第7話 ダンジョンとは?

 今回はノーマル辺りの譜面を想像したら成功したが、難易度を上げるとコントロールが効かなくなったり、脳への負担が大きくなったりしてしまうだろうから、要訓練だなと練習場で気付かされた。

 固有スキルを再び確かめた俺は、シルーナさんに連れられて受付にある個室でダンジョンへ入ることへの手続きをするべくさっき来た道を戻っている。

「ささ、二人とも入って」

 そうシルーナさんに言われ個室に入ると、ふかふかだけどしっかりと反発力のある、座り心地の良すぎるソファに腰かけた。

 俺はこのソファを、「さいきょーのそふぁー」と名付けた。

「じゃあ早速手続きを進めていくわね。先ず、ダンジョンに潜る為にはギルドの冒険者登録が必要になってくるわ。で、登録するにはさっきみたいに練習場で現在の実力を測る、簡単なテストみたいな物を行わなければならないの。そしてカノンは合格したってわけ。ここまでで分からないことはある?」

「大丈夫です」

「私も聞くの何回目かだから大丈夫!」

「そういえばセシルって付与魔法しか使えないって言ってたけど、どうやって登録したんだ?」

「私の場合はスキル使わずに、短剣の練習して登録して貰ったよ」

「わざわざスキルで登録って訳でもないんだな」

「そうね、少なからずセシルみたいにスキル以外で登録する人はいるわ」

 でもスキルが無いと辛いんだろうな。

「よし、次はダンジョンについて説明するわ。多分セシルからも聞いたかもしれないけど、ダンジョンは魔物の巣窟みたいなものよ。そして色んな場所に存在してるわ。あとはダンジョンによっても主に魔物の強さやドロップアイテム、階層の数が変わってくるの」

「ミュゲルーズムのダンジョンはどうなんですか?」

「そうね、一般的なダンジョンよりは少し浅めなのだけれど、下の階層の魔物が物凄く強いらしいわ。因みにダンジョン内でもし、致命傷を負ったとしてもこの冒険者カードの中には治療所に転移する魔法陣が張られているからダンジョンで死ぬことは基本ないのよ。それ故に下層の魔物が強いとギルド本部にも伝わってくるの」

「下層に行くと稀有なドロップアイテムがあったりするんでしょうか」

「そうよ。例えば中層辺りだとホーンの角、最下層だとドラゴンの牙だったりだったりあるわ。ギルドの壁にも飾ってあるの、ほら、あれとか」

 でっか! 牙であのサイズて、ドラゴンどれだけ大きいんだ。

 ゲームで見るドラゴンって意外と原寸大なのだと実感した。

「あんなデカい牙見たことねぇ。しかも牙があるってことは誰かが倒したってことですよね……」

「昔ね、異世界から来た、けんどう? の達人だって言ってた人が最下層まで行ってドロップアイテムだけ残していなくなったの。パーティを組んでたからそのメンバーがそう言っていた。けれど、死骸はなかったらしいわ。ギルドも良く分かってないのよ」

 ふむふむ、死んではいないけど見つからないというわけか。

 え、まさかドラゴンと相打ちで死骸すらも残さず消し去った説は無いよね……?

 まぁ、転移があるからないとは思うけど、転移より先になんてことも。

 無いと信じたい。

「つまりこのダンジョン、ミュゲルーズムのダンジョンの特徴は異世界人を元に帰すことが出来るのではないか、と考えられている。戦いで起きた靄で見えなかったらしいけど、倒した瞬間にはもういなかった、と。ダンジョンを踏破した者として、帰るに値したのではないか、と」

 ということは俺が元の世界に帰る方法はドラゴンの討伐、要はダンジョンを踏破するのみだ。

「あくまでギルドとそのメンバーの憶測にすぎないけれどね。カノンは元の世界に帰りたいって言ってたわよね、要するに最下層に居るドラゴンを倒す事が君の目標になるのではないかと。絶対帰れるという保証は無いけれど、可能性はゼロではないと思うわ」

「セシルと二人で、ダンジョンの踏破なんて出来ますかねぇ……

 踏破したのって今まででそのパーティだけだったり……」

「今までだとそのパーティだけだわ。ドラゴンと戦った人なら両の手で数えられるくらいのパーティ数いるわ。ただ二人組は聞いたことがないわね」

 だよなぁ、やっぱむずいよなぁ。スキルを上手く使いこなせるようになっても厳しいよな。異世界を楽しみたい気持ちもあるが、元の世界に戻りたいし頑張る他ない。

「左様で……それほど難しいことに挑戦しなきゃいけない訳ですか、元の世界に帰るには。やるしかねぇ、音ゲーマーの意地も懸けて」

「カノンが帰れるように私も頑張るよ!」

 なんていい子なんだ。俺より年上だけど、子って言いたくなるくらい幼げに見える。

「セシル、ありがとう。なんか助けて貰ってばかりいるなぁ」

「私はダンジョンに行けるんだし、嬉しいこと限りなしだよ!」

「と、そうこうしてる内にカノンの冒険者カードが出来たわ。はい、どうぞ」

「シルーナさん、ありがとうございます。このカード結構硬いですね」

「軽いけど一応金属で作られてるからね。文字は掘ってもらってるの」

「そしてこのカードには魔法陣が組み込まれている訳ですか。魔法ってすごいですね」

「私たちからすると当たり前だけれど、異世界の人から見たら普通じゃないことは確かね。逆に異世界の物は私たちにも普通じゃないわ」

「私がスマートフォン見たときはびっくりしたよ! 光るし物理的でも魔法的でもないのに動いたんだもん!」

「お互い様ですね。シルーナさん、早速ダンジョンに行ってみてもいいですか」

「もちろんいいけど、その前に。これ」

「短剣、とプレート。流石に装備無しは危ないですよね、ありがとうございます」

「私のは自分のがあるよー、ほら!」

「じゃあ気を付けて、最初はそんなに潜らないようにね」

「はい!」「はーい!」

 シルーナさんいい人だったなぁ。

 ダンジョン、何もかもが未知でどうすればいいかわかってなかったけど、一つの目標が出来たことでやる気が出てきた。

「ダンジョン、頑張ろうね!」

「ああ、ダンジョン踏破目指して頑張るぞ!」





































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