第2話 チョロい深海

「あの人って?」

「ああ、三組の創海君ね。有名人だよ」

「顔が広いのね」

 そう聞くと、彼女は少し変な顔をする。


「少し違うかな? あの人は、なんと言うのか、軽薄とも違うし、友達が多いわけでもない」

 そう言って悩み始めた。


 夏休みが終わって、新学期と共に私は転校をしてきた。

 前の学校で少しそうどうを起こしてだが、表向きは親の都合となっている。


「なによ、あなたが後からちょっかいを出してきたんでしょ」

「私の方が先に好きだったのよ」

 良くある些細なこと。


 好きになった男の子に彼女ができた。

 そう、思いは募らせていたが、告白ができず、先を越された。

 それでまあ、その子と喧嘩になり喧嘩となった。


 そうその子は、親友だと思っていた。

 色々なことを相談をして、無論彼のことも……


 それを知っていて、彼女は彼に告白をした。

 知っていたのに、私の思いを……


「あれだけ言われるとさぁ、興味も湧くじゃない」

 それが彼女の言い分。


「彼優しいし、頭も良いのよ。将来有望。どうして今まで、彼女がいなかったのかしら」

 彼は、私の幼馴染み。


 私の事を好きだと……

 中学校の時だったので、余りよく判らずにずるずると今までの関係を続けていた。


 でもまあ、お年頃?

 私も、そんな事に気が向き出して、友人に相談をしたらこれよ……


 だけど好きだと言っていた彼はもう居なかった。

 そう彼女をかばい、私が悪者になってしまった。


 そのあと少しやさぐれた私は、軽い感じの男と仲良くなり、つい頼ってしまった。

 まあ、やり過ぎて警察が入る事になってしまった。


 彼らは、私に頼まれたと……


 それでまあ、罪にはならなかったけれど、学校にはいられなくなってしまった。


 だけど知らずに、私は、彼女と同じ事をすることに……



 そうその名物男と仲良くなり、お願いをしてしまった。


「ねえ、私転校してきたばかりなの。友達になってくれない?」

「うん? ああそうなんだ。何でも言ってくれ、案内でも何でも……」

「こっちに来たばかりで、知り合いもいなくて淋しかったの。色々とお願いね」

 まあそんな感じで、だけど、彼はいい人だった。


 時間と共に、彼にひかれていく。


 そう、好きになってしまった。

「ねえ、家に来ない? いま誰も居なくて」

「家に?」

 彼は少し困った顔。

 

「駄目?」

「あーいや、行くよ」

「ありがとう」

 そうして彼を誘う。

 そして、宿題とかしながら少しズレている授業の部分を教えて貰う。


 そう、元の学校よりこちらの方が進んでいて、実は苦労していた。

「助かるわ」

「転校も大変なんだな」

「そうね、私も初めて知ったわ」

 彼は賢く、的確な説明。


 少し、彼と重なる。

 彼はもっと、クールで……

 いえ……

 もう知らない人……


「何か飲む?」

「ありがとう」

 そう言いながら、彼はノートに要点と、よく使う重要な公式を書き出してくれる。

 最悪なことに、そう、すぐに試験がある。



 彼に声をかけたことを、正解だったと自分を褒める。

 


 そんな頃。

「何をしているの? 深海は……」

『彼女転入したばかりだし、すぐに定期試験があるだろ。元の学校は三学期せいだったみたいでさ、大変なんだよ』

 深海はそう行って、仕方ないじゃないかと言ってくる。


 まあ付き合いも長いし、女の部屋へ行ったからと言って、襲ったりなどしないことは知っている。

 そう彼からは……


「仕方がないわね」

 そう許可を出した。


 付き合いの長さと、信用。

 それは家族のような、信用。

 この時、彼とはまだ恋人同士のような関係じゃなかったし、確かにそう言う付き合いではなかった。


 言うなれば、枯れてしまった夫婦のような、適度な距離感を持った家族と言えば丁度だろうか。


 だけど、常識を外れ、そうそれは良くある偶然から、色々なことが崩れ始めた。



「わぁ、まとめてくれたんだ」

 お盆にのせたお茶と、お母さんが隠していたまんじゅう。

 そうその時は、そんな気は少しはあったけれど、そんなには無かった。


 彼が伸びをした。

 たったそれだけ……


 運悪く、お盆に当たる。

「あっ」

「熱っ」

 まんじゅうだから、熱いお茶。


 それは、私の体にかかりついでに彼の方へも降り注ぐ。


「あつーい」

「ごめん」

 彼はそう言ったが、彼にも当然かかっている。

 彼はシャツを脱ぎ出す。


「火傷をするから、|狭間さんも脱げ」

「はっ? えっ? ちょ……」

 確かに彼がいるから、少し薄着だったけどさ、いきなり捲られるとは……

 彼も濡れたYシャツを脱いで、肌シャツも……


 そう子供の頃から育っていなかった。

 あわてると、容赦がなくなる。


 そして、昔と違い、体は大人になりかかり、精神的にも違う。

 慣れた相棒である見智ではなく、彼女は狭間さん……


 シャツを捲りあげた状態で、正気に戻り…… 固まる。


 その間にお茶はしみこみ、広がっていく。


「あー、する? でも、ちょっとラグのお茶を拭くわね」

「あーそうだね。その悪い……」

 そう、下着がカップ付きで、ブラをしていなかった。


 あの角度、彼はしっかり見たはず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る