聖夜の贈り物

第1話 判らない

 オレには、幼馴染みの女の子がいる。


 こいつは、オレには勿体ないくらい。見た目はかわいい奴。

 家は隣同士で、親も…… まあ仲が良いと思う。


 遊びに行ったときのおばさんの目は、年を追うごとに冷たくは感じていたけれど、あいつはそんなことなど気にせず。


 今日も、遊びにやって来る。

 子どもの時と同じく気楽な格好で。


 初めてキスをしたのは、中学校の三年だった。

「ねえ、キスってしたこと有る?」

「無いよ。おまえは?」

「無いの。してみない?」

「えっ、良いのか?」

 そんな感じだった。


 その時は、唇が触れる程度。

「みんなが言う感じには、ならないね」

「そうか? オレはドキドキしたぞ」

「そう言われれば、なんか恥ずかしいね」


 だけど、その後。何かを読んだのか聞いたのか、舌を絡め合う本格的なものへ。

 高校になった時には、もう少し進んだ。

 そう、キスをしていると、お互いもじもじし始めて、その先へ。

 何かのおりにキスをしていた。

 すればするほど、ドキドキがひどくなっていったオレ。


 だけど、こいつはどうかな?

 そう思っていた。


「なんかキスをすると、下腹部がむずむずする。なんで?」

 こいつは、ベロの下側とか、上顎を舐めると、ふひゃっとか言う。

 だからわざとそうしていた。

 ついでに、胸の先を触ったり。

 そう、キスをしていると、目立つようになるからつい。

 するとあっとか、ううんっとか反応をしていた。


 でまあ、必ず濡れていたらしく、トイレに行っていたらしいが、知識も付いてどういう事か判ったらしい。

 それでまあ先へ進み、幼馴染みから彼氏へとなっていたつもりだった。

 オレはね。


 だけど、こいつは……



「うーん。彼氏だと言われると困るわね。ずっと遊んでいた仲の良いお友達?」

「そうなの? でもエッチもしているんでしょ?」

「そりゃ、自分でするより気持ちいいし、他の男子とか、なんか気持ちが悪いし」

「そう? 私二人目だけど、相手によって全然感じ方とか違うわよ」

「えっそうなの?」

「うん。元彼は、私が初めてだったし、こんなものだと思っていたのよ。だけど今度の彼氏…… 慣れていてさ……」

 優奈ゆうなの顔が近寄ってくる。

 こそこそと、小声で教えてくれる。

 

「足を思いっきり広げてさ、それだけでも恥ずかしいんだけど、最初のうち何度かいくまでひたすら舐めるのよ。まあたまに吸われたり、かまれたり? それと同時に胸とかも触るし、いっぺんに気持ちが良いのが押し寄せてくるの…… それでね、おもちゃとかも使って……」

 彼女の体験談は、徐々にノリノリになって、女の子の輪が出来上がる。


 そんな話を聞いて、沙知は想像をした様だ。

 人間は沢山居る、一人だけしか知らず、それが一番と考えるのは間違いかもと……


 それでまあ、外に向かって興味が出来て、色々な奴を見ていたようだが、いまいちピンと来ず。

 あいつの言う、オレとの腐れ縁を続けつつ、二年が過ぎる。

 『好きなら告ってみれば』などと、友達の女の子には、好き勝手言っているらしい。


 それで、なんとか目を付けたのが、女子の中で一番人気だという上辺 芳雄うわべ よしおの話を耳にした様だ。


 夏休みで引退したようだが、テニス部で身長百八十センチ、成績中の上。

 外堀 埋世そとぼり りせという、彼女持ち。


 だけど、どこかからの噂で、焼き餅焼きで世話焼きの彼女が、少し鬱陶しくなってきているとの噂。

 そのため、皆からのアプローチが激しいようだ。 


「ふーん。じゃあ、あれとかも慣れているし、良いかも」

 この時、沙知は会いに行ったようだが、袖にもされず。プライドが傷つく。それで余計に興味が引かれたのか、度重なる偶然を重ねて、奴と知り合いになってゆく。

 沙知は、見た目は良いからなぁ。


 外面を、作りまくってアプローチ。

 幾度か見かけたが、誰だよこいつというレベル。


「いいの、あれ? 奥さん浮気?」

 そんな事を言って、揶揄われる始末。


 オレも、それが本気だとも思っていなかったし、大体その間もうちに来てエッチをしていたんだぜ。生理前? とかは無償にしたくなるとか言って。

 まあ話に聞いたエッチテクを、やってみてと言われて、多少オレも上手になっていったんだが、多分ね。


 まあ、そうこうしながら、人に断りもなく、季節は移り変わり秋が過ぎ、冬。

 世の中が、日銀の利上げ問題に沸いていた頃。

 俺達は、クリスマスイブに盛り上がる。

 そう、俺達は高校三年。


 これを過ぎれば、お受験だぁ……


 だけどまあ、二十四日が平日なので、二十一日の晩にイルミネーションを見に行った。そう二人で、毎年のように、なにも変わらず……

「うわ、人が多い」

「はぐれるな」

 普通に手を繋ぎ、普通の恋人同士のように見て回った。

 帰りの食事は、ハンバーガー屋だが、いつものこと。


「今年も、二十四日来るんだろ?」

 毎年うちのパーティ? お食事会? 豪華めの夕食? まあ良い。とにかく毎年うちで過ごしていた。

「さあ、どうだろ? お母さん達、いよいよ険悪なのよね」

 こいつのお父さんは、小さな会社をしている。

 お母さんは、専業主婦だったが、中学校くらいからパートに出始めた。


「そうなんだ、おやっさんの会社やばいのか?」

「かもね」

 そんな理由で、毎年来ていたうちのパーティには不参加。

 そう、確かに不参加とは言っていた。

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