阿蘇の弱点を探りたい藤田と景清

藤田「はいこんばんは! 阿蘇忠助の弱みを握り隊隊長こと藤田直和です! 今日は阿蘇のお宅に侵入していつもストロングな阿蘇さんの弱点を探りたいと思います! 景清隊員、準備はよろしいか!?」

景清「ぐぅ」

藤田「景清隊員!!」※午後十時


景清「もう嫌ですよー……眠いですし……迷惑ですし……どうせ二次創作的なノリで最後は『オレが阿蘇の弱点だったんだ』みたいになるんですから……」

藤田「え、何? この未来オレにとってそんなにハッピーなエンドが待ってるの? 行くぜ景清」

景清「一人で行ってくださいよ」

藤田「追い返されるに決まってんだろ」

景清「何故追い返されると分かっていて突き進むのか」

藤田「シンプルに気にならない?」

景清「っていうか十年以上幼馴染やってて弱点ぐらい知らないんですか」

藤田「二十年やってるけどあんまよく分かんない」

景清「さらっと年数修正してきやがった。ほんと重いなこの人」


藤田「というわけで突撃だ!」

景清「えええもうー」

ピンポーン

藤田「……」

景清「……」

藤田「……」

景清「出ませんね……留守なんじゃないですか?」

藤田「外から見たら窓に灯りがついていた。中にはいるはずだ」

景清「やってる事が面倒臭い彼女と一緒なんですよ」


ピンポーン

景清「……阿蘇さーん……」

ガチャ

阿蘇「……」

景清「あの、こんばん……わぁっ!?」

藤田「景清だけ中に連れ去られた!? 阿蘇! オレもオレも!」

阿蘇「間に合ってます」

藤田「確かに顔はちょっと似てるけどさぁ! オレの代わりに景清を手篭めにしようったって心の隙間は埋まらな」

阿蘇「クソがあああ!」ガチャッ


藤田「無事に入れてもらえた」

阿蘇「お前本当に嫌い」

景清「まさか毎回こんなやりとりしてるんですか。大丈夫ですか阿蘇さん。ご近所で変な噂立ってませんか」

阿蘇「立ってる気はするけどもう慣れた」

景清「諦めないでください……」

阿蘇「大丈夫、うちのアパート出入り激しいし」

景清「転居に懸けないでくださいよ……」


阿蘇「で、今日は何しに来たんだ」

景清「え、えーと」チラッ

藤田「……阿蘇の顔が見たくなってさ」

阿蘇「咄嗟の嘘ヘタクソかよ」

藤田「本当です本当! アイミッシュー! ユーラブミー!!」

阿蘇「図々しい英会話を試みるな!!」

藤田「景清! ここはオレが抑えておく! 今の内に探索を!」

景清「えええええ」


景清「探索も何もこのお部屋1Kですよ。どこを探せと」

藤田「そこの棚とか!」

景清「阿蘇さんに迷惑をかけるのは嫌です」

藤田「オレの甥っ子が今日も常識的でいい子で可愛い!」

阿蘇「良かったな藤田。離れろ藤田。普通に邪魔だ藤田」

藤田「あああああ」ベリッ


阿蘇「……で、本当の所何しに来たんだ、景清君」

景清「えーと、かくかくしかじか」

阿蘇「俺の弱点? えー……なんだろうな」

藤田「オレかな!?」

阿蘇「え、なんで?」

藤田「真顔で返された。しょんぼりする。景清の嘘つき」

景清「僕はもしかしたらそうじゃないかなと言っただけなので……」


阿蘇「あー……あれだ。苦手っつったらネバネバしたものとかダメだな」

景清「へぇ」

阿蘇「昔、納豆食ってた兄さんが俺の目の前で嘔吐してから食えなくなった」

景清「曽根崎さん……」

藤田「ネバネバしたもの……ああ、そういや昔から給食に出た時も残してたねぇ」

阿蘇「だろ。お前が代わりに食ってくれてたけど」


藤田「納豆だけじゃなくてオクラとかとろろとかもダメだよな」

阿蘇「無理だなぁ。健康にいいとはわかっていても……」

景清「美味しいのに……僕むしろ好物ですよ」

阿蘇「好き嫌いってそういうもんだよな。だからあんまり人にもなんでも食べろとは言えねぇ」

景清「意外だ」


阿蘇「よし、これで満足したろ。帰れ帰れ」

藤田「えー、そんな事言うなよ。せっかく来たんだし景清も泊まらせてやろうぜ」

阿蘇「なんでお前はしっかり泊まるつもりでいるんだ?」

景清「いえ、僕はちゃんと帰ります! ご迷惑はかけられませんし……!」

阿蘇「……」


藤田「はははっ、狭ーい!」

阿蘇「狭いのはお前がこっちに寄ってきてるからだ! あっちへ行け!」

藤田「あーあーあー」ゴロゴロ

景清(床に……雑魚寝……お泊まり……! 友達みたい…!)ドキドキ

阿蘇「景清君、寝心地悪くねぇか?」

景清「大丈夫です! 快適です!」ワクワク

阿蘇「そ、そうか……」


阿蘇「じゃあ電気消すぞー」

藤田「電気消してからが本番だよね」

阿蘇「なんだそりゃ」

景清「……」ワクワク


景清「……」ワクワク


景清「……」うとうと


景清「……ぐー」

藤田「おや、もう寝たよ」

阿蘇「相変わらず寝つきのいい子だな」

藤田「よしよし、おやすみ。いい子だ、いい子」

景清「むにゃ」

阿蘇「父性でも出たか」

藤田「どっちかというと母性かな」

阿蘇「ふぅん」

藤田「今なら妊娠できるかもしれねぇ」

阿蘇「そりゃすごいな」


阿蘇「さ、お前も寝ろよ」

藤田「はぁいアナタ」

阿蘇「ヒェッ気持ち悪っ」

藤田「クソ傷つく」

阿蘇「ママなんてガラじゃねぇだろ」

藤田「んー……じゃあどんなガラ?」

阿蘇「ええ? さぁ……」


阿蘇「藤田は、藤田だし……」うとうと


藤田「……」

阿蘇「おやすみ……」

藤田「おう、おやすみ」

阿蘇「……すー……」

藤田「……」


藤田「……阿蘇」

阿蘇「……すー」

藤田「……」


藤田「おやすみ、ただ君。どうか、いい夢を」

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