デスゲームの『モブキャラ』に転生してしまいました

越知鷹 京

第1部

第1話

「やってしまったー!」


調子にのって 明け方近くまで スマホで友だちにメッセージを送りあっていたら……案の定、朝寝坊した。今日は 彼氏と初デート だというのに ついていない。


昨日、友だちに「渡したい物があるから、デートの前に寄ってほしい」と言われたので、顔だけ水で洗うと、髪もとかすことなく 一括りにして 玄関へ向かう。


「もう。たまには お姉ちゃんを見習って 家の手伝いをしなさい!」と母の小言が聞こえたが、さらっと聞き流す。


自転車に飛び乗り、ペダルと全力で回す。

私の住んでいる所は、港があり、友だちとは小さい頃から 灯台で よく遊んでいる。

家から灯台まで、自転車で10分は掛かるだろう。


海が見えてきた。

私は自転車を立ち漕ぎにへと変えて、ペダルを回す。

さらに調子づいて さらにペダルを回す。

私 史上、ベストタイムを更新した! と思うほどに速い。


灯台まであと少し。


そのとき、自転車から『 バ ンッ 』という 大きな音がして、チェーンが壊れた。

慌てて、ブレーキレバーを握るけど、まったく止まる気配がない。


そのまま、友だちの前を通り過ぎて、海へと突っ込んでいった。

海育ちのくせに、泳げない私は、そのまま沈んでいった。


…ブラックアウトしていく意識の中……「 アタシから 彼を奪った罰だよ 」という友だちの声がこだましていた。



***



……という前世の記憶を 虹夜さんは、長男の出産と同時に思い出した。

海野 虹夜、御年28歳。


皇族の一人娘として、今日まで 蝶よ 華よと それは可愛がられてきた。

結果、利己主義で 高慢ちきな お嬢様に 育った。


それゆえに、親しい友人もいない。


私の誤った行動を注意してくれる友だちが、一人でもいてくれたら、こんな男とは結婚しなかっただろう。


学生の頃、ミス○○に選ばれた女性に嫉妬して、その彼氏を奪ったのだ。

ただの 嫉妬が 凝り固まって、この男との結婚まで行きついてしまった。


夫の名前は、卵頭ランドウ 公崇キミタカ

前世の私が、それなりに 遊んでいたゲームアプリの凶悪殺人犯だ。


それは【デスゲーム】という ジャンル作品 で 同級生の間で とても人気があった。


その名は―――「月影の死神‐晩鐘パラノイア‐」。


そしては、私の役は 序盤で理由なく殺される モブキャラの頭角だった。

自動車での遊歩道・無差別殺人。その後、小学校へ押し入って多くの子供と数人の教師を殺害。逮捕されるも 刑務所から脱走し、―――。


***



ヤバい。やばい。やばい。ヤバい。やばい。やばい。

やだやだやだやだ。どうしよう?―――



無事に出産を終えた、私の頭の中では恐怖だけが、渦巻いていた。



………そうだ。



こんなヤバい男とは さっさと離婚してやろう、と思った。

しかし、それだと週刊誌からは『離婚が原因で、異常者へと転落――?!』などと書かれそうで、その後の人生が 積んでしまう。


こうなったら、すべきことは、アレだ!


寵愛し、堕落させて……、


正常な判断ができないくらいに ダメ男へ 育て上げて、

自殺をするように仕向けよう!



この時の私は「自分にしか 興味がなかった」のだ。


だから――、


あんな 恐ろしい事を 計画してしまった。



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