あめふる大陸 / 双月意沙 作

名古屋市立大学文藝部

あめふる大陸 第1章

ちゃぷん、ちゃぷん、……と、水の波打つ音がする。

 私は眠ったまま、耳もとでこだまするその音を聞いている。

 包むようにゆったりと揺蕩たゆたう、冷たく豊満な水の波に、私の身体は浮かぶでも沈むでもなく、ただ静かに揺られていく。全身をだらりと弛緩させて、波に導かれるままに漂いながら、私は言いようのない幸福感で満たされていた。

 ずっと。

 ずっと、ここに居続けたい。

 漫然と光をたたえた清水のひんやりとした感触に、体温が溶け合っていく。そのまま大きく息を吸って吐くと、深いところから天井まで、ゆっくりと循環する透明な流れの一部になれた気がした。

 そのとき、底の方から突然現れた激流が背中を押し上げた。私は目を開く。そして、はっと息を呑む。眩しく透き通る視界の向こう側に、それはいた。

 神龍。激しい水の深さごと、飲み込んでしまうような、巨大な水の生きた塊。深く深く響きわたる唸りを上げて、躍り上がり、私を通り抜けてなおも止まらない。水と水がものすごい勢いでぶつかり合い、轟音を立てて砕け散る様が、山を、街を、世界を震わせては通り過ぎた。龍の滑らかな肌を幾重にも覆う透明な鱗が、乱反射のようにきらきらといくつも輝いていた。

 私の喉からは、声にならない叫びが無数の泡となって漏れ出るばかり。それは瞬く間に水流に掻き消され、光の中に虚しく溶けていく。

 ひとすじの弧を描いて駆け抜けた力強い唸りは、しかし、どことなく苦しそうな響きをも含んでいた。私は舞い上げられた反動で沈み込みながら、龍の向かった蒼穹そうきゅうの彼方へ必死で手を伸ばす。

 ――待って!

 掴みかけた水は手から零れ落ち、龍の姿はあっという間に見えなくなった。一瞬の嵐が去ったあとで、いっそう冷たく仄暗ほのぐらく影を落とした水の街が、茫然と佇む幼い私を憐れむように見つめていた。



 気がつくと、青い水面の代わりに頭上にあったのは、朱や金色で豪華に装飾された天蓋だった。いつの間にか私は、柔らかい布団に背中を沈めて仰向けに転がっていた。そこから目線だけを動かして周囲を窺うと、寝台のそばには色鮮やかな花がこれでもかと飾られ、壁にも絨緞じゅうたんにも手の込んだ曲線模様が煌びやかに這っている。寝室にしてはやや広い室内は程よい湿気に包まれていて、微かに香る甘美な匂いも相まって妙に心地よい場所だった。

 夢なのか現実なのか判断がつかず、転がったまましばらくぼうっとしている。ここはどこなのだろう。自分がなぜ、いつからここにいるのかもわからない。記憶の糸は気を抜けばふつりと途切れてしまいそうで、慎重に、僅かに胸に残るところから少しずつ手繰り寄せていく。

 あの時。深く響く、水の音。天に駆け上がっていった巨大な龍。そして――。

 はっとした。

 世界は。

 寝台から飛び起きて急いで部屋を抜けると、しっとりした甘い空気は乾いた冷風に変わってしまう。悪い予感がして足を早めながら、私は階段を駆け下りた。建物はよほど高いらしく、想像以上に長く階段が続いている。いったいどのくらい眠っていたのだろう。動き方を忘れた足は何度ももつれて、転びそうになる。構わなかった。愛していた世界が、あの時、本当に、消えてしまったのだとしたら。

 長い階段を半ば転げ落ちるように降りた先に現れたのは、黄色く渇ききった一面の大地。それは、全ての希望が、ひとつ残らず去ってしまった跡だった。


第一章 駆り立てるもの



 そびえ立つ建物の影に色濃く染まる荒原を、進む。仰々しい人工物のむくろがひしめき合う街には、どこを見渡しても雑草ひとつ無く、木は完全に枯れたものがまばらに残っているだけだ。

 虚ろな音を発して荒野を渡る風に、秋の匂いがしていた。

 それでも、快晴の日差しが若干傾いて照らす日向に出れば、熱せられた地面からの照り返しに肌が焼かれる。辺りを見渡すと、寝室のあった塔を中心に、ざっと見ただけでも数十軒の大小の建物が一緒になって城壁に囲まれていることがわかった。平原にぽつんと建つ要塞のような出で立ちだ。奥のいちばん大きな建物は城か、それとも宮殿か、とにかく偉い人がかつて住んでいた場所に違いない。華美な装飾に似合わずひび割れた外壁が、長らく手入れされていないだろうことを思い知らせる。

 自分はなぜこんな場所にいて、なぜ他に誰もいないのか。困ったのは、それが何ひとつとして心当たりの無いことだった。人か、食糧か、もしくは何か状況を掴む手がかりになるものがあればよいのだが、あいにくそういったたぐいのものは未だ見つからない。

 左手で汗を拭い、建物の陰に腰を下ろす。久しぶりに動いたからか、妙な疲労感が全身を侵していた。これからどうしたらいいのか。答えを出すには頭が重すぎる。膝を抱える手のひらには、ちょうど蛙の水かきのような薄い膜が広がっていた。それを何とはなしに眺めながら、とりあえず飲み水を探そう――と思い立つ。

 立ち上がろうとする前に、私は思わず顔を上げた。砂混じりの空気の中に、微かな人の匂いがしたのだ。微妙な気配はすぐに乾いた足音に変わり、まっすぐに近づいてくるのが壁越しにわかった。一歩、一歩と砂を踏み分けてこちらへ向かう。どうやら先に気づかれていたらしい。

 まだ、人がいたんだ。

 私は安堵の息をついて、足音のする方へ駆け出す。夕陽の沈みかけた方角に、砂色の外套に身を包んだ小柄な人間が立っていた。逆光に隠れて表情まではわからない。近づくと、その人は足を止めて短剣の柄に手をかけた。はっと気づいて、私も歩みを止める。

「何者だ」

 頭まで覆った布の下の、紅い唇がまっすぐに問いかけてくる。とびのようによく通る、凛とした少女の声だ。

言葉は、わかる。しかしその問いに対して、私は何も答えることができなかった。声が出なかったのだ。たとえそうでなくとも、記憶の大部分は未だどこかに埋もれていて、自分がいったい誰なのかすら思い出せない。

「答えろ。なぜ生きている」

 二十歩は離れているが、ものすごい剣幕だ。手のひらがじわりと湿ってくる。何か話さなければと焦るだけで、固まった喉は言うことをきかない。

「――、少し、話を」

「物ののたぐいめ!」

 人間の少女は腰に携えた短剣を抜き放ち、その勢いのままに突っ込んできた。とっさに跳びすさって避けようとするが、反応が遅れ、身体をわずかに引くくらいが関の山だった。その瞬間である。

 砂地に踏み込もうとしたかかとが、空を切った。何が起こったのか悟るより早く、地面に不自然に開けられた穴に落ちてしまう。衝撃とともに軽いもの同士が軋む音がして、尖った物体が背に当たる痛みに私は思わず呻いた。

 しまった、と思った。これでは完全に身動きがとれない。しかし、とどめの斬撃の代わりに降ってきたのは、少女の冷たい視線だった。外套の布に収まりきらない分の髪が淵から垂れ下がっている。目が合い、ひとまずほっとして立ち上がろうとするが、足場は不安定で思うように立てなかった。

 嫌な感じがして、おそるおそる自分の足元に目を落とす。そこに無数に転がっていた物体を見て、肌がぞっと粟立つのを感じた。

「……骨」

 穴の底を埋め尽くしていたのは、大量の人骨だった。目を見開いて外に視線を向けると、彼女も同様に驚いた表情でこちらを凝視している。

「それは」

 少しの沈黙の後、やにわに手首を掴まれた。

みずりの一族……?」

 目が合う。一瞬何を言われているのかと思ったが、その言葉にうっすらと聞き覚えがあった。

 水守り。人間界では、自分はそう呼ばれていたらしいことを思い出した。なんだそっちか、と勝手にすかされた気分になった私をよそに、少女は私の手についた水かきを食い入るように見つめている。

「名は?」

 研ぎ澄ました剣先のような視線を、改めてこちらへ向ける。私はそのまなざしから逃れるように空を仰いだ。記憶すら曖昧なままで新しいことが次々と起こるのだから、頭が痛くなりそうだった。

 名前は、確か……そう。

「――ジウ」

 そう、確かそんな感じの名前だった。口をついて出た響きはどこか懐かしいけれど、同時に、すごく大事な部分にもやがかかっている気がする。最後に呼んでもらったのはいつだったか、誰にだったか。なんにしても、遠い昔のことのように感じてしまう。

 少女がしきりに何かを呟いているのに気づいて、意識をこの場に戻す。いつの間にか手は離されていた。

「あの一族は二年前に滅亡しているはず。まさか生き残りがいたというのか?」

 彼女は独りごとのようにそう言ってから、しかも、と付け加える。

「……なぜおまえのような水守りが皇帝の居城にいる? 今までどこにいた」

「皇帝?」

 聞き返すと、「知らないのか」と少女はわずかに驚いた調子で言った。そして、その名を口に出すのも嫌だというふうに苦々しげに続ける。

琅関ろうかんていだ。世界をこんなにした張本人で、稀代の暗君――人の心がわからないクズさ。奴は取り返しのつかない大罪を犯し、神龍に見放され、果てはこの世からほとんどの生命を奪って消えた。二年前の話だ」

 ほう、と少女はため息をつく。彼女が言っていることの大半を私は理解できなかった。それより、早くこの気持ち悪い場所から抜け出したくて、足をかけられそうな凹凸おうとつがないか探ってみる。

 おもむろに少女が立ち上がった。穴から這い上がろうと試みる私に手を貸すこともせず、城壁の方へひとりで歩き去っていく。

「おまえのことを詳しく聞かせろ。私には、ここで起こっている全てを知る必要がある」

 そう聞こえたときには、小さな影は視界の端に消えかかっていた。


  *


 中心の塔のさらに奥に、床が一段高くなったひときわ大きな建築がある。ユンファと名乗ったその少女が語るには、琅関帝という人物が二年前まで政治を取り仕切っていた拠点が、この建物だということだった。一国の司令塔というだけあって、目眩がしそうなほどに立派な宮殿だ。

 ユンファは先立って宮殿に上がっていくと、慣れた様子で廊下を進み、突き当たりの広間へ入っていった。広間には円卓といくつかの椅子があり、そのひとつに私を座らせて自分は向かい側に腰かける。

「詳しい話を聞かせてもらう。おまえはどこから来た? ぞくこくの方か、それとも山脈の向こう? 歩いてきたのか、外の様子は――」

 卓に身を乗り出してまくし立ててから、はっと気づいたように口をつぐんだ。

「……すまない、こうして人と話すのは久しぶりでな」

 話せることは何でも話してほしい、とユンファは言うので、私もゆっくりと口を開く。

「……私は、ここの向かいの、高い塔の中で眠っていました。目が覚めたのは、ついさっきのことで。気づいたら知らない部屋にいて、いつから眠っていたのか、全く記憶が無いのです。だから、今がいつなのか、ここがどこなのかも、わからない」

 いざ言葉にしようとすると、うまく繋がらずにぎこちなくなってしまう。それを、彼女は黙って聞いていた。

「それで、他に覚えていることは無いのか。以前に暮らしていた場所とか、会った人間のこととか」

 神妙な面持ちでユンファが尋ねる。さっきより幾分か落ち着いているものの、表情の真剣さは変わらない。

 私は記憶をたどる。以前に暮らしていた場所。その風景に、ひとつだけ心当たりがあった。

「ふるさとは、冷たく、美しい街でした。泳いでいると、大きな龍がいて、街を飲み込んで、空に上がって、それで――」

 そこで言葉に詰まってしまう。夢はその時点で終わりだった。しかし、それは夢でありながら確かに存在する過去の断片でもあり、それが唯一の記憶ともいえた。あの時感じた心地よさと高揚感はただの幻でないことを、私は確信をもって言うことができる。掴もうとして零れ落ちた、水面の向こうの青空の光。その感触がわずかに残る水かきを指でそっと撫でると、世界を揺らす咆哮が再び響いてくるような気がした。

「そういうことか」

 彼女は目を伏せて、ただそれだけ言った。その後、立ち上がって奥の透かし窓の方へ歩み寄る。窓の先では、昇りかけの細い月が白々と浮かんでいた。外は庭園風にしつらえられているが、池には月光を映す水も無い。

「少し、嫌な話をする」

 ユンファはそう切り出した。

「――今からちょうど二年前、神龍が突然姿を消した。そのことが意味していたのは、すなわち人の世の滅亡だった。その日から二度とこの世界に雨が降ることは無く、土は砂に、人は骨になった」

 広がる砂地と、窪みの底で見た大量の人骨が脳内をよぎる。

「神龍って」

「ああ、おそらく、おまえが昔見たというそれだ」

 巻き上がる水流と、街を揺るがすほどの咆哮。生物というよりは、水の塊と言っても差し支えないだろう。あの日、駆け上がる巨大な影を追いかけることすらできず、私は街にひとり取り残された。もしかすると、あれが人と龍の最後の邂逅かいこうだったのかもしれない。

「知っているだろうが、万物の根源は水だ。そして、水を創造し、水からありとあらゆる物質を創造する役割を担うのが、神龍という存在。古来、人々は神龍と心を通わせることで、その恩恵にあずかってきたのだ。しかし、もはや人と龍の絆は断ち切れてしまった。つまり、私たち人間は生存するすべを失くしたのだ」

 知らない単語が多すぎて、私は曖昧に頷く。ただ、人は龍がいないと生きていけなくて、その龍がいなくなり雨が降らなくなった途端、みんな死んでしまった――とだけは理解できた。唾を飲み込んで、次の質問を投げかける。

「それで、もう世界には誰もいないの」

 ユンファの他に、生き物の気配は無かった。静寂の街。がらんどうの城。彼女はここで、二年もひとりきりで過ごしてきたのかと考えると、気が遠くなってしまう。

「私ひとりだけだ。いや……おまえがいるから、ふたりか」

人間が水無しで生存できる期間は、せいぜい五日ほどといわれている。それなのにおまえが二年も生きていられたのは、特別な力で守られた空間にいたからだろう。そう彼女が解説してくれた。

謎は、ひとつ解けた。それじゃあ、と私はさっきから気になっていたことを問うてみる。

「ユンファは、二年間どうやって生きてきたの?」

 彼女は何か言おうとして、それから黙った。もはや夕陽の残滓ざんしだけがほのかに照らすだけになった部屋に、私の声だけが取り残されたように響く。まずいことを言ってしまったか、と焦りが生まれたとき、ユンファは小さくかぶりを振った。

「……今は、まだ訊かないでくれ」

 温度のない声に、つんと背筋が冷えるのを感じた。しかし彼女を見るほどに、切実に知りたいという思いが次から次へと募っていく。この二年間で、世界に何があったのか。私はなぜこの場所にいて、何をなすべきなのか。

 私は再び窓の外を見やった。遠くに見える東の山脈はすでに闇夜に飲み込まれている。そのどこかに、故郷はあるのだろうか。もし願いが叶うなら、もう一度、あの美しい水の街に帰りたい。生かされた意味を知りたい。深く暗い静寂は、切なる願望さえ飲み込んで消してしまいそうで、手のひらを胸の上で握りしめるのが私には精一杯だった。水かきの輪郭を指で何度なぞってみても、記憶は何も教えてはくれない。


 唐突のことだった。

 ある夕暮れ、ユンファが私に「世界を救済する気はないか」と尋ねてきたのだ。

 塔で目覚めてから数日、私と彼女は城にとどまって暮らしていた。日中は宮殿の書庫などで過ごし、眠るときだけ塔の寝室に戻る。朝起きる頃には、身体は潤って体力も回復しているのだから不思議だった。

 私は突然の提案に面食らってしまう。

「それって、どういう」

「この、全てが消えてしまった大地をおまえも見たはずだ。二年前までこの大陸はもっと美しかった。だから、世界をもとの姿に戻すために手を貸してほしい」

 ユンファの言い方はどこか白々しく、本当かなと思ってしまった。彼女がここで嘘をつく理由も思い当たらなかったから、気のせいだと思うことにする。

「ところで、たんすいの場所はわかるのか」

「湛水?」

 そう聞き返すと、ユンファは「ああ」と短く唸って言った。

「前に言ってたおまえの生まれ故郷のことを、人間界ではそう呼んでいる。山間やまあいにある集落だとは聞いているが、なにせ皇帝家が詳しく話したがらなかったから、私もあまりよく知らないんだ」

 今度は私が唸ってしまう番だった。記憶の中には確かにあるけれど、それがこの城とどういう位置関係にあって、私がどうやってここまで移動したのか全くわからないのだ。記憶が抜け落ちてしまっているのかもしれないし、もともと知らないだけかもしれない。どちらにせよ、答えは判然としなかった。

「わからない」

 正直に口にすると、「そうだろうな」と彼女は頷く。思いがけず故郷の話題が出たので、私は我に返ってせっついた。

「私の街が、世界をもとに戻すのに関係あるってこと?」

 彼女は、呼吸ふたつ分を置いて、答えた。

「ある」

 その表情は少しだけ笑っていた。私は彼女が笑った顔をその時初めて見た、気がする。

「いいか、これはリガイノイッチだ。おまえは故郷に帰りたいと願っている。そうだろう? で、私は世界を復活させたいんだ。そのためには湛水に行くことが必須。だから私たちはそこへ向かう。簡単な話さ」

 幼子を諭すような声色のわりに、難しい言葉を次から次へと連発する。掴みどころのよくわからない人だな、と思いつつ、私は気づけば頷いていた。

 準備はしておけよ、と釘を刺して少女は広間を後にする。窓の外では、山脈もそれに続く街道も、完全に黒く染まってその影を夜闇に沈めていた。


第二章 神代の随



 宮殿の裏側の抜け道から壁の外に出ると、荒涼とした世界が際限なく広がっていた。城壁を囲う堀は完全に干上がっていて、底には砂が積もっている。城の裏手には土堤の痕跡が長く伸びていた。ここからしばらくは平原が続いて、やがて川はその先の小さな交易街へと至るようだ。

記憶にある湛水の街は、切り立った崖のあいだの深い谷にあった。そのため人間社会からはほとんど完全に隔離されていて、外部の者が来ることも無いに等しかった。数年に一度降る豪雨が街全体を水で満たすとき、水守りたちはその中を泳いで暮らす。雨水は崖からあふれて、川を伝って下界に流れていく。その川の跡をさかのぼって上流へ行けば、やがて湛水にたどり着けるかもしれない――。私がそのことをユンファに伝えると、彼女は「わかった」とだけあっさり言って、すぐにでも先へ行こうとした。その表情は、少しだけ焦燥しているようにも見える。

 城を出るとき、大きめの皮袋をひとつ持たされた。その中身は主に干し肉や穀物などの保存食で、ユンファも同じものを携えている。彼女はまた、綺麗な細工の施されたガラス瓶を持っており、驚くべきことに中には水が入っていた。決して触らせようとはしてくれなかったものの、その瓶があればしばらくは大丈夫だとユンファは言う。

 城下町は賊国と呼ばれる地域に面していて、関係が悪くなりつつあった賊国を見張るために構えられた戦争のための設備だったそうだ。つまり、要塞というのは本当らしい。

 実は、本来の政治の中心地は別にあって、朝廷がここを拠点に活動していたのは直近の数年だった。そうユンファが教えてくれた。

「あの琅関帝は、馬鹿げた計画のためにこんな辺境地に住居を構えたのさ。この地に移ったときから気が違っていた、という者もいたが、いずれにせよ計画は大失敗。所詮はその程度の人間だった、ってことだと私は思う」

 ユンファはそんなことを言っては笑う。話の内容から察するに、彼女は皇帝のことをひどく嫌っている。何か並々ならぬ事情があるのだろう、と思ったが、深くは訊けなかった。


 てんりんと名のついた交易都市に到着したのは、すでに陽が高く昇った頃だった。昼前後は日差しが強く体力を奪われやすいから、朝や夕方の間に歩を進めて昼と深夜は休憩しよう、という話になった。

 街道を通り抜けて街へ一歩踏み入れると、舞い上がる砂埃が視界を遮る。砂が目に入らないように片手を上げながら、私はユンファの姿を見失わないよう後に続く。

 街は吹きさらしの風にかなり浸食されていて、人はおろか虫一匹の影さえなかった。道の縁石に腰かけ、私たちは同時に息をつく。

「疲れた顔してるな」

 微笑しながら、ユンファが鞄から瓶を取り出した。促されるままに両手を差し出すと、冷たい水が手の中に小さく溜まる。零さないように慎重な動作でそれを飲み干すと、一瞬にして旅の疲れが吹き飛んだ気がした。彼女もまた一口飲んで、まだいるか、と瓶を細かく揺らす。

「なくなってしまう」

 私は心配になって、手のひらでそれを押しのけた。目指すところの山脈はまだ遠く、水が無くなれば旅を続けられないばかりか、生きてすらいられないだろう。第一、瓶の中身はふたり分にしてはどう考えても少なすぎだ。

「まあ、見てるといい」

 機嫌がよさそうにそう言って、ユンファは道端に転がっているこぶし大の石を拾い上げる。何をするのかと見ていると、彼女は石を瓶の口に当て、そのまま片手で石を思い切り握った。

 私は絶句した。まるで果実を絞ったかのように、石は透明の液をぽたぽたと垂らしながらみるみるうちに小さくなっていく。気づけば彼女の手から石は綺麗に消えていた。

「石では、ほとんど増えないな」

 呟きとともに瓶の蓋が閉められるのを、私は茫然と眺めることしかできなかった。ユンファは私の表情を見て、しかたないというふうに解説を始める。

「神龍は水を創造し、水からあらゆる物質を創造する――そう、前に話したな。鉄や木や、地面の石ころに至るまで、世界のおよそ全てのものは水を元素として神が創ったものなんだ。そして」

 瓶に入った水を空にかざす。白昼の光を透かして輝く瓶は荘厳な龍の形をしていて、今にも動き出しそうだった。

「龍使いの血を引く私は、神龍が創った物質を水に還す能力をもつ。その力を使うには、この瓶が必要だ」

 初めて聞く話に、ふうん、と感心する。それなら、飲み水にはよっぽど困らないではないか。彼女が生きてこられたのだって、たぶんこの力のおかげだろう。思ったが口に出すのはやめた。なんとなく、それだけではない気がする。

「水守りと龍使いは、どう違うんだろう?」

 代わりに、私は率直な疑問を口にした。ユンファはしばし考えて、それからゆっくりと答える。

「水守りとは、人里離れて暮らし、神龍が創った水を人間界に届けるための存在。限りなく人に似ていながら、人とは一線を画す、あえかな民……寿命は約十年で、身体が弱い代わりに水中・陸上どちらでも暮らすことができる――と宮殿書庫の文献にはあった」

「確かに水でも息ができる、けど、ずっとは居られないよ。それに、最近では十一年くらいに命が延びてる」

 私は細かい部分を訂正した。ユンファは「どっちでもいいだろう」と軽くあしらって、話を続ける。

「我々龍使いは、神龍と対話することで神々に人間界の意思を伝える役目を担う。転じて、さっき話したように神の創造をもとに戻す行為を許された一族だ。少し前までは皇帝家がその役割を負っていた、しかし今は違う。代々選ばれた者だけが、一族に伝わるこの瓶を受け継ぐことになっている」

「それじゃ、ユンファはそれに選ばれたんだ」

「……私は盗んだだけだ」

 彼女はぶっきらぼうに吐き捨てた。繊細な曲線形から漏れる光が、先ほどより少しかげっている。

「龍使いと水守り、ふたつに共通しているのは、どちらも神々と人間界の中間を取り持つということだ。神と人の絆が切れたのは、果たしてどちらの仕業か――それとも」

 それきり黙って、ユンファは立ち上がった。ふうと息をついて振り返り、「食事にしよう」と呼びかける。腹が減っていたことを急に思い出し、歩き去っていく彼女の姿をあわてて追った。



 いくらか日差しが和らぐのを待って、私たちは再出発した。北東へまっすぐ伸びる土堤に沿って、ひたすら歩いていく。

 道すがら、私はユンファから聞いた話を思い返していた。

 世界の全ては、水から創られている――。

 にわかには信じられないほど、ユンファの話には驚きがあふれていた。建っている家も、干からびた倒木も、彼女の手にかかれば一瞬で水に還すことができる。私はそれ以来、水とはなんなのかと何度も考えるようになった。水とは、神の意思。万物のエネルギー。世界、そのもの。ユンファは様々な言葉を並べたが、どれも私にはピンとこなかった。

「人間の言葉は、難しいね」

 荒れ果てた夕暮れの田園地帯を並んで歩きながら、私はそう言ってみた。ユンファは微かに眉を上げてこちらを一瞥したあと、視線を前に戻して小さく答えた。

「ああ、難しいさ。どんなに伝えようとしたって、全部が伝わることは無い……。なんなら、半分も伝わらないことの方が多い」

 長い後ろ髪が、夕焼けの橙色に照り映えるのを私はなんとなく見つめていた。砂地を踏みしめる足音は、なかなかそろわない。

「私が考えていることは、どれくらいきみに伝えられているのかな」

「さあ。……知らない」

 さえずる鳥も、ざわめく木の葉も無い。死んだように渇いた大陸の真ん中を、私たちは無言で歩く。

 川は、農村の跡を抜けた地点でふたつに分岐していた。山脈の北と南、両方の小川が合流して大きなひとつの流れになっていたようだ。

 どうする、とユンファが問う。私はそびえ立つ山へじっと目を凝らした。故郷のありかは、こうして外から眺めてみたところで、全く見当がつかなかった。

 仮に間違えたとしても、また別の方へ向かえばいい。しかし、あの険しい山脈を何度も登るのはなかなかに骨が折れるだろう。早くたどり着けるに越したことは無い。

 私はあることを思いついた。雨が降らなくなって二年、と彼女は言っていた。ということならば、可能性がある。

「少し待ってて。……水の匂いが、まだ残っているかもしれない」

 私は崩れかけた土提を乗り越えて、川の分岐点に降りた。身をかがめ、土の表面に鼻先を近づけてみる。

 違和感が訪れたのは、その直後だった。

 匂いを確かめようとした瞬間、何かが頭をもたげる感覚がしたのだ。妙に気分が悪くなって、意識が宙に浮く。

「ジウ!」

 ユンファが呼びかける声を辛うじて認識する。が、何も見えていないことに気づいたときには、いつの間にか川底に突っ伏していた。必死に起き上がろうとする気持ちが、全く動かない身体から離れて遠くに行くような感覚。形容するならば、恐怖だった。

 無意識のうちに抑え込んでいた過去のことを、たった今思い出しかけたような気がして、それがとてつもなく恐ろしかった。目の前を塞ぐ闇に、しかし、抵抗するすべは無い。


  *


 人は、その街を湛水と呼ぶ。湛える水と書いて、湛水。

 数年に一度、神龍が豪雨をもたらすときには、その名の通り街全体がたっぷりと雨水で満ちるのだった。水守り一族の手にある水かきはその時のためにある。心臓が鼓動を打って全身に血液を送り出すように、この街は、大量の雨水を大陸中に行き渡らせる役割を担うのだ。

 神々と人間界のあいだに立って、神が創った水を人々のもとに届ける――。それがこの街に住む一族の役割だと、誰かが言っていた。しかし、私たちはそんな使命感を抱きながら暮らしてきたわけではない。ただ、外界から隔絶されたこの地で、何も知らずに生きていた。一つで生まれ、五つになれば一人前、十になれば死ぬ。それほど短命なのは、この世界について何も知ってはいけないからだ。

 私は、この街がただただ好きだった。とても美しい街。波に揺られながら、自由に泳ぎ回るのが好きだった。神龍の身体は大きくて、優しくて、全てを包み込んでくれるみたいに温かかった。神龍が去ったあと、次に来てくれるのはいつだろうか――とずっと心待ちにしていた。

 その日が来るまで知らなかったのだ。

 終わりは、一瞬にして訪れるものだと。


 一面、黒々とした炎が蠢く。煙に染め上げられた熱風を幾多の雄叫びがつんざく中、幼い水守りの子は一心不乱に駆けていた。

 美しかったあの街は影も形も無く、一緒に暮らしていた人々は血を流してそこら中に倒れている。息を切らして走る水守りの子の両目に、涙がにじんでいた。

「やめてよ!」

 覚えたての人間語で、ひたすら叫ぶ。息は激しく上がり、煙に侵された喉は悲鳴を上げるように痛んでいた。小さな身体でどんなに一生懸命に叫んでも、その声は誰にも届くことなく、争いの渦に揉み消されてしまう。

 土煙の舞い上がる中、限界を超えてもまだ走る。

 誰でもいい。誰か、この戦いを止められる人を探さなくては。このままでは街はきっと無くなってしまう。その前に、言葉で説得することができるなら――。

「あ……っ!」

 木の根っこにつまづいて、水守りの子の身体は跳び上がり、前のめりになって地面に叩きつけられた。思わぬ痛みに唇をぎゅっと噛み締める。我慢したはずの涙は、すでにとめどなくあふれていた。

 涙にゆがむ視界の先から金属の擦れ合う音が徐々に近づき、すぐそこで止まった。顔を上げると屈強そうな人間が数人立っていて、何やら話をしている。特に真ん中にいる背の高い大人は、まるで剣のような鋭い目つきをしていて怖かった。

「ねえ、」

 絞り出した声は力なく震えていた。鋭い剣が睨んでくる。

「嫌だ。やめてよ。すごく………痛くて、怖い、んだ」

 この時のために必死で覚えた、人間の言葉。まだうまく話せたことは無い。それでも話せば、きっと伝わる。きっとわかってもらえる。そう信じて、震える声を懸命に張った。

「街、無くなる。やめてよ。神さま、が、帰って……これなく、大変。もう、やめて」

 涙で視界がぼやけ、もはや何も見えなくなっていた。膝を擦りむいたのか、地面に触れたところがひりひりと痛んだ。祈るような気持ちで、血に染まった土を握りしめる。

「何か喋っているぞ」

「忍びないが、連れていけ。若君には内密にな」

 はっ、と複数の声がして、水守りの子の小さな身体は軽々と宙に浮いた。待って。やめて。全力で抵抗しようとする気持ちとは裏腹に、なんだか眠くなってくる。人間の肩越しに見えた街の惨劇から逃れるように、重いまぶたはとろりと落ちた。


  *


 ――あれ。

 今、夢を見ていた?

 固まった砂の上に顔を伏せたまま、私はぼんやりと考える。黒い炎と血みどろの光景は、未だまぶたの裏に居座っていた。

 頭をもたげていた気持ち悪さはいつしか失せ、代わりにひんやりした秋の夕凪が素肌の上を吹き抜けていく。私はユンファの姿を探して視線を彷徨さまよわせたが、辺りはすでに薄暗く、目を凝らしても見当たらない。

「あ、」

 声が上がる。少し先の方にユンファが立っていた。寒そうな下衣に覆われた腕に、小枝の束を抱えている。

「意識が戻ったのか」「うん」

 見ればわかるような内容をややぎこちなく会話して、私は立ち上がった。

 心配したんだ、と彼女はそれらしい表情も見せずに言った。「息はあるのに、呼びかけても返事が無いから」

「ごめんね。ちょっと眠っていただけ」

「……そうか」

 ユンファの反応は、微妙にそっけない感じがした。いや、たぶん気のせいだろう。その証拠に、うつ伏せになっていた私の背中には砂色の外套が丁寧にかけられていたし、彼女が提げている瓶の中身はいつの間にか空になっている。彼女なりに様々な手を尽くして、助けようとしてくれたのだ。私には、そのことがとても嬉しかった。

 私が言った「ありがとう」を遮って、ユンファは運んできた小枝について訊いてもいない説明を始めた。焚き火をしようとして枯れ枝を探しに林へ入ったこと。落ちている枝はほとんどが朽ちていて使い物にならなかったこと。

 ユンファの話に適当に相槌を打ちながら、私は思索にふける。あれは夢にしてはとても鮮明で、忘れていた過去をそのままに映し出していた。今まで、あれほど強烈な体験を、記憶から失くしてしまっていたのだ。自分でも何が起こったのか飲み込めてはいない。でも、あの夢から覚めて、あることがわかった。

 彼女の話題は急に倒れた私への愚痴に変わっていた。苦笑いして、話の切れ目に割り込む。

「ユンファ」

「何だ」と剣のような視線で彼女は睨む。

 あえて笑った表情のまま、腕を伸ばした。

「今から、少しだけ信じてくれるかな」

 私が指さした方角に、影絵のような青白い山脈が佇んでいた。


  *


「本当にこっちであっているのか?」と後ろから訝しげに少女が尋ねる。

 私たちはユンファが集めてくれた小枝で即席の松明を作り、山のふもとを目指して進んでいた。私の直感が正しければ、あと少しで湛水にたどり着けるはずだ。たぶんね、とわざと澄まして返す。

 道中、ユンファはずっと私の後ろを少し離れたままで歩いていた。理由を尋ねても彼女は曖昧に言葉を濁すばかりで、私は勝手に疎外感を抱いてしまう。

 手に持った明かりがパチパチと弾ける音だけが、夜風に紛れて飛び去っていく。荒れた畑の続く赤茶けた風景は、いつしか寂れた住宅街へとその姿を変えていた。旅の始めに立ち寄った典臨の市街に比べ、建物の造りはいくらか簡素に見える。おそらく狩猟民族の村だったのだろう、とユンファは言った。

 食べ物を探してくるよ、と言って、私は村の探索に出た。

 かつて人が暮らしていた場所には、日持ちする食糧や調理用の道具がたくさんあるのが大抵だ。全部、この旅で知ったこと。今までにこれほど物知りな水守りは自分くらいしかいないだろう――とちょっと誇らしくなる。

水守りにとって、何かを知ることは犯しがたい禁忌だ。私たちに求められたのは、生まれたての子どものように、無知であり、無垢であること。そうでなければ、神さまから賜った大切な水をけがしてしまうと信じられてきたからだ。

幼かった私を育ててくれた人は、それでも知ることを怖がる必要は無いんだとしきりに教えてくれた。そして、次第に私は新しい知識を手にするよろこびを覚えていった。躍起になって、小さな頭に人間語を詰め込んだあの日々も、きっと無駄ではなかったのだと思う。だって、現に私はこうしてユンファと言葉を通じ合えている。

 適当な民家に上がりこんで、まだ食べられそうなものを貪る。その様はさながら泥棒のようだ。というか、泥棒である。ユンファの目論み通りに世界が復活した暁には、こうしてめちゃくちゃになった街を一から建て直すことになるだろう。あるいは、もう人間が誕生することは無いのかもしれない。とりとめなく想像を膨らませながら、両手いっぱいの干し肉を持ってユンファのもとに戻る頃には、すでに細い月が天高く昇っていた。彼女は空になった瓶の水を補給するのに忙しかったらしく、やけに疲れた様子だった。

「また鹿肉か」

 少女は不服そうに零す。見ただけでは私には何の肉なのかさっぱりわからないが、ユンファはどうやら食べ物事情にも詳しいようだ。

 松明から移した火を焚いて、私たちは夕食にありつく。疲れは自然と人を沈黙させるもので、これといった話題も浮かばず、黙って硬い鹿肉と格闘するふたりの泥棒が焚き火にてらてらと浮かんでいる。躍動する炎の向こう側で、ユンファの表情が揺らめいていた。その様子をぼうっと眺めているとき、さっき思い出した私の過去を話してみよう、という気が起きたのは、気まぐれに違いなかった。

「あのさ、……夢を見たんだ」

 小声で切り出す。明かりを映すユンファの瞳がゆっくりとこちらを向く。

「ふるさとが、焼かれていく夢。硬い服の人間がたくさんいて、人がどんどん殺されていって、止めようとしたけど……何も、できなかった。それで、全部……思い出した。街はもう、無くなってしまったんだって」

 また、沈黙が下りた。幾分か勢いを失った焚き火の音だけが、周辺にこだまする。

「そうか」

 彼女は目線を落としたままで、呟く。それから肉を片手に持ち替え、残り少ない枯れ枝を火の中に投げ入れた。炎が再び大きく立ち上る。

「おまえの故郷を滅ぼしたのは、この世で最も罪深い男だ。私の父を殺し、この大陸に生きる人々が何百年の時をかけて築いてきた神龍との絆を、一瞬にしてドブに捨てた。人間の心が無い、大悪党だ」

 夜に沈むような声で彼女は語る。低く零れる言葉は、昼間の夢に見た光景を自然と思い出させた。あの殺戮の向こうにいたという、私の街を崩壊させた人物――それが。

「それが、あの宮殿に住んでいたという皇帝?」

「そうだ」言うと、ユンファは眉間にしわを寄せた。

 少女がおもむろに語り始めたその話に、仮に名前をつけるとしたら。

 全ての始まり、といってもいいかもしれない。

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