第27話世紀末の国

 祖国は地獄。

 これに尽きるでしょう。

 それか世紀末。


 王都での大規模暴動。

 彼らは王宮に食料を求めて襲ったという噂。……噂ではなく事実です。王宮だけでなく貴族の屋敷を襲い金目の物を持ち去り、そこに住む者達を虐殺していく民衆の姿は悪鬼だと新聞に描かれていました。



「恐ろしい事です。あのまま近隣国に滞在していましたら、お嬢様も巻き込まれてしまいましたわ。流石は旦那様ですね。先見の明がおありです」

 

「……そうね……」


 この惨状の一端を担っているのは間違いなく父だと知っています。

 父と再会を果たした後、私は直ぐに住んでいた館を離れました。ええ、父の命令です。


 

『ここに居ては危険だ。ブランシュ、ここからは父の仕事だ。お前は安全な場所にいなさい。それがお前のためだ。いいな?』


 と仰って下さりましたから、従う他ありませんでした。


 父が祖国を滅ぼそうとしていると予感しなかったと言えば嘘になるでしょう。

 それでも止める気は毛頭ありませんでした。

 私にも愛国心はあります。けれど、自分を見捨て裏切った国を愛し続けろという方が無理というもの。


 革命家を名乗っていた者たちは新政権を樹立すると宣言して早々に、瓦解しました。密告や裏切りが相次いで多くが処刑台に送られたそうです。周辺国の侵攻は時間の問題でしょう。一度、父から手紙がきました。

 

【女王になる気はあるか】と。


 お父様、それは死亡フラグ待ったなしの案件です。

 革命後の王朝復活ほど恐ろしいものはありません。

 私の答えは決まっていました。


【絶対に嫌です!無理です!】


 念を押して、革命後の民衆は暴れ馬よりも酷い事を説明しておきました。いえ、馬じゃありませんね。虎でしょうか?とにかく王侯貴族に対する敬意などないに等しいのです。そんな彼らをコントロールしようなど無謀極まれり。

 なので父には諦めるよう書き記し送り返しました。

 ついでに「恨みは分散する方がいい」とも付け加えておきました。きっと父のことです。分割統治の利点を上手く考えてくれるでしょう。



 あれから、定期的に父から連絡があり、情勢を教えてくれています。

 まあ、お父様の事ですから表面的な事だけでしょう。

 新聞からの情報よりは遥かにマシですが。


 各国との駆け引きに忙しいようです。



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