第2話 相談と行動開始

 切っていた、スマホの電源を入れる。

 履歴は…… 両親と…… 信堯?


 伝言があり、親はまあ、何処でうろうろしている。悪さをせずに帰ってこいみたいな感じ。


 信堯の方は、「ご両親から話は聞いた。お前はそんな事をする人間じゃあない。馬鹿なことをせず帰ってこい。生きていてくれ」そんな文言が、かなり悲痛な感じで入っていた。

 それを聞き、本物だと理解できる。口先だけじゃない言葉。涙が流れる。

 親ですら信じていなかったのに、本気の願いを声から感じた。


 今回の件で、世界は急激に色あせ、自分は一人になったと絶望をした。

 だが、信じてくれる奴が、一人は居る。

 ―― それだけで……


 ―― だが……


 まあ無いことだが、真犯人が信堯だったら、おれは、もうだめだな。

 俺は、得た力で世界中の人間を殺すかもしれない。


 ―― そうだ。能力の確認……

 それが先だな。


 夏休みまで、午前だけの半日授業とはいえあと三日。

 それを過ぎれば、クラスの連中に会うのすら面倒になる。


 操ったり…… 奴はそう言っていた。

 言葉巧みに、人を操りなんて言うことじゃなければ、やりようはある。

 言葉だけで、布石を打ち。人を操るなんて、俺の頭じゃ流石に無理だ。

 だが言霊とか、催眠術的な方法が使えるなら何とか?


 もっと、ミステリーを読んでおけば良かった。

 犯人を特定、そして追い込むには、どうすればいい。


 被害者と言われている長坂 光莉ながさか ひかりの友人…… 誰だよ。

 情報がなさ過ぎ。本人は、あれから休んでいるし……

 適当に当たるか。


 信美の連れ…… うーん。誰だよ。


 あれっ? そういや…… 俺、友人がいない。

 驚愕の事実。

 いつも、周りに信美が居たからだ。


 男どもから、疎まれた視線しか貰っていない。

 別にいいやと思っていたが…… あああっ。負け組なのかおれ?


 信美の知り合いなら、馬場、奥平、内藤、原、辺りだろうか?

 イベントのときは、良く班に混ざっていた。


 考えたが分からず、とりあえず。

 信堯に連絡をする。


 呼び出し音一回。いきなり出た。

「おいおま、何処いんだよ」

 焦った感じで声がする。


「今、天目。お前が予想したとおり」

「バカやろ。動くな。今から行くから」

 そう言って切れた。


 十五分。いや二十分。どうすれば真相に近づけるか考えていると、明かりが崖下でチラチラし始める。

 なんとなく行けそうな気がして、今度はしっかりと飛ぶ。

 そう、大丈夫な保証はない。死んだら、今回は即死。


「あらっ。どうしたんだ? 怖くねえ」

 すごいスピードだが、恐怖心が無い。

 下で、明かりがうろうろするから、声をかける。


「危ないから、下がっていろ」

 聞こえたのだろう、明かりがこちらに向く。


「ばっ。光を当てるな、下が見え……」

 そう言ったところで、地面に着いた。

 顔に光を当てられ、地面が見えなかった。


 準備が出来ず、棒立ちで着地してしまった。

 靴、大丈夫かな? 足首まで埋まったけど。


 俺が、靴を見ていると、怖々光と人が近寄ってくる。

「生きてる。お前何してんだよ」

 焦っているのだろう、ベタベタと体を触ってくる。


「天目に居るって言ったのに、なんで下を探すんだよ」

 ピタッと動きが止まる。


「いや来る途中に、しまったと思って。あの後、飛んだんじゃ無いかと」

「いや、飛んだけどな」

「そっ、そうだよ。おかしいだろう」

「ああ。おかしいよ」

 まあ夜だし、信堯に帰る道々説明をする。


「何だ? そしたら、今ゾンビか?」

 ライトを顎下から当てながら聞いてくる。コイツもう落ち着いたようだ。

 順応力高いな。


 聞かれて、まじまじと思い出す。

「そんな感じじゃ…… ないみたいだ。死に神の手下とか、悪魔のしもべ?」

「どっちにしろ。―― 生き返って良かったなあ」


「その、間はなんだ?」

「そうは言っても…… 生き返ったって言われて、素直にハイは言えないだろう」

 前言撤回。まだ、もうちょっと駄目だったようだ。


「まあ、そりゃそうか。それでな、ゆっくり思い返したらなぁ。俺友人て、お前しかいないことを思いだしたんだ。かわいそうだろう」

 そう言うと、ピタッと動きが止まる。

 人の顔をちらっと見て、また喋り始める。


「あーそりゃ。なんといって良いか…… あいつの仕業だろ」

「あいつ?」

「信美だよ。女の子は近寄るなって脅していたし、男には、お前との間をジャマするな。遊ぶ時間が減るって、叫いていたからな」

「何だそりゃ。全く知らんぞ」

「そりゃな。気づかれたら駄目だというくらいは、あいつでも流石に分かっているだろう」


 長いこと一緒にいたのに、全く知らなかった。知られざる真実。


 そうして、信堯家に到着。記憶と少し違う。だがでかい。立派な門。コンクリートの壁。よく見りゃ、壁の上には有刺鉄線。

 監視カメラが複数台。


「あー。子供の時は、何にも思わなかったが、おまえん家って、やー……」

「ちがう」

「指定……」

「ちがう。土建屋。ただの建築関係だ」

「若い衆が両側で……」

 そう門を開けると、敷石の周りに、どう見ても言っていけない人たちのような、顔つきが並ぶ。

「気にするな」

 だが、一斉にかけ声がかかる。


「若。お帰りなさいまし」

「おうっ」

 そう言って、のしのしと真ん中を通っていく。


「顔が……」

「気にするな」


 厳重な塀に囲まれた、和風の一軒家。

 よく見る形。門の上に屋根が付いている薬医門? の内側には、鉄板が張ってあった。柱も茶色く塗ってあるが鉄だよな。


「おう、久しぶり。大きくなったなあ。まあ上がってゆっくりしろ」

 おやっさんが出てきて、迎え入れてくれる。

 俺の顔を覚えていたようだ。


 暖かさが、しみる。

 きっと事情は知っているだろう。


 そうして。

「とりあえずお前の力を信じて、数人攫ってくるか。場所は、そうだ。倉庫があるあそこで良い。目隠しして…… おい親父、二、三人借りる。それとワンボックスも」

「おう良いぞ。きちんと埋めろよ」

 そんな答えが返って来る。


「やっぱり……」

「ちがう……」

 で、攫ってきた。それでもって聞いた。


 そう、攫ったのは、馬場と内藤。信美の知り合い。


「信美ってば、最近松平 元泰まつだいら もとやすて言う男と付き合いだしたけど、同じ大学にいきたいみたい。それで、克和君が同じ大学に行くだろうから、一人減らすと受かりやすいとか言って……」

「あー。言ってたねぇ」

 よくわからんが、信美が馬鹿だと分かった。


「何だそれ? あの、長坂って言う子は?」

「虐められていて、言いなり?」

「そうそう、部活のペットとか言っていた」

 それを聞いて絶句する。


「それだけか? 他の理由は?」

「うん。多分。ほかって何かあるっけ?」

 二人とも首をひねる。


 ―― 俺だけ何とかしても、他の受験生どうすんだよ。

 信美だけじゃなく奴らが、バカだという事は理解した。

 そして、えん罪は晴らすのが面倒だという事も。

 

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第3話へ続く。

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