悪役令嬢に転生した姉は、ヒロイン(♂)に転生した義弟と全ルート死亡確定を全力で回避します!

星澄

プロローグ

(1)

 口にしたのは毒だった。

 それは甘い甘い猛毒。

 そりゃそうだろう。毒はチョコレートに仕込まれていたのだから。

 酷く苦しい。

 身体が燃えるように熱い。

 瞼の裏側に誰かの顔がぼんやりと見える。

 知らない人。

 ううん、知ってる人。

 私にとって、とても大切な人。

 ずっとずっと忘れていたのに、どうして命が尽きようとしている今、思い出してしまったのだろう。


 どうして今なの?

 どうして忘れていたの?

 どうして………………


 でも、最期の最後に思い出せてよかった。

 記憶の中の貴方に会えてよかった。

 だからもういいの。

 もう二度と会えないのなら、この甘い甘い猛毒にこのまま殺されてしまってもいい。


 で貴方に会えないのなら………………


 

 確かにこの時、そう思った。

 そう願った。

 そう祈った。

 そうすればまた貴方と何処かで出会えるかもしれないから。


 ここではないまた違う世界で――――――――――


 

 しかしいつの世も、現実はそんなに甘くはないようで…………

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