみたいな凶悪なモンスターにいつ襲われるかも分からないこの場所で雑談をしたくないしその意見には大賛成だ。
「……因みにオレは金を持っていないが大丈夫か?」
「勿論奢りですわよ?」
ふぅ、ヘルが話の分かる奴で良かった。
「よしっ!今すぐ行こう!」
金を持っている方が奢る、これぞ正しい男女平等の在り方だよな。
オレ達は危険な草原を離れ、王都の酒場へと向かった。
▽ ▽ ▽
「まずは私のパーティ加入をお願いしますわ……今のマズダ様ではソリトゥスはおろかそこら辺の魔物と戦うのもなかなか厳しいものがありますので、仲間は多いに越した事は無いでしょう」
ヘルは自身のパーティ加入を進言した後テーブルに置かれたジョッキに口を付けた。
ちなみに見た目がガキのオレには酒が提供されていない。
「パーティ……ここにはそんな概念もあるのか」
スライムを一撃で倒したヘルの実力は申し分ないし、これについて異論はないかな。
……しかしどうやって加入させればいいんだ?
そんな事を考えていると視界に突然【パーティ加入申請が来ました】という文字とその下に【はい】と【いいえ】の選択肢が映り込んだ。
「パーティ加入申請が来ました、か。こりゃ本当にゲームの世界だな」
「転移者達は口を揃えてそう言いますわね……でも、あながち間違いという訳でもないですわよ」
オレの独り言に対してヘルが少し気になる回答をする。
「どういうことだ?ヘル」
「マズダ様のいた世界と今いる世界、並行世界というものは相互に影響を受け合いますわ……卵が先か、ニワトリが先か?要は向こう側の世界のゲームという娯楽が実はこの世界の影響を無意識の内に受けて作られていたという訳なのですわ」
普段ド下ネタばかりのヘルの口から何やら賢そうな発言が出たのに普通に驚いてしまう。
そういやこの人、神様だったな。
「なかなか面白い話だな。でもそれならオレがゲームっぽいと感じる世界観や概念も実はこっちが元祖だっていうだけの話になるな」
ゲームっぽい世界ではなくて、そもそもその元ネタの世界か。
なにそれすげぇワクテカじゃん。
30のオッサンが失いかけていた情熱に少しだけ火を灯しながら、オレは視界に映り続けていた【はい】の選択肢を押す。
そしてパーティの欄に新しく追加されたヘルのステータスを表示させてみた。
名前:ヘルミリシア=クアドラプルメギストス=マンユ
性別:女
年齢:?
胸 :巨
異名:死と破滅の神
種族:神族
装備:滅獄の鎧
武器:無
レベル:50★
HP :2000
MP :2800
攻撃:155
防御:252+30
速度:400+100
魔力:666
賢さ :1000
運 :13
特殊スキル:【神族の制約】
「……何だこの化物みたいなステータス、もしかしてだけどヘル一人で世界を救っても大丈夫なんじゃないの?」
「いいえ、この程度ではとても不可能ですわね。神界からの力の一部しか発現出来ぬ私では基礎値だけでしたら歴代の勇者にすら遠く及びませんもの」
「これで一部だと、てか歴代勇者強すぎじゃね?」
マジかよ、あんな馬鹿げたステータスだぜ?
しかも歴代の勇者はヘルを超えていただと?
……自分のクソ雑魚ナメクジみたいなステータスを思い返して思うよ。
世界は広いな、悲しいな。
「そう悲観しないでくださいマズダ様、基礎能力はレベルを上げさえすれば伸ばす事は可能ですわ。それに歴代の勇者は力と欲望だけは十人前でしたが結局どれも無能の塊でしたし」
過去の勇者達をディスる事でオレを励ましている……つもりなのか?
「……結構ストレートにきつい事言うのな」
頼むから言う相手の事を考えてくれ、オレは力の無い欲望と無能の塊なんだぜ?
「いいですかマズダ様。過去にこの世界に来た勇者連中は一様に愛だの正義だのつまらない理想ばかりを語り……元の世界では部屋の隅っこでパソコンカタカタ弄ってシコシコしてただけの連中がですよ、反吐が出ますよね?」
「……ノーコメントで」
もしかしてヘルって酒が入ったらとんでもないタイプか?
「ですがマズダ様は彼等とは違いますわ。転移して尚、愛と理想なんていうくだらないものには興味もなく、陰湿で狡猾で掟破り……常識の通用しない破天荒な理想の……オスガキショタ。ごほん!噛みましたわ」
いや、噛んでませんよ?
……オスガキショタ?
何かとんでもない事を口走り始めたぞこの女神。
「確かにオレは、その先人達みたいな正統派の勇者とは言えん、邪道も邪道だ……だがそうなるのも無理は無いだろ?基礎ステータスを見てみろオレは落ちこぼれも良い所だぜ?」
古今東西あらゆるRPGにおいても基礎ステータスは偉大だ。
事実これが貧弱ならいくら強スキルを持っていてもスライムに殴り殺される程度の存在に成り下がってしまう。
「だがそれがいいんですわ!小生意気で反抗的なクソ雑魚ショタ勇者が!!」
ダメだコイツ、早く何とかしないと。
さっきからヘルが飲み過ぎで話が脱線しっぱなしだ。
ここに来た目的は反省会だったろうが。
酔っぱらいの相手ってこんな面倒臭いものなのか?
しょうがない、素面のオレが立て直すか。
「……それでそろそろ、草原での戦闘についてのアドバイスをですね……」
「はえ?そんなもん、レベルを上げて捻り潰すだけですわ!」
うおおおお!こいつ、めんどくせえええ!!
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