第20話 とにかく帰還する

≪ 二層を攻略しました 報酬を受け取ってください ≫


 気が付けば真っ白な空間に居た。

 俺はデスゲームを攻略したのだ。


 スマホでログを確認。



≪ 攻略報酬として怪我を回復しました ≫

≪ 武器、防具を修繕しました ≫




 なるほど、逆に言うと攻略じゃなく、ゲートで脱出したときは回復してくれないのか。


 で、報酬って?


≪ 魔法かスキルを一つ選択してください ≫


 ほーん? マジで?

 え? マジで魔法が使えるようになるの?


 更に説明を見ると、魔法は帰ってからでも使えるっぽい。


 マジで? 凄くない?

 嘘だろ? 超能力者じゃん。


 どうせ罠があるんだろ? 注意書きを読み進める。


≪ 選択可能な魔法やスキルはジョブに依存します ≫

≪ ジョブはチュートリアルでの戦い方で決定されます ≫


 はい、そんな事だろうと思った。


 俺は今まで肉弾戦しかしていない。

 魔法なんて使えるハズがないのだ。


≪ あなたの適性は僧侶です ≫

≪ あなたのサブ適性は魔法使いです ≫


 え?


 なんで?


 そうか、そもそも普通の人間は魔法なんて使えないのだ。

 魔法を使うために、魔法が必要なんてあり得ない。


 俺の使ってきた武器は、なんだ?


 ガントレット(殴り)

 モーニングスター

 メイス


 なるほど、僧侶っぽい。

 ソレに、火球を弾いて当てたから魔法使い特性もあるのか。


 うぉーーー魔法が使えるぞぉぉ!


 早速、一覧をチェック。


 火球≪済≫

 雷撃

 氷結

 ……


 おぉ! おぉ?


 済って何? 試しにクリック。


≪ 火球 ≫

 命中と同時、爆発を巻き起こす火球を放つ。


 ※先にクリアーした人に選択されています。

 他のスキル、魔法を選択してください。



 そう表示されるだけで、選べない。


 え? クリアーした人居るの?

 俺より先に? マジで?


 信じられない。


 俺だって、数多の偶然が重なってギリギリ攻略出来ただけなのだ。

 いや、しかし、世界は広い。

 そんな事だってあるのかも……


 しかし、こうなるとヤバい。

 欲しい魔法が軒並み売り切れと言う事もありうる。


 俺は一覧を豪快にスクロール。


「あっ!」


 間違って変なのをクリックしてしまった。


≪ 鉄壁 ≫

 使用すると、一定時間物理攻撃への耐性を大幅に高める。


 ※剣士向けのスキルとなります。

 効果を十全に発揮出来ない可能性があります。

 それでも習得しますか?


 ≪Yes≫ ≪No≫


 あぶねぇ! ちゃんと確認してくれる親切仕様。

 当然Noだ。


 ちょっとの間だけ体が固くなるスキルって誰得でしょ。


 更にスクロール。

 欲しい魔法なんか決まってる。


 安心なことに≪済≫ になってる魔法はほとんど無さそうだ。

 火球以外だと、≪変身≫ だけだった。


≪ 変身 ≫

 他の生物に変身する事が出来る。

 自分で解除しない限り効果は永続する。


 ※ステータスに影響はありません。

 ※自分の体より小さい物には変身出来ません。


 ※ローグ向けのスキルとなります。

 効果を十全に発揮出来ない可能性があります。

 ※先にクリアーした人に選択されています。

 他のスキル、魔法を選択してください。



 うーん、要る? コレ?


 あー、でも、スパイとかなら便利かも。それか美人に変身出来るなら、女の子は欲しがるかもね。


 俺には不要なスキルで良かった。

 それに適性も無い。ローグってのは盗賊系かな?

 つまり、リザードマンに変身して敵をやりすごすとかそう言う攻略を想定したスキルって事だ。


 そして、目当ての魔法は、あった。


≪ 回復 ≫

 体力を回復し、怪我を治療する。

 回復量は回復薬と同等だが、詠唱には時間が必要。



 やった!

 ある、回復魔法がある。


 俺の適性は僧侶やぞ?

 っていうかさ、回復薬と同等ってのが凄い。


 攻略目線で考えるとさ、コレ確かに微妙なのよ。

 だって迷宮で拾える回復薬と同等なんだもん。詠唱も必要だし、劣化互換まである。


 だけど、思いだして欲しい。

 回復薬は外に持ち出せないのだ。


 そんで、手足をくっつける回復薬と同じ効果だぞ? マジか!


 神の使徒として、崇められるに違いない。破格の能力!


 こんなの決まりだろ!

 と、待てよ。


 一応、他の魔法を確認する。


 だが、回復魔法よりも魅力的な物は存在しなかった。

 っていうか誰得なのが多い。


 特に、全体で見てもダントツで誰得なのはコレだ。


≪ 看破 ≫

 あらゆる嘘や欺瞞を明らかにする。

 看破された者は一定時間無力化される。



 嘘発見器の魔法だ。

 看破! うぉぉぉ! 嘘を見破れるぞぉぉ!


 って言ってもさ、俺にしか使えない魔法となるとソレが嘘である証明が出来ない。

 今、看破が反応したからお前嘘ついてるだろ! と言っても、相手は首を傾げるだけだ。


 で、こっそり使えるならソレはソレでまぁ使い道もあるだろう。

 だが、使用には、看破! と宣言した上で、相手を無力化って、どうなの?


 変な事をされたな、ってのは解ってしまうんだからコッソリ使う事も出来そうにない。


 マジで使い道を丁寧に潰されているのだ。


 こんなゴミ魔法、一体誰が習得すんだよ。




 ……俺だ!


 俺だよ……



 結論から言うと、俺は看破を習得した。


 誰得だよと笑った直後、閃くモノがあったのだ。

 色々な違和感、それら全てがカチリとハマった。


 そしたらもう、看破を習得する以外の選択肢は無くなっていた。



「マジかよ」



 流石の俺も、凄く悩んだ。


 だけど、それでも。

 俺は看破を選んだのだ。


 そして、俺は帰還する。


 気が付けばベッドの上で転がっていた。


 まるで全てが夢だったかのよう。

 でも、夢じゃなかった。


「あのさぁ!」


 だってウンコの匂いが強烈に染みついていたから。

 ジャージも、ベッドシーツもまとめて洗濯機にぶち込んでほっと一息。


「もしもし、母さん?」


 そんで、母親に電話した。

 声が聞きたかったのが一番。あとは許可を取りたかったのだ。


「一週間、学校休んで良い? 凄いショックなことがあってさ」


 この一週間が、勝負だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る