メガネ解放戦線の伝説

ミンイチ

第1話

 メガネ戦争。


 最初、あるフルダイブ型のVRゲームで「このキャラはメガネを つけた方が/つけない方が かわいい」という論争があった。


 この頃はただの論争であったが、ある日のアップデートで「プレイヤー、及びNPCのメガネの着脱を可能にしました」と言う一文が添えられていたことから論争は戦争へと変化した。


 キャラクターへのメガネの着脱合戦から始まり、メガネのための素材の奪い合い、そこに一般プレイヤーの二分化も進み、さらには他のゲームにも飛び火していった。


「と言うのがこの戦争の歴史で、今現在も引火元になったゲームは最前線になっている」


「戦争の歴史はわかったんですが、なんで僕たちはこんな過疎ゲームのマップの端にある寿司屋に来てるんですか」


 目の前には現実世界にもありそうな高級そうな寿司屋が建っている。


 周りは真っ暗な森で囲われ、こんなところに寿司屋があるとは誰も思わないだろう。


「少し情報が回ってきてな。

 今日のこの時間に非メガネ派の集会があるらしい。

 それも幹部クラスばかりがな」


「どんな人がいるのでしょうか」


「観測班の情報によると少なくとも、資材強奪の常習者“狩りぐらし”の『森エッティ』や、特攻極振り“狂気の回転者パンジャンドラム”の『マーイマトン』、あとは超時空要塞の主“天空の城ラpユタの王”『野田』はいるらしい」


「結構いますね。

 あっ、メンバーの配置が完了したそうです」


「全軍突撃ィぃぃ!」


 周囲に展開していた数十人ものメガネ派メンバーが寿司屋に雪崩れ込む。


 中にいた非メガネ派メンバーは攻めてくることがわかっていたようで中から寿司が飛んできた。


 この寿司屋は野田によって魔改造されたものであったらしく、四方八方から寿司が飛んでくる。


 森エッティは武器を奪い、マーイマトンが回転しながらそれを投げる。


 他の非メガネ派もさまざまな方法で迎撃している。


 メガネ派もそれに負けず、さまざまな魔法で攻撃を行なった。


「「このままではダメだ!あれを使う!」」


 両陣営の指揮官がほぼ同時にある魔法を使うように指示を出した。


 その魔法とは、このゲーム内で最強と言われている魔法「覇王迅雷竜巻」だ。


 同時に展開された二つの竜巻は互いの力を強めあい、ついには一つになって両陣営を襲った。


 竜巻はプレイヤーや武器、周りの木々だけでなく寿司屋に貯蔵されていた大量の寿司をも巻き上げた。


 巻き上げられたものは寿司屋に備え付けられていたトラップによって寿司となり、このゲームのマップ全体に落ちていった。


 この事件はのちに【Sushi Tornade】と呼ばれるようになり、一つの伝説となった。

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メガネ解放戦線の伝説 ミンイチ @DoTK

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