鴨川ワイルド
チャガマ
第1話 序章
京の男は誰も彼も野獣なのでございます。
いいえ、これは比喩などではございません。れっきとした事実なのです。特に彼女なるものを持たぬ男はより野生の気を放っております。彼女を持った男は野獣ではないのか? いいえ、そうではございません。恋人を持った男というものは悉く女性という優位な生物によって飼いならされ、野生の気を知らぬうちに失ってしまっているだけなのです。
浮気? 不倫? あぁ、それこそ恋人を持つ男が密かに野生の気を発揮したものでしょう。つまり、彼らもまたれっきとした野獣なのです。しかし、誇れるようなものではございません。むしろそれは穢れた野生の気でございます。女性の方でも良くは思われないでしょう。しかし、浮気や不倫なるものはどこか魅力がある。それこそ野生の気が原因であるところなのです。
話を戻しましょう。このように男なら誰しも野獣であるのですが、純粋な野獣というものがございます。そう、童貞を守りし戦士たちのことです。いくつかの人々が童貞は恥であると真剣にお考えのようですが、実際は全くそうではないのです。非童貞など風俗に金さえ払えば、瞬く間に成せてしまうもの。簡単なことなのです。金で得られるものが仮に栄誉だとしても、それになんの価値がございましょう。
しかし、童貞というものは男が生まれ持って与えられた穢れなき証なのです。これを守り続けるというのは、自らの野生の気を御しているということに他なりません。私も今年でかれこれ七十年もの間、この証を守り抜いてきました。共に童貞を守り抜くと誓った友もおりましたが、歳を三十、四十と重ねていくうちに、女性という魅惑に野生の気を操られ、次々とその証を失っていきました。お判りでしょうか。非童貞のものは己の野生の気を御することのできぬ未熟ものの証なのであります。
そこで我らは考えたのです。我らは全ての男たちの童貞を守り抜かねばならないと。野生の気を御せぬ者たちの手助けをしてやらねばならんのです。
今こそ、女性から男性を解放する日がきたのです!
女性に惑わされる男どもを目覚めさせねばならんのです!
鴨川にうつつを抜かす男どもを川底に叩き落としてやらねばならんのです!
我らは誇らしき野生の気を御すもの、野獣、ワイルドなのです!
今ここに宣言致します!
これより、「鴨川ワイルド作戦」を決行せねばならぬと!
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