第4話運命のゲシュタルト崩壊。

 君はゲシュタルト崩壊を知っているだろうか、沢山の捉え方があるそうだが、ゲシュタルト崩壊とは、チラッとそれを見た時は何か認識できるのに、それを見続けることによって、それが何かわからなくなってしまう事だ。

 僕はそれを体験したので今日はそれを書くことにしよう。


 運命の人(仮)と夜散歩初デートをした。居候先の最寄り駅まで来てくれるそうで、駅前で落ちあう事にした。駅のホームから登場した彼女は割とギャルであった。(運命の人(仮)と書くと読みにくいのでここからは彼女と書く)

 

 つまり僕の苦手なタイプである。苦手になったトラウマエピソードは、いつか書くとして、ギャルというのは人との距離を一気に詰めてくる生き物だ、ディスっている訳でも馬鹿にしている訳でもないが、陽科ギャル属の距離感詰め詰め種なのだ。

 だがしかし、彼女は違った、陽科ギャル属の緊張でドギマギ種だったのだ。可愛すぎじゃろ。これこそが、ギャップである。全日本男児が大好きなギャップである。元々ギャルにトラウマがあった分、そのカウンターは大きく例えるなら、畑に生えてる大根を抜いたらその穴からモグラが飛び出してくるほどの驚きだった、それが原因なのか就活のストレスなのか、風邪気味だったからか、はたまた、女の子に飢えているからか、彼女が見れば見るほど解らなくなっていく、顔が溶けていくのだ。可愛いのかどうなのか、どれが目なのか口なのか解らなくなる。これが僕の体験したゲシュタルと崩壊。

 本当に楽しい散歩だった。まるで魔法だった。ふらっと立ち寄った公園でブランコに乗ったり、彼女の昔の話を聞いたり、ラーメンを食べたり、僕がお酢は意外とラーメンに合うという話をすると、彼女もラーメンにお酢を入れて啜った。彼女の箸の持ち方が変わっていて可愛かった。そんなこんなで、三時間ほど駅周辺を散歩していたら、終電が来たので解散する事にした。

 彼女が駅のホームに溶けていく姿を必死に捉え続けた。

 この先彼女から連絡がなくても、今がとけてしまっても、彼女の中の僕がとけてしまっても、僕の中の彼女が流れとけてしまっても、その流れた先が思い出になるように。


 スマホを取り出してLINEを開く「また会ってくれるなら、連絡ください。」送信ボタンを押して帰路に着く。

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