サクラ色の介護日記♡
櫻絢音
第1話 はじめの一歩
「なぜ、デイサービスの介護士になろうと思ったの?」と尋ねられた櫻琴音は、姉の櫻絢音に向き直って笑顔で答えた。「私、いつかおじいちゃんになったら、孫に甘えたいと思っていたんです。それで、高齢者と接する仕事がしたくて、介護の道に進むことにしました」
「へえ、そうだったんだ。私は、もともとおじいちゃんこで、それで介護の仕事に興味を持ったんだよ」と櫻絢音が答えると、琴音は驚いた様子で姉を見つめた。「え、そうなんですか?私、知らなかったです」
櫻絢音は三つ編みのサイドテールで、薄いサクラ色の髪の毛をしていた。天然な性格で、高齢者と話すのが好きだった。その一方、琴音はポニーテールで水色の髪型をしており、カレーライスが好きな元事務職員だった。
「そうそう、私が初めてデイサービスで働き始めた頃、一番楽しかったのは……」と櫻絢音は、目を輝かせて話し始めた。
「ある日、男性利用者様Aさんが、膝につけた傷を気にしていたんです。でも、病院に行くのが面倒だからって、手当てしないでいたら、だんだん悪化してしまって……。私は、『私、看護師の資格持ってますから、手当てしてあげますよ』と声をかけたんです。そしたら、Aさんが、『お嫁さんになってくれたらいいのに』と言われて、ちょっとびっくりしたけど、でも、嬉しかったんですよね」
琴音は姉の話に興味津々で聞き入っていた。「それで、どうなったんですか?」と尋ねると、櫻絢音は微笑んで続けた。「その後、Aさんは、私を『孫嫁』と呼んでくれるようになったんです。私は、嬉しくて、毎日通勤するのが楽しみになりました」
「それって、可愛らしいエピソードですね」と琴音は感心しながら、姉の話に耳を傾けていた。
「そうだね。でも、私はね、元々おじいちゃんこだったんだよ。小さい頃から、おばあちゃんやおじいちゃんと一緒に過ごすことが多かったんだ。だから、介護の仕事に興味を持ったんだよ」と絢音は答えた。
琴音は納得した様子で、「それで、デイサービスで働き始めてからのことはどうだったの?」と聞いた。
「最初は大変だったよ。利用者様とのコミュニケーションに苦労したし、看護師や先輩介護士さんにも教えてもらいながら、日々成長していったんだ。でも、楽しいこともあったんだよ」と絢音は笑顔で話し始めた。
「例えば、ある日男性利用者様Aさんが、私の三つ編みをほめてくれたんだ。それで、私が男性用の三つ編みの動画を見せてあげたんだけど、すごく喜んでくれたんだよ。それからは、毎週私の三つ編みを褒めてくれるようになったんだ」と絢音はうれしそうに話した。
琴音も笑顔で聞いていた。
「それは可愛いエピソードだね。でも、辛い時もあったんでしょ?」と琴音は尋ねた。
絢音はうなずき、「ある日、仕事で失敗してしまって、自分がやっていることが間違っているのかなと思ってしまったことがあったんだ。でも、その時に鴨頭さんの動画を見て、元気をもらったんだよ」と答えた。
琴音は興味津々で、「鴨頭さんって誰?インフルエンサー?」と尋ねた。
絢音はニコニコしながら、「そうそう、YouTuberでね、話し方の学校の学長でもあるんだ。彼の動画を見ると、人生がちょっと明るくなるんだよ。私も毎日見てるくらいだよ」と答えた。
「そんなにすごいんだ。私も見てみようかな」と琴音は興味津々で答えた。
絢音はニコニコしながら、琴音に鴨頭さんの動画を見せてあげた。
「私も頑張ろう」と琴音は決意した。
絢音は、そんな琴音の姿を見て微笑んだ。
「そうやって、あんたらしいやり方で、悩んで苦しんで、でも頑張ってるんやなって、伝わってくるわ。」
「姉ちゃん……ありがとう。」
琴音は、涙を流しながらそう言った。
「ほんま、介護って大変やけど、やっぱりこうやって、利用者様と関わって、支え合って、助け合って、前に進んでいくんやなって思うと、やりがいもあるし、楽しいとも思えるんや。」
絢音はそう言いながら、山本さん、利用者様AとBとのエピソードを語りだした。時には笑い、時には感動し、琴音は姉の話に聞き入っていた。
「そうやって、みんなと一緒に、日々の楽しいことや、大変なことを乗り越えていける。」
絢音は、最後にそう言いながら微笑んだ。
「私たちも、悩みや苦しみがあって当たり前。でも、それを共有して、一緒に励まし合って、前に進んでいこう。」
そう言って、絢音は琴音に手を差し伸べた。琴音は、そっとその手を握りしめた。
「はい、一緒に頑張りましょう。」
「うん、一緒に頑張ろう。」
そう言って、二人は笑い合った。その姿に、山本さんも微笑んでいた。
「そうやって、みんなで支え合って、励まし合って、前に進んでいける。」
山本さんはそうつぶやきながら、みんなの笑顔を見つめていた。
櫻絢音と琴音は、今日も笑顔で、利用者様たちと向き合っていく。そして、また新しい出会いや、感動が待っていることだろう。
【終わり】
次回予告:櫻琴音は、デイサービスでの仕事に少しずつ慣れてきたようだ。ある日、天野さんから「中西さんの話し相手になってあげてね」と言われる。利用者の中西は実は女性職員の胸や臀を触りまくるセクハラジジイ。そこで、櫻絢音が自分が経験したことを教えてあげることに。果たして、櫻絢音が伝えたことは琴音にとって役に立つのだろうか?次回、『教えて、姉さん』。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます