第8話 助手見習い 1

 その後、男達を警察に届け自分達は一度家に戻ることにした。

 警察は驚いた様子だったが、近くの都市部から応援を要請し、近くの刑務所へ送られるとのことだ。

 因みに交番へ届けるときに町中を堂々と連れ回したので奴等の仲間も気付いているだろう。

「さて、では今後どうしたら良いと思う?」

「……早速ですか。」

 この人は自分を使えるようにするために教育したいのだろう。

 取り敢えず茶の間に座っているクレアさんにお茶を出す。

 どこか楽しそうにも見える。

「どうしたら良いと言っても人身売買の部隊とやらがどこにいるのか全く分からないんです。打つ手無しじゃないですか?」

 どうにかして人身売買の部隊とやらの足跡を辿れれば良いのだが、そう簡単に情報は出て来ないだろう。

 するとクレアさんはお茶をすすった。

「うん、美味しいね。ありがとう。では、お礼にヒントを上げよう。」

「ヒント?」

 なるほど。

 自分に答えを自力で導き出させることで、成長させようと言うことか。

 悪魔でも答えは言わないのか。

「交番に突き出す時に私達はどうやって突きだした?」

「どうやっても何も普通に町中を歩いて交番のところまで……。」

 そして、そこで気付く。

「あっ!なるほど。町の中には奴等の仲間もいる。あんなことをして奴等が気付かない訳は無いから何も対処しないわけは無い。向こうが自分達に対して何かしらのアクションを行うように仕向けたというわけですね。そうすればそいつらから情報を聞き出す事が出来る。」

「うん、正解だ。」

 だが、まだ何か言いたそうな顔をしている。

 どうやら100点では無いようだ。

「でもね……。」

「いえ!待ってください!自分で考えます!」

 こういうのは自力でやりたい性分なのだ。

 100点を求められるのならそれに答えて見せたい。

 昔からそういう性格なのだ。

「うーん……。いや、それだと……。でも……。」

「答え、言うかい?」

 こちらが答えを出せないと思ったのか答えを言いたがっている。

 答えを言いたくてウズウズしているのが丸分かりだ。

「いえ、こういうのは自力で100点満点だじゃないと気が済まないので!」

「……別に100点なんかじゃなくても良いじゃないか。」

 テーブルに頬杖をつきながらどこか暇そうにするクレアさん。

「さっきの答えで及第点だ。だからそれ以上こだわる必要は無いんだよ?」

「いえ、自分は完璧でありたいと常に思っているので。」

 すると、やはりつまらなさそうにする。

「……人というのは成功や勝利よりも『失敗』から学ぶことが多い。」

「……え?」

 クレアさんは暇そうにしながら語る。

「これは異世界の漫画の名ゼリフとして上げられるものだ。私もこの作品は好きでね。特にこのセリフは大好きなんだ。」

 異世界の事を語るクレアさんはどこか楽しそうだ。

 クレアさんは席を立ち上がり窓の外を見る。

「私もね昔は何も出来ないし、弱かった。兄妹達から馬鹿にされ、見下されてきた。妹や兄は優秀ですぐに良いところに勤めたよ。それに比べて私は何をしても駄目で格闘技なんかもやってみたけど全然駄目だった。」

 後ろを向いているので顔は見えないがどこか悲しそうな雰囲気だった。

「兄妹はいわゆる天才でね、何をやっても上手く行っていた。私はそんな兄妹と比べられて家庭に居場所はなくなっていたんだ。でも、そんな私を先代の所長が助けてくれてね。彼も私と似た境遇だったらしい。」

 異世界の研究機関がいつからあるのかは知らないがあの部屋を見る限り相当な歴史があるのは分かる。

「彼もさっきのセリフを知っていてね。その言葉を教えてもらった時に別に完璧にこだわる必要は無いとわかったんだ。失敗すればするだけ駄目なパターンを覚えられる。つまりは失敗する確率をどんどん減らして行けるって訳さ。だから私はとことん色んな事に挑戦し、とことんまで失敗してきた。だから、別に100点じゃなくても90点でも、いや10点でも0点でも良いじゃないか。100点が正義じゃないんだよ。」

 考えてみると自分は普通の人間だったと思う。

 何でもかんでも普通の出来栄え。

 だから上を目指すようになったのだ。

 完成度を高めるために。

 だが、いつも詰めが甘いのか中途半端になってしまうのだ。

「分かりました。」

 腰を下ろす。

 自分が中途半端だったのは経験が足りていなかったからだ。

 彼女もかなりの経験を積んできているということだ。

 ここは経験者を見習うとしよう。

「答えを教えてください!」

「よし!そうこなくっちゃ!」

 ガッツポーズを決めるクレアさん。

 そのまま向かいに座った。

 急に真面目に語りだしたのはただ、自分に答えを言いたかったからなのだろうか。

 まあ、だとしても彼女の言ったことに間違いはなかったと思う。

 確かに100点ならば周りからは褒められるだろう。

 認められもするだろう。

 だが、それは細い一本道のような物だ。

 何をしたら失敗するのか分からなければほんの少しの油断から大きな失敗に繋がるかも知れない。

 それは、まるで細い一本道のようだ。

 だとしたら今のうちからたくさん失敗して、挫折して、経験と言う土台をしっかり作り上げてから成功していけば良い。

 そうすれば、細かった道はどんどん太くなっていく。

 若い内から成功したところで周りから変に期待されて苦しいだけだ。

 だったら変なプライドは捨てた方が良い。

 別に成功するのは歳を重ねてからでも遅くはない。

「警察が応援を呼んだだろう?あれも狙いの1つなのさ。」

「なるほど、奴等の息がかかっていない警察がいれば頼りになりますもんね!」

 彼女からは学ぶことが多い。

「あと、町中を連れ回したことで村人達も危機感を覚えるだろ?そうすれば奴等の影響が広がるのも押さえられるかもしれない。まあ、そこにつけこんで来るかもしれないが、それで相手が尻尾を見せてくれるかもしれないからね!どちらにせよこちらの思い通りなのさ。」

「おお!流石です!」

 あと、1つ気が付いた事がある。

「いやー流石はたくさん経験積まれてるだけはありますね!凄いです!」

「いやいや、それほどでも!」

 この人おだてるとチョロいかも。

 ……この人について行って色々と学ぶのも悪くないかも知れない。

 助手の件、考えてみるとしよう。

「ということで、明日は朝早くから町の人に聞き込みをするよ。」

「聞き込みですか?」

 急に真面目モードに入ったな。

 さっきまでのはふざけていただけなのか。

 まぁ、おだてられた時のあの笑顔は作り物とは思えないが。

「奴等は今夜中に何か動きを見せるはずだ。その事についてと、この家を襲った時の事についても色々と調べないといけないからね。」

「なるほど、分かりました。」

 取り敢えずこの人の助手をやっていくかどうかは両親を助け出してから考えていくとしよう。

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