きみと一緒に居たいから

桜星 夢

第1章 学園最強決定戦

第1話はじまり

「なんでこんなことになるんだろうね。この人達は」


 1人の少女が下を見てつぶやく。



人は全てを理解できない生き物。なのにこうやって『契約』のままやることをやらなきゃいけない。望むならもう契約なんて要らないはずなのに。


「それじゃあ行ってきます」


 少女は悲しい表情のまま歩き始める。



これは1人の少女から生まれた世界のお話



 晴れた春の日、制服を着た一人の少女が走る。


黒い髪をなびかせながら橋を渡っていく。


(ついにこの日がやってきたんだ…)


 同じ制服の子達を避けながらひたすら走り続ける。


憧れだった紅葉学園への入学。期待と共に少女は校門に立つ。


「やっと入学かぁ!楽しみだなぁ〜!」


 桜咲く春、少女は紅葉学園に踏み入る。これから険しい道を歩み始めることを、まだ知らない……。

 


 入学式が終わり、教室に入るとみんなまだ周りを気にしながら静かにしていた。入学初日ってまだ話しかけづらいよね…。


 私は貰った席順の紙を見ながら周りを見渡し、自分の席を見つけるとゆっくりと座った。荷物を置き、しばらく静かに座っていると、隣りに誰かが座った。


 私は別にコミュ症ってわけじゃない。けど初対面だし……。ドキドキしながらもここは勇気を出して。


「こんにちは!私は夏風空!今日から隣の席だね。よろしくね!」


 こう言うのは元気よくだ! すると隣の人は私を見て丁寧に返事を返してくれた。


「こんにちは。私の名前はニエベス・ヘレナ。今日からお隣よろしくね」


 紫色ロングの彼女はとても気品の良さそうな女の子だ。育ちが良いのかな? 私とは対照的だなぁ〜。


 そんなことを考えてるうちに教室のドアが開き、先生が来た。


「今日からみんなの担任の野々原由衣です。まずは入学おめでとう! そしてこの新設校に入ってくれてありがとう」


 先生から祝福を受ける。新設校『紅葉学園』名校『茶葉学園』の新設校であり、設備や教育がすごくて入学を決めたんだ。まぁ、私は推薦で来たんだけどね。


「入学早々来週の学園最強決定戦のことだけど……」


 先生の言葉と同時にみんなが顔を輝かせる。それもそのはずだ。この学園最強決定戦でトップ四に入ると言うことは、世界で戦える可能性を秘めてる証拠にもなる。


「学戦楽しみだね!」


「私も……」


ニエベスさん、元気ないなぁ。緊張してるのかな?


「この学園最強決定戦でトップ四に入ることは、将来自分を支える力になるはずだから頑張ってね!」


 この世界ではプリズマ粒子という、酸素に近い粒子が存在していて、その力を応用して魔法を使っている。何より将来大切と言うのは、この先くるからもしれない戦いに勝たないといけないから。


「魔界ってどんなところなんだろうな」


クラスメイトの男の子が隣の子と喋ってる声が聞こえた。私にはまだ関係ないのかな、魔界なんて……。


午後の最初の授業は歴史だった。この世界はとっても不思議な世界。中学でも学んだけど、歴史ってやっぱり苦手だなぁ。


「あー、この世界は『天界』『地界』『魔界』の三つの世界で作られている。あー、私たちのいる世界は『地界』。地上で暮らす人々のことを指すのであって――」


 おじいさん先生の長い話は続く。


この世界は大昔には、とある少女を崇める派と否定する派が存在していた。その少女は人に力を与える力を持っており、それを嫌う否定派からの攻撃で戦争が起きた。

 

 数々の犠牲の上、負けた否定派が少女の作った魔界に連れ込まれた。そして崇められた少女は自分が争っていることを嫌い、一人天界と言う場所を作り逃げた。


 しばらく平和が続いた世界。しかしその数千年後、魔界の人間が地上を奪いにきた通称「地魔争奪戦グランデそうだつせん」のちに分かったらしいけど、魔界の人間たちが帰りたいと言う理由で戦いを仕掛けてきたらしい。しかしこの戦いは地界の圧勝で終わった。


 この戦いは、少女が天界におり力を授かることなく勝てたため、地界の人間は天界の少女を崇めなくても勝てることを学び、天界の少女を崇めることなく魔界を迎え撃つ戦力を整うべく、戦闘学校をたくさん作り若い子の教育に力を入れている。『帰りたい』と言うことはいずれまた襲ってくるかもしれないからだ。


 この話を聞いてると私たちも崇めることを否定し始めてるはずなのに、なぜ魔界の人間を受け入れないのかな? 元は同じ場所に住んでたはずなのに……。怖いから? それはまだ私には分からない。


「でも、なんでそんな一人の少女をずっと崇めるようなことしてたんだろう……。ニエベスさんはどう思う?」


ニエベスさんは先生に聞こえないくらいの声でその問いに答えた。


「崇められるほどの力……。その力があまりにも強大だったのか……それとも何か別の力があったのかも……」


「何かって?」


「それはわからないけど……」


 授業が終わり夕方。憧れの学園生活。中学の時は病んでた時期もあって、すぐにでもあいつを倒したかった。でも方法が分からなかった。だからここに来た。だから……。


「ニエベスさん!」


「どうしたの?」


今は学園生活をただただ楽しんで、学戦で一位になって。そして必ずあいつらを。


「一緒に帰ろ!」


空が差し伸べた手にニエベスは笑顔で手を伸ばす。

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