心が視える私は訳ありモデルに振り回される

プロローグ

　私には人の心が具現化して視える。

　例えば、母の心の形はライオンだ。母自身は小柄なのに対して、心の形は眼光が鋭い雌ライオンなのである。父の心の形は真逆で、ふわふわのほほんとしたアルパカだ。

　具現化した心の形はその人の内面に強く影響される。だから心の動物は、人の感情や考えを映し出すような行動をとるのだ。

最初はこの動物たちが何なのか分かっていなくて、私の周りにはいろんな動物がいるんだなぁ、としか思っていなかった。

　だから普通に友達に話したら、「堂々と嘘をつく子だと思わなかった」と笑いものにされた。同級生の態度に傷ついた私は、悲しみを抱えたまま両親に話した。

　結果は惨敗だった。

「あら凄い。特別な力があるのね」

　母は優しい笑顔を浮かべたが、その心の形であるライオンは『テレビの見すぎかしら』と胡乱気な目をしていた。

　父は引きつった笑みを浮かべて母の言う通りだとうなずいていたが、心の動物を見るまでもなく無理をしているのが分かる。

　口先だけの言葉というのは、こうも虚しいものなのか。

　もう誰かに期待するのはやめよう。諦めた私はそれ以来、誰にも動物たちの話をしていない。

　だから中学校も遠く離れて、小学校の同級生が一人もいないようなところを選んだ。心が見えることを利用して、誰にも好印象を持ってもらえるように振る舞った。

　友達と言える子がいないことは寂しかったが、また笑われていじめられるよりはマシ。

　私の名前は南見紬（みなみつむぎ）。

　秘密を抱えたまま中学二年生になる私に、転機が訪れる。