第七王子の花嫁

陋巷の一翁

0 プロローグ

「オイゼビウスに嫁はまだ早すぎるのではないか?」

「いえ、むしろ、遅すぎるぐらいでございます」

 アレク・アルゲマスト・フロレスタン王は自らの私室でかつての腹心で、いまは王の第七王子、オイゼビウス・ローベルト・フロレスタン王子の目付として働いているダナハン卿の面会を受けていた。

「しかも嫁をあの地球から招こうとは、あそこの人類は、粗暴で、戦争ばかりしていて、心優しいオイゼビウスには、むしろ害をもたらすのではないか?」

 王は不思議そうに言った。地球はフロレスタン王国がある世界ガルパラウンドからすれば古くからなじみの異世界で交流もあったが、地球側の戦乱が原因で、すべての交流が途絶されたいわれがある。

 ダナハンは言った。

「確かに、王子は誰にでも優しい方ですな」

「うむ。それがやつのとりえ……、やつ唯一の良いところだともいえる」

「しかし、その優しさは、王子の弱さから来ているのではありませんか?」

「ふむう、やつの弱さを補う強さが、地球にはあると?」


 何かを察したアレク王が言うと、ダナハン卿は無言のまま低頭してかしこまった。王はダナハンをしばらく眺め、そしてこう言った。


「……わかった。やってみるがいい」

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