春乃の涙

春乃は久々に蓮の家に遊びに行った。

蓮から、久しぶりにちょっと話そうって誘われた。

くだらない事でも、何か人に言いたい時は、お互いに話を聞いてもらうのが、恒例だった。


「元カノがさ」

(わ、やだな…)

「俺の部屋来たときね、」

(しかも、部屋って…)

「春乃が写ってる写真を見たみたいでさぁ。飾ってあるやつね。それが原因で別れたいって思ったって」

笑いながら話した。

「へぇ…」

「なんでだろうね。俺はそんなの、気にし過ぎだと思うんだけど」

また笑った。

「そうだね…」

「女子だけどさ、友達なのにね」

「そうだね…。なんでだろ…」 

「ね。それじゃ、一生彼女できないじゃんね」

「ね…」

(やっぱり、一生私は蓮と付き合えないんだ…)


「春乃?」

「…ん?」

「元気ない?」

「ん?普通だよ」

「…そう?」

「…」

「?」


蓮は、返事が無かったたから、春乃の顔を見た。

「!どうしたの?」

「なんでもない…」

春乃は、そう言いながら大粒の涙を流していた。

涙が出すぎて何も言えなかった。

「大丈夫?」

蓮が春乃の顔を除こむと、春乃の顔が真っ赤になった。

「…?」

蓮が、春乃の泣いているのを見るのは、幼稚園ぶりだったかもしれない。

「どうしたの?」

また聞いてみた。

春乃は首をふる。

言葉で気持ちを隠せても、悲しい涙は溢れて止まらなかった。


だいぶ時間たったあと、

「…ごめ…ん。元カノの話だったよね」

春乃は涙を拭きながら言った。

「?」

「あの子可愛かったよね。別れちゃったのもったいないなかったね」

「元カノの話はいいよ。具合悪いんじゃない?」

「ううん。大丈夫」

と言ったらまた涙がでた。

「ほら」

と、肩に手をかける。

春乃がびっくりして、顔を上げた。

もっと顔が赤くなった。

「あ、ごめん」

蓮はすぐに手を引っ込めた。

春乃は顔をそむけた。


(…なんか…。なんていうか…)

蓮は、じっと春乃を見た。


「春乃…こっち見れる?」

大きく首をふる。


「春乃…、俺の事…、好き?」

今度は、激しく首を振った。

激しく首をふるのは、昔からの癖だった。

蓮は、それは、イエスの意味だと知っていた。


「春乃、ちょっと待って…。ちょっと…」

蓮は今までの記憶を辿っていたが、過ごしてきた時間が長すぎて頭がパンクしそうだった。


「全然分からなかった…。いつから?」

春乃は黙ってうつむいてたが、小さな声で、

「…幼稚園…」

とつぶやいた。


「え?!?!」

蓮は結構な大声を出した。

「…ずっと?」

「…」

沈黙が、答えだった。

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