静かな朝/西村麒麟 

カクヨム運営公式_文芸部

静かな朝

江ノ電に綺麗な梅雨のありにけり


貝の上に蟹の世界のいくさかな


初めての土地たくさんの夏燕


びつしりと魚を干して南風


座布団の涼しく並ぶ宿屋かな


夏の果さつと出て来る漁師飯


冷静に蠅を打ちたる女かな


東京へ再び青き山抜けて


立秋や金魚にも名を付けやらん


初めての趣味に瓢箪集めとは


八方は海や静かに赤とんぼ


桔梗のつぼみは星を吐きさうな


傷の無き秋の燕の翼かな


とびつきり静かな朝や小鳥来る


秋蝶のひらひらとまた海の方


抜け目なく星の流るる様を見つ


こほろぎの道やゆつくり考へる


母よりも先に目覚めて曼珠沙華


色鳥を障子の部屋に遊ばせて


また結婚案内状や栗をむく

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