月の書

M.FUKUSHIMA

NASA特別研究員、エミリア・ニュートンによる中間報告

 まずは私にこの重要な調査をお任せいただいたことに、心から感謝の意を表します。私にこの件が依頼されたのはおよそ一か月前のことでした。ご存じのとおり、三か月ほど前、アルテミス計画が成功し、月面の調査が長期間に渡って行われました。クロード中佐を中心とする月面探検隊は、月面で奇妙なものを発見しました。それが極秘裏に回収され、わたくしの研究所に持ち込まれた次第です。

 その奇妙なものとは一冊の本でした。私どもは便宜上「月の書」と呼んでおります。

 当然のことながら、月面上で本が発見されることなどありうべからざることです。持ち込まれる機会があるとしたら1960年代に行われたアポロ計画が唯一のものですが、本を置いてきたという公式記録はありません。ただし、アポロ宇宙船の乗組員が個人的に持ち込んだ可能性は否定できません。

 本はかなり特殊なものでした。

 材質は最初羊皮紙と思われましたが、羊の皮ではなく、今のところ地球上のどの生物とも合致していません。この点については、引き続き調査を続けたいと思います。

 また、一部を除いてまったく未知の言語で書かれているようです。それらについて解読の目途はたっていませんが、既知の言語で書かれた部分について翻訳することができましたので今回その内容についてご報告いたします。ちなみに、その言語と言うのはかなり古い形ですがラテン語でした。

 それでは、お手元の資料をご覧ください。

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