4.

(はぁ……。一体いつになったら、こんな生活から抜け出せるんだろう?)



俺はため息をつく。



あれ以来、俺は毎日のように彼女達に付き合わされていた。……正直、かなりしんどい。

でも、俺は諦めずに何度も抵抗した。


賃貸物件は、既に解約済み。


今は、彼女達が用意した一軒家に住んでいる。

食事も掃除も洗濯も、全て彼女達がやってくれるのだが、俺はずっと自室に閉じ籠っていた。


……たまに、外に出ることはあるけどね。


でも、その度に誰かが俺の後をつけているような気がする。



そして、今日もまた 誰かが 俺の部屋の中にいるようだ。……ガチャリ。

部屋の扉が開く音が聞こえた。


また、誰かが俺の部屋に入ってきたらしい。


「……おい、勝手に入って来るなって言っただろ?」

俺が声をかけると、彼女は嬉しそうに微笑む。


「我が愛しき者よ。どうか、そんな悲しいことを言わないでください」

真琴はそう言いながら、俺のベッドに寝転がる。


「…………」


最近になってようやく理解したが、彼女は未だに中二病のようだ。


「さぁ、こちらに来て私と愛を育みましょう♪」

「おい、出て行けよ」

「嫌です」

「なんで?」


「我には我の義務があります。それは、あなたの側にいること。あなたを守ることです」

「はぁ?」

「朔也様……お願いします。どうか、私を受け入れてください」


「無理」


「何故ですか?」

「逆に聞くけどさ……。お前は、俺のことが好きなのか?」

「いえ、特には。ですが、あなたは私の理想の王子様なのです」


「……」


「朔也様……私はあなたを愛しています」


「……」


「朔也様……私は、あなたのためならば、どんな試練でも乗り越えられる自信があります」


「……」


「朔也様……私の気持ちは変わりません」



「……はいはい」 俺は適当に返事をする。


「朔也様……私は本気ですよ?」

「はいはい」


「朔也様……聞いています?」

「はいはい」



「朔也様!!」



「うわっ!びっくりした!急に大声で叫ぶなよ!」

「では、ちゃんと話を聞いて下さい!」


「わかったから、静かにしてくれ!」

「はい」


俺の言葉を聞いた真琴は、すぐに大人しくなった。


「それで?義務ってなんの話だよ?」

「はい。私達は、これから先、あなたを守り抜くという使命があるのです」



「は?」



「私達には、あなたを一生守っていく覚悟があります」

「えっと……どういう意味?」


「月の戦士として、あなたをお守り致します」

「は?……何それ?」


「私達の戦いは始まったばかりなのです」



「いやいや!何言ってんのか全然分かんねぇよ!説明しろよ!!」


「はい。まず、私達の正体についてお話ししましょう」

「正体……?」


そういえば、こいつは前に『私は美少女戦士である』とか言っていたな……。


「私達の種族は『ムーンナイト』と言います。

別名『月夜の狩人』とも呼ばれており、主に夜に活動しています。

この世界の平和を守るために、日夜戦い続けているのでございます」


「へぇ~。そうなのか~。すごいな~(棒読み)」


「ちなみに、私の名前は『マコト』といいまして、職業は『大魔術師』でございます」



…………。



……はい?



「まあ、簡単に説明すると、私達の住む世界は、実は悪の組織によって滅ぼされようとしているのです」



……。



いやいやいやいや。待てよ。ちょっと落ち着けよ。

何だよ、その設定!? ツッコミどころ満載じゃねえか!!



「あの……一つだけ質問してもいいかな?」

「どうぞ」


「何で俺にそんな秘密を話すんだよ?」

「それはですね……私があなたに一目惚れしてしまったからです」


「は?」


「つまり、運命を感じたということです」

「……」


彼女は真剣な表情で言う。


俺には、彼女の言っていることが全く理解できなかった。

そもそも、どうして俺なんだ? 俺よりも格好良い男なんて 沢山いるだろう? 俺なんかより 頼りになる奴だって、たくさんいるハズだ。


……なのに。なんで、俺のことを好きになったんだろう?


普通の人間だ。


それに比べて、彼女達は誰もが羨むほど美しい容姿をしている。

スタイルも良い。

性格も悪くないと思う。

頭も良さそうだし、運動神経も抜群なのだろう。


そんな完璧な女の子達が、なぜ平凡なをフォーリンラブさせようと頑張っているのだろうか? 分からない。

俺には全く分からなかった。


「何で 俺なんだよ?」俺は彼女に尋ねる。



すると、彼女は恥ずかしそうな顔をした。



「教団があなたを欲しがっているのです」

「……教団?」


「はい。あなたを誘拐するために、たくさんの人が動きました」

「……はぁ?」


「ジェフリー・ヒントンの関係者だという情報が流れたようです」

「……」


「そのせいで、多くの者が犠牲になりました」

「……マジで?」


「はい。朔也様を狙う者は、後を絶ちません」


「……」

「……」


「……という設定なのか?」

「はい!」


「出て行け!!」


俺は彼女の襟首を掴んで持ち上げると、そのままドアの向こうに放り出した。


次は誰がやってくるのだろうか?



(はぁ……。一体いつになったら、こんな生活から抜け出せるんだろう?)



俺は、再び ため息をつく。


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