第8話

***


「これが……、

 私の【 与えられた 力ランズ 】なのかもしれないわ!」



転生した者が 神様から『得点をもらえる』というのは よく聞く話だよね?


例えば……


『前世の記憶』とか

『特殊能力』とか あるいは『特別な能力』や


『特別な才能』なんかが、そうかな?


虹夜は『幸運値が とても 高い』のかもしれない。

(この世界では 数値化 できないけど)


――これは、神様に 感謝しなくては!



***


別居を切り出した理由――。



それは、急速に広まった『産後うつ』という パワーワード だった。


『免罪符』といっても 良い と思う!


これを 盾に、私は 夫に 別居を 切り出した。


つまり、夫が異常な殺人鬼となっても、私に 火の粉は 飛んでこない……(たぶん)。



そして、夫と別居をして、1年が経とうとしている――。



世間では、トー横(歌舞伎町の新宿東宝ビル付近)と呼ばれる場所で、

若い学生が 何名か 行方不明となっているらしい……。


ニュースでも話題になっているみたいだし、警察も動いているそうだ。



(美羽さまは 大丈夫だろうか?)


あんなに可愛いくて綺麗な顔立ちをしているんだから、誘拐されたのかもしれない!? 不安は積もる。つもる、積もる。雪だるま式に。


連絡が取れなくなって、もう1年経つ。


(無事だ と 良いけど……)



もし 仮に もしも だよっ!?


私が美羽さまの立場なら、どう行動するだろう?


1・警察に通報

2・自力で脱出

3・他の人に助けを求める

4・助けが来るまで待つ

5・自分で動く

6・動けない

7・神頼み

8・何もしない

9・逃げる

10・隠れてやり過ごす


きっと『4・助けが来るまで待つ』だと思うんだけど……。


だとしたら、監禁されている場所はどこなんだろう?

自宅なのかな? それとも別の場所なのかな?


前世の記憶があっても、分からないことだらけだわ。



この世界は ゲームアプリで 有名となった、デスゲーム。


その名は―――「月影の死神‐晩鐘パラノイア‐」


夫の名前は、卵頭ランドウ 公崇キミタカ

このゲームでの凶悪殺人犯だ。自動車での遊歩道・無差別殺人。その後、小学校へ押し入って 多くの子供と数人の教師を殺害。逮捕されるも 刑務所から脱走し、謎の組織に保護され「ニコラシカ」というコードネームを授けられる。



それから、デスゲームに参加して、【スキル】を使った殺害を楽しむ。

でも 最後に、主人公くんのトラップに掛かり、死んでしまう。

――でも、ヒロインは 守れなかったのよね。



エンディングは、主人公くんとヒロインの 関係性を誇張するかのように、公崇の結婚指輪が赤く染まる。


まるで、続編がアップロードされるような 終わり方だったのを覚えている。


(あぁ! 美羽さまが、ルート次第で夫に殺されてしまう…)


だけど、正規ルートは、ミステリアスに笑って 男性トイレに入ると 消息不明となってしまうのだ。殺害なんてさせない! ベスト エンディング を目指すわ!!


ただ…。いま思い返せば、物語とは関係ない ネタ動員だった ように思えてしまう。



(いったい、どこへ消えてしまったの?)



私の行動が、『未来』を変えてしまったのかもしれない。


念には 念を入れて――。このゲームの主人公を味方に付けておこうと思い、美羽さまに居場所を訊ねようとして 接触してしまったことが、いけなかったのだろうか?


皇族である両親のコネクションを頼って、彼女の居場所を探してもらった。

そして、現在も探してもらっている。



――でも……。どうしても居場所がつかめない。



(どうか、ご無事でありますように)




と、そのときだ――!?




ドンッ! ドンッ! ドンッ! と、突然 大きな音が響いた。隣の部屋からだ。


そこには、1歳となる長男と 面倒を見てくれている虹夜さんの父親がいる。



(ついに、恐れていたことが 起きたのだろうか?)



恐る怖る、隣りへ 続く 扉 をひらく………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る