第6話 ライモンダ Raymonda

バレエ『ライモンダ』

Raymonda

曲:アレクサンドル・グラズノフ

振付:マリウス・プティパ

初演:マリインスキー劇場 一八九八年


登場人物

ライモンダ(伯爵家の娘)

ジャン・ド・ブリエンヌ(十字軍の騎士)

アブデラフマン(サラセンの王子)

白い貴婦人


(物語)

第一幕・第一場

 舞台は中世ヨーロッパ。十字軍が遠征を重ねていた時代の話です。

伯爵夫人の姪(とか娘とか)のライモンダはその美貌で有名でした。

 ライモンダの誕生祝いのパーティーに恋人のジャン・ド・ブリエンヌも招かれています。ジャンは十字軍の騎士です。ハンガリー王アンドレ二世と遠征にいくことになっているジャンはパーティーの席でライモンダにスカーフを贈ります。

 遠征に出向くジャンとの別れを惜しみながら、ライモンダは出征していくジャンを見送ります。


第一幕・第二場

 ライモンダはひとりジャンのことを思いながらリュートを弾きます。そして眠ってしまうライモンダ。そこへ白い貴婦人が現れます。


第一幕・第三場

 白い貴婦人はライモンダに幻を見せます。その中に見たことのない男が現れます。男はライモンダに求愛をします。ライモンダはその求愛を拒みます。目を覚ましたライモンダの前からは白い貴婦人も見知らぬ男も消え不吉な夢であったことに気が付きます。


第二幕

 ライモンダが待ち望んでいたジャンが遠征から帰ってくる日です。                                                                                         彼の帰還を祝うパーティーが開かれていました。たくさんの客人が招かれています。まだジャンが到着しないなか、次から次へといろいろな人がやってきます。

 そんな中、サラセンの王子アブデラフマンがやってきます。彼はライモンダの美しさを聞きつけ、遠くアラブの国からやって来たのです。

 アブデラフマンの姿を見たライモンダは驚きます。それはあの不吉な夢で見た、まさにその男だったのです。アブデラフマンは熱烈に彼女に猛アタックをしてきます。

(ここは演出によっていろいろ変わってくるところではありますが)

 アブデラフマンはかなり強引なのですが決して悪者ではないようで、美しいライモンダに熱烈にアタックしてくる感じです。


そこへジャンが戻ってきます。


そしてジャンとアブデラヒムの決闘となります。

決闘の末、アブデラヒムはジャンに敗れてしまいます。

敗れたアブデラヒムは死んでしまうのですが死ぬ間際までライモンダに思いを伝えようとします。


第三幕

ハンガリー王アンドレ二世のもと

ライモンダとジャンは盛大に結婚式を挙げます。




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「ライモンダ」というバレエ

 この作品の中でクライマックスとなるライモンダとジャン・ド・ブリエンヌのグラン・パ・ド・ドゥは随所にハンガリーの民族舞踊を思わせる振りがあるのと、哀愁を感じさせるような独特のメロディーの曲で構成されています。

 特に気の付くところとしては、この最後のクライマックスを飾る踊りでプリマ・ライモンダのヴァリエーション、プリマの見せ場の曲が全幕を通して一番暗い。

 プリマが最後に踊る曲は往々にして美しい曲であったり、華やかな曲であったりするものですが……

 ここでライモンダがアブデラヒムの死を悲しむ気持ちが表現されているという意見もあるようですが……

 そう言ってしまうと、何かライモンダが『いけない人』みたいになるんじゃないのかい?

と思ってしまいます。


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 ある有名な漫画家がこんなことを言っていたのを思い出します。

「物語に出てくる悪は完全な悪でなければならない、そこに少しでもいい人の部分を作ってしまうと、それを倒す主人公が悪者になってしまう……」と、

私の記憶上、完全に悪に徹したキャラクターはカリオストロ伯爵です。(ルパン三世カリオストロの城)

ちなみに「ある有名な漫画家」は「カリオストロの城」の作者ではありません。

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※十字軍について

中世、十字軍(crusaders)はもとはカトリック教徒がイスラム教徒から聖地エルサレムを奪還するために作られ何度も遠征を繰り返した歴史があります。全部で八回ぐらい遠征しているようで、最初の三回、四回ぐらいはエルサレム奪還が目的でしたが、第三回十字軍のときエルサレム巡礼の自由が確保されます。その後はエルサレム奪還というよりイスラム勢力との戦いになっていくようです。


 何の説明をしているかというと、実際の歴史として、第五回十字軍遠征(一二一八年-一二二一年)に関係した人物がハンガリー王アンドラーシュ二世とそれに合流したエルサレム国王ジャン・ド・ブリエンヌという人でエジプトに遠征したようです。

……なので、その頃のことが時代背景になっているのでしょうか。

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