目が覚めると森でした。

@Nekomanjuuu

第1話 なんで森?

「…………ふごっ……んー」


俺は自分のいびきで目が覚める。一人暮らしで誰も聞いていないとはいえ少し恥ずかしい。

しかもなんかベッドが固くて背中が痛い……まるで地面で寝てるようだ。

昨日まではふかふかだったのに……もしかしてベッドから落ちて床で寝てるのか?

そう思い目を開くとまず目に入ったのは見渡す限りの森だった。


「……なんで?」


これが俺の第一声。人間驚くと言葉がそんなに出ないもんなんだな。

状況を整理してみる。

俺の名前は柴山佳しばやまけい17歳で高校生。家族は父、母、妹、そしてペットのペロだ。

大丈夫、全部覚えてる。

記憶が無いわけではないようだ。次に何故森にいるのか?

昨日は普通に自分の家のベッドで眠ったはずだ。

考えられる原因としては3つある。


1つ目は俺が寝ている間に誰かが森に俺を連れ出したこと。

だがこれはあまり現実的じゃない気がする。

自慢ではないが俺は眠りが深い方ではない。

クーラの電源をつける音ですら目が覚めてしまう。睡眠薬を飲ませれば可能かもしれないが、昨日は日曜日で学校も休みだったためずっと家にいた。

なので可能性としては低いだろう。


2つ目はこれが夢であること。でもそれにしては草の匂いや音、視界がやけにリアルなんだよな……これが夢なら逆に怖い。現実との区別がつかなくなりそうだ。


そして最後の3つ目は、夢遊病とかで自分で森まで歩いてきたこと。


……うん。どれも現実的じゃない。

こんなに考えたのにどれもしっくり来ない。


「ここどこだよ……」


声に出してみるがもちろん答えが帰ってくることは無い。

なんだか喉が渇いてきた。

とりあえず水を探すか……。そう思い、しばらく歩いてみるがどこを見ても森、森、森……。

このまま水が確保出来なければかなりやばい……。

必死に探すがやっぱり無い。

川の音でも聞こえないかと耳を澄ますが、聞こえるのは鳥の鳴き声だけ……。


数時間探してもなかったので俺は近くの木の下に座り込んだ。

歩き回ったせいで余計喉が渇いた。


はぁ……


思わずため息が出る。今度からは絶対ペットボトルの水を抱えたまま寝よう。そんなどうでもいいことを考えながら現実逃避をしていた時、


ガサガサ、ガサ


俺のすぐ横の茂みから音がした。

思わず身構える。ここは森だ。どこかは分からないが森には熊がいる話はよく聞く。


もし今ここで出会ってしまった場合間違いなく俺に勝ち目はないいだろう。

でももしかしたら人間かもしれない。

そうだった場合逃げてしまったら助けを呼ぶことができなくなってしまう。


まぁその人が盗賊や物取りとかの敵だったら無理だけど。

とりあえず近くに落ちていた手頃な感じの枝を拾う。


ないよりはマシかな?


いざとなったらこれで殴って全速力で逃げよう。

そう覚悟した時、茂みの中から何かが現れた。


「…………え?……うさぎ?」


出てきたのはうさぎだった。茶色くて長い耳をもっている。

ここまではいい。でも1つおかしな点がある。

うさぎの額から真っ直ぐに生えた角だ。


うさぎに角なんてあったっけ?いや、絶対ない。うさぎに角があった記憶はない。これは自信を持って言える。


でも目の前のうさぎには確かに角が生えている。

触ってみようと思ったが、すぐにうさぎは逃げてしまった。


…………きっと新種か何かだろう。俺は頭に一瞬よぎった考えをすぐにふるい落とす。



***



あれから2日がたった。

水は見つからない、お腹も空いた。ただ空腹よりも喉の渇きの方がひどい……。


あのうさぎ以来ほかの動物は全く見ない。

ただ姿は見えないが、鳥の鳴き声は時折聞こえる。

この際、鳥でもいい。


何でもいいから生き物に会いたい……

別に取って食おうとか思ってませんよー?

まあ、非常食として手元には置いときたいけど……


この2日ずっと歩き続けたせいでもう限界だった。喉がカラカラだ。

俺はそのまま倒れる。もう歩けない。

そのまま仰向けになり空を眺める。雲ひとつ無い晴天。

せめて雨が降ってくれれば……そう願っても変わらず空は晴れている。

くそ、いい天気だな、オイ

少しでいい。とにかく水が欲しい。


「み、みず……」


思わず口から出た言葉。喋るとさらに喉が渇いてしまう。

そう思ったのに、拳大ぐらいの水の塊が、俺の上に落ちてきた。

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