暗躍は裏で動くから暗躍(ローファン。神崎光司君の話)

第1話 春の出来事

 この話、『勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました』という話の主人公。神崎一司の息子、神崎光司が絡んだ話となっています。

 読んでいない方は、なんじゃこりゃだと思いますが、流れでぶっ飛んだ話だと理解いただければ幸いです。

 一司は、ダンジョンが地球にできて、レベルアップする中で、封印されていた前世。

 神としての力が発動し、世界を救った話ですが、少し壊れた感じの主人公でした。

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 彼女は、ある旧家のお嬢さんだった。


 俺はなぜか両親が張り切り、訳も分からずエスカレーター式の学校に入り、通った。

 そこには、派閥のような物が存在し、その中で一般市民の子供達は右往左往する。


「あーお嬢様が、また誰かおもちゃを見つけたようだな」

「そうだな。目を付けられたら終いだ。奴はやめるか、首でもくくるか」

 表立ってはしない、陰湿ないじめ。

 もし表立っても、騒ぎにすらならない。

 虐められるのは、一般市民の子弟だから。


 中には上手く取り入り、その派閥に属し将来が安定になる奴もいる。

 そんなことを期待して、親からも聞かれることがある。

 どこどこの大手社長さん。娘さんが通っているはずだ。

 とか、息子さんがとか。


 そのクラスもすべて平民なんだよ。


 そんな中、良くある話のように没落した家というのも出てくる。

 大概、表面だけの付き合いはなくなり、追われるように学校から消える。


 だがその子は、旧家のお嬢さんにしては真面目で良い子だった。


 虐められていることに気がついた俺は、気になって様子を見る。

 彼女は、プライドを持ち、嫌がらせにもくじけない。

 凜とした姿。


 親が旧友に頼まれ、手形の裏書きをしたが、即飛んだらしい。

 そう不渡り。

 一気に数億の金など、古いだけの家にはなかったらしく、親父さんたちは走り回っているようだ。


 ご学友の誰かが、少し手を差し伸べれば何とかなるような事案。

 だが彼女からそんなことを言い出す気配はない。


 昔から学友として育って来た間柄。

 つまり全員が幼馴染みなのが、この学校の強み。

 人間の信用など、すぐには得られないし、本来時間が掛かるもの。

 それを作れる組織が学校だ。

 幼稚舎の頃から付き合いのあった人間。彼女の周りにも友人は幾人も居たはずだが、潮が引くように居なくなってしまった。


 隠されるために運ばれていく上靴。

 それを追いかける。


 ぽいっと草むらに投げられる。


 そいつが居なくなったのを見計らい、拾い上げ、汚れを払って下駄箱に戻す。

 なぜそんなことをしていたのかは判らない。見つかれば俺は標的となってしまう。


 ある日、奴らにでは無く、本人に見つかってしまった。

「どうして。余計なことはしないで」

 彼女はそう言う。悲しい目で。


 普段は、気丈で表情を崩さず淡々としている。

 だがその日は、表情が崩れた。


「別に、意味など無いが、卑怯なことは嫌いなんだ」

 ついそんなことを言ってしまう。

 向けた背中に対して、頭を下げられた気がしたが無視をする。


 そんな中、いじめをしていた主犯。

 先代が成り上がった家の息子が、何かを企み、旧家である彼女の家を陥れた様だという話が聞こえてくる。


 金を貸し、無理な開発をさせ、金を回収。

 できなければ手を貸せと、言いくるめられ、彼女の父親である友人を裏切った男。

 そいつを、裏で画策し意図的に実行したのが、濡手粟男という男で、濡手吹弥の父親。

 吹弥は口八丁で嫌われている男だ。


 だが、こいつにも取り巻きがいる。


 主業務である、ノンバンク系などや海外向けの車両バイヤーの息子などが、一大グループを作っているようだ。


 多くは、二代目や三代目の坊ちゃんや嬢ちゃん。

 多分旧家と言うだけで気に障り、一連の何かをしたのだろう。


「あら、ごきげんよう」

 そんな中で、話ができる財閥系の女の子に話を聞く。

「ええ。お父様から話を聞いていますわ。ですが、今は傍観をしておけと」

「それはなんで?」

「さあ? 何かお考えがあるのでしょう。ただ、古くからの家というのは婚姻を含めて繋がりがありますのよ」

 それがヒントだとも言うように、彼女は取り巻きと共に去って行く。


 それからも、彼女の靴や上履きを見張る。


 それは、当然噂になる。


 すると、吹弥の取り巻きから呼び出しが来る。

 当然無視だ。

 人目のないところには、近付かない。

 しばらく、放っておくと、教室で囲まれる。

 当然、本人ではなく、取り巻きの出番だ。


「おう神崎。なに一般人の息子が、調子くれてるわけ?」

「別に。そんなことを言われる覚えはないけど」


 囲んでいる奴らの外側で、騒めきが広がる。

 教室の雰囲気が変わっていく。


 そう俺は、小学校の一年生の時にやらかして、その時同クラスだった奴らには怖がられている。

 ちょっと力を怒りのまま使い、全員を凍らせるところだった。

 授業参観で親が来ていて、干渉してくれたが、そうでなければ教室の全員を殺していただろう。そう、僕は力が使える。


 別次元からの侵略により、地球にダンジョンができたときから、親父は世界を股に掛け暗躍し、今現在別次元に王国を造っている。

 元々日本人だし、日本と関わりが深い。

 今でも、親父の神崎一司という名前は、一部で恐れられている。


 まるで魔王のように。

 きっと親父の使う威圧と、冷気が噂となって残っているのだろう。


 おれは、神崎光司。魔法が使える。


「ちょっとあなたたち。神崎君にだけは、手をだしちゃ駄目よ」

 フォローが入る。

 うん? だけは?

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