第21話 1位VS2位

部屋から出ると俺は手近な窓から外に出る。

それと同時に悪魔化し、舞い上がる。


俺に続くベネットも同様にし

城のすぐ上空で俺たちは対峙した。


悪魔化したベネットを見て、

俺は思い出した。


あー

ベネットって洞窟内でヴィータを

食おうとして俺が腕を落とした奴か。

うん、お前は俺を恨む権利がある。


「さて、おっ始める前に言っておく」


俺は腕の聖刻をベネットに見せる。

それを見たベネットは手で目を覆い

天を仰ぐ仕草をする。


「なんと・・・そんな状態のあなたに

勝ったなどと、自慢になりません。」


負荷があるとは言っていたが、そこまでの

ハンデになるのか。

俺でない悪魔ならそうなのかも知れない。


「後、お前の直感は正しい。俺はアモンじゃない」


「ふむ、説明して頂けるので?」


「アモンはさっき魔界へ戻った。正式に

この体と力は今回に限り俺が受け継いだ」


「酔狂なお方だ。遊びが過ぎる」


ベネットに驚く様子はない。

シンアモンさんなら珍しい事ではないのか。


「そして伝言だ。ベネットに負けるのは

許さん、だってさ」


腕を組んで余裕の笑顔のベネット。


「は、逃げましたか。これで負けても

自分じゃない、任せたあなたのせいだと」


逃げたのかシンアモンさん


「第一、既に負けてるじゃあないですか」


こいつバカだ


「おいおい、負けてないから」


「強がりを!」


俺は努めて冷静にベネットに説明する。


「現に消滅してない、そしてもうお前に

勝ち目は無い。考えれば分かるだろ」


首を傾げるベネット。

見せた方が早いか。


「俺の魔核の状態を見て見ろ。」


デビルアイを起動させ俺を走査する

ベネットは驚愕の表情になる。

俺の魔核は切断され二つに分かれた

ままなのだ。


「・・・どんな手品です」


「手品じゃない。魔核を割った程度では

アモンでない俺を消滅させるには至らないんだ。

流石に聖属性では消滅するが、それは悪魔である

お前には使用出来ない力だ。分かるだろ

お前は俺に有効な攻撃手段を持って無いんだ」


信じられないと言った表情で口をパクパクしている。

ただ、諦めさせるまでには至っていない。


ベネットは背中に手を回すと

体の中から大剣を取り出し構える。

アレ体の一部だったのか

やっぱり

やるしかないのか


「お前の次のセリフは【ならば細切れになるまで

切り刻むのみ】っだ」


「では機能しなくなるまで魔核を破壊するまで」


「え?」

「はい?」


やべ

外れた

勝利フラグ立たなかった。

つかベネットーおいおい

空気読んで俺のセリフを復唱しろよ。


「あーもういいよ、来い」


俺が言い終わるのを待たずにベネットは

一気に距離を詰め、大剣を振るう。

迫る大剣。

その刀身には何やら文字が刻んである。

漢字だと思って無理やり読んで見ると

「創業祭」

と、読めた。

今後は悪魔剣「創業祭」と呼ぶ事にした。


迫る剣撃をあえて避けない。

剣が切り裂く直後に傷を修復する。

魔核は四分割になった。

それは直さず傷だけ修復する。


傍目には幻に切り付けているように

見えるのではないだろうか。

しかし何だかんだでベネットは考えている、

先ほどから彼の位置取りは、常にヴィータの

いる部屋を背後にする様に動いている。

迂闊に悪魔光線を撃てばヴィータが危ない。


撃っちゃえばイイのか

僕は取り返しのつかない事をって


『コラアアアアアァッ』


嘘だよ。

さて勝つか。


俺には格闘技も剣の扱いも身に着けていない

圧倒的な力の差でベアーマン辺りには

勝利出来るが、互角に近い相手には

その差が出て敗北してしまう。

と、思い込んでしまっていたのが

先ほどの敗北の正体だ。

負けてしまったのではなく

負けと決め込んでしまったのだ。


普通なら「力」より「技」の方が強いハズだ

序列でそうなっていないのは何故か

それはアモンの「力」は圧倒的過ぎて

いかなる「技」も小手先の小細工に

過ぎなくなってしまうからだ。

どんなに技を昇華させても

決して届かない高さにあるのだ。


シンアモンさんが残してくれた記憶。

アモンサイクロペディアを

ここに来るがてら閲覧したが

「技」らしい「技」をアモンさんは

持っていない。

つか

必要ない。

なんのことはない

何でもないただのパンチや蹴りが

災害級の破壊力なのだ。


いい加減、斬られるのに嫌気がさしたので

俺は大剣の命中する箇所に力を込める。


バッキーーン


凄い音で創業祭は折れた。


「ぐはあっ」


痛いのか

俺の洋服とは違う様だ。


「いい加減諦めろって」


悪魔障壁デビルバリア全身から気合を入れて

拒絶をイメージしたエネルギーを放射する。


「へあっ」


そいつを、発動させる。

技に長けたベネット相手には

避けようのない攻撃が一番だ。


全方位防御の為に考えた技だ

物理・魔法に効果がある

はず

近距離で発動させれば

シールド・バッシュと同じ使い方が出来る

はず。


「ヘブッ」


弾け飛ぶベネット。

回転する事でいなそうとしたのだろう

凄いドライブが掛かりながら

城の外壁に命中する。


ちょっと時間があるな。

前回、悪魔光線には対策が講じられていた。

攻撃するならやはり想定外の攻撃が良いだろう。


試して見よう。


ポッカリ開いた穴の中から

悪魔の両腕が伸び外壁を掴むとベネットさんは

ひょっこり顔出す。


「わふうううううううううう!!」


俺は高らかに雄たけびを上げ

作成した武器を持って突進する。


「ヤフー?」


雄たけびの意味が分からないベネットは

不思議な顔をするが眼前に迫る武器に本気で慌てる。


「ひっ・・・バカな」


勇者の家系家宝「エッダちゃんの槍」魔改造Verだ。

リソース無しで常時発動する。

聖属性の先端部は解析しきれなかったので

聖刻から、先ほどのハンス治療の要領で

注ぎながら発動だ。

人間の組織が耐えられる程度の

微弱な聖属性までしか俺には扱えないが


「びゃう!」


悪魔にはこれでも十分脅威だ。

まるで抵抗を感じず、命中したベネットの

体組織は消滅する。


中学時代、雪の降った日の帰り道

とある家の玄関前にあった雪だるま

それを立ちションベンで溶かした時を思い出す。

そのぐらい簡単に穴が開く。


・・・あの時はごめんなさい。


俺はデタラメな動作で突きを繰り返す。

エッダちゃんと違って素人の動きなのが自分でも分かる。

でも、この武器の場合それでも十分だ。


「わふぅわふぅー」

「ひゃう・・・・ぎょわぁ」


もう可哀そうな状態だ。

動きは素人でも動体視力とスピードはベネットと同等だ。

通常なら剣で受け流すついでに

絡めとって相手から武器を奪うのだろうが

剣自体も悪魔の体の一部で出来ているせいで

当たる箇所から溶ける溶ける。

回避しにくくさせる為に翼や足を優先的に

攻撃したのも功を奏した。


「最後に何か言いたいことはあるか」


もう、頭と魔核周辺の胸の一部だけになって

シュウシュウ煙を上げているベネットに俺は聞いた。


「・・・わふーとは何ですか?」


「勇者の家系に伝わる破邪の呪文だ」


俺は魔核以外を消し去った。

魔核だけになって転がるベネット。

再生が始まる前に俺は自分の体内にしまい

聖刻に絡めておいた。

これなら再生しようにも、この体を

乗っ取ろうにも聖刻が邪魔で何も出来ない。


「さてと」


俺は翼を起動させると、ヴィータのいる部屋へ向かう。


ヴィータはまだベッドに寝っ転がっていた。

そうしていろとは言ったが、本当にそのままとは


「鎖とか外せないのか」


返事の代わりにヴィータは黄金の輝きを放とうとする。

しかし輝きは出す側から全て鎖に

吸い取られ空中に放電現象のようなってに消える。 

なるほど

対神用の特別なアイテムなワケだ。

本当なら悪魔は神に触れる事など出来はしないが

これなら捕獲可能だ。

力の根源である聖属性が封じられてしまえば

神と言えどただの十代の非力な女の子だ。


「今、外してやる」


俺はベッドに近づき、ヴィータの手首に

はまっている手錠部分に手を掛ける。

しかし

ヴィータはその上から手を置く。

俺の手の上に被せる様に、

外すなと言わんばかりだ。


「・・・なんだ。」


「・・・。」


「・・・外せないだろ」


横になったままのヴィータは真顔で俺を見る。


「・・・今なら触れるんじゃなかろうか」


ハンス達の所に戻るのが少し遅れた。



ヴィータを乗せ飛行して戻る。

出来るだけ大きな力を使わない様に最小限で飛行するも

二人とも「痛たた痛たた」言いながら

なんとか帰って来た。


隠れていろといったのにテントを立てている。

まぁお陰ですぐに発見出来たんだが

着地してヴィータを下ろすと俺は人化する。

足元がフラつく。

駆け寄って来るプリプラとハンス。


「ただいま。」


そう言う俺を見たプリプラは驚きの声を上げる。


「ちょ・・・大丈夫。やつれてるよ」


ハンスも心配そうに俺に肩を貸してくれた。


「・・・激戦だったようですね」


「む・・・まぁ激しかった・・・かの」


鎖をジャラジャラさせながら両手を頬に当て

クネクネしながらヴィータは言った。

鎖、持って帰ってきたのか。


「すまん。横になりたい」


疲労が凄い。

太陽って黄色だったけ

もう

なんか色々あり過ぎた。

俺はそう告げる。

ハンスに支えられながらテントに直行

そのまま倒れ、泥の様に眠った。



【おやすみの所すいません】


深い闇の中

語る掛けてくる奴がいた。


【あのーすいませーん】


うるせぇな

寝てんだよ


【魔核を破壊して頂けないと魔界に帰れないんですけど】


「おぅ、ベネットか」


【聞こえてらっしゃるんじゃないですか】


「・・・おやすみー」


【お待ちを】


無視して睡眠を続行しようとする。

どうも睡眠中は支配権とやらが緩むのか

起きている時には感じない意識が

感知出来るようだ。


【どうかお話をーー】


「なんだよ。うるせぇな」


【魔核を開放するか破壊するか、どちらかお願いしたい】


「どっちもダメだ・・魔神13将だっけ」


【はい】


「後11っ個、コンプリートしようと思う」


【そうすると、何が起きるのですか】


「・・・なんか起きない」


【多分、何も・・・。】


「なんだつまんね」


【なので開放を・・・。】


「今さ」


【はい】


「俺とお前の魔核があるじゃない」


【ございますね】


「ツインドライブとかでオレ強くなってない?」


【残念ながら、そういうモノではございません】


「なんだよ意味無いじゃん」


【はい。ですので何故このような事をするのか甚だ疑問です。】


「体外に出したら復活出来るの?」


【多少、お時間を頂ければ】


「そうするとやっぱり襲い掛かって来る?」


【いえ、勝ち目がございませんので逃亡に尽力いたします】


「逃げ帰るのはやっぱり魔王の所かい」


【はい】


考えを巡らせる。

パワーアップにならないなら体内に入れて置いても意味は無い。

破壊して魔界に帰らせるのが一番だが

それはいつでも出来る。


俺はついで復元し体内にしまい込んだ

例のブツを思い出した。


「後さ創業祭あるじゃない」


【創業祭?とは】


「お前の使っていた剣」


【そんな名前ではないのですが・・。】


「アレに魔核ってハマる」


【私の体の一部ですからね。出来ると思いますよ】


やっぱり武器は持ちたい。

大概の武器よりアモンは生身の方が強い

なのでシンアモンさんは武器を使って無い

でも俺としては使いたいのだ。

光・聖属性はエッダ槍でいいとして

闇:邪属性として創業祭を使いたい。


「開放はちょっと待ってね」


【ぐぅ】


「魔王に一回会ってからだ」


【ババァル様にお会いになられると】


ババァルって、確か一番強い魔王だったよな。

マジかよ悪魔側どんだけ劣勢なんだ。


【ギギギギギギギ】


「やだ怖い、何?」


【聖属性がギギギギ】


ヴィータがなんかしてんのか

俺は起きる事にした。


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