アップデート
ラプエルは抱えるのもあれなので、ラプエル自身に相談してみると、近場にある
……今となっては仕方がないが、こうなるなら移動用の車輪でもつけておくべきだった。
予算不足に想定外の出来事が重なってのことなので、仕様がないが。
「にしても腹、減った……」
最近、ろくに食べていなかったせいで栄養が足りていないのだろう。体力的には先の睡眠で回復しているものの、早く食料になるものを見つけないと餓死してしまいそうだ。
それに、飲み水も早めに見つけなければ。今は喉が
それからしばらく、水の音が聞こえてこないか耳を
「いや……腹は減ってるけど、さすがにこれは……」
それは、まさに毒と言わんばかりの明るい色をしたキノコ。形はシイタケに似ているが、色が全く違う。なんか、カエンタケみたいな。触るのも
一応、もう一本木の枝を手に取ってキノコを
ラプエルの機能の一つだ。検索によって安全かどうかがわかる。
「マガノダケ。エンターナ原産のキノコ。形はシイタケに似ており、
「へえ、食用なのか……これが」
これこそ、ラプエルの機能の一つだ。検索によって安全かどうかがわかる……のだが。
「……マジで言ってる?」
スキャンしたのはダメもとだった。いやだって、今の説明だと異世界原産のキノコが検索エンジンに引っかかったってことだよな? いやいやいや、流石にそんなわけ……。
「食用」
俺が苦々しい顔をしてキノコを元の位置に戻すと、ラプエルがもう一度教えてくれた。そういうことを聞き直したかったわけじゃないんだけど。
「……つーかこれ、食用なのか」
「……仕方ない、他に食べられそうな物でも探すか」
「食用です」
背負い直したラプエルが、やけに俺にこのキノコを食わそうとしている。
食わないって。……とりあえず、まだ。
それから更に、体感二時間半後。俺はマガノダケのある倒木の元へ戻ってきていた。
「……二時間も歩き回って、見つかったのはこれだけかよ」
「現在の時刻は十四時です。実際の歩行時間は五十八分となります」
「…………」
ラプエルに返事を返すことなく、手元の成果に視線を降ろす。右手の中に
水の確保ができたことは大きい。服を今着ているスーツの
「他に食べられそうなものといえば……なぁ」
この森、食料らしきものがキノコしかなかった。しかも二種類のみ。
一つはこのマガノダケ(なんか戻ってきたら緑色になって))。
もう一つは
(ラプエル曰く、昇天するほどおいしいキノコ。人生に一度しか味わえない美味しさ)。江戸時代のフグかよ。
既に腹が減り切って胃が痛くなってきた俺に、選択肢は残されていなかった。
俺は渋々、スーツの内ポケットからライターを取り出し、
「……焼いてしまえば食えないこともないか」
「マガノダケは熱に弱く、加熱すると栄養素が壊れるのでオススメできません」
……なん、だと?
「いや、キノコは生だと食中毒を起こすって聞いたことが……」
「マガノダケはマッシュルーム同様、生のまま食べることが可能です」
「マジかよ」
ごくりと息を呑む。森の空気が美味しい。……もう今日はいいんじゃないかな。別に今すぐ食べなくても死ぬわけじゃないし、浄化済みの水だってある。
「食用」
「さっきからやけに食べさせようとしてくるよね⁉」
勢いのまま、もうどうにでもなれと、青色に変色しつつあるキノコにかぶりつく。
……味は意外とクリーミーで美味しかった。
食感は思い出したくもない。
ただ、これだけは言わせてほしい。あれは絶対に、口の中で動いていた。
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