戦争なのに緊張感無くていいのかしらね
「いやぁ、この勝負案外余裕かもな。ラオウさん、メラチャルさん、そしてよく分からないすごい装備を持っている奴。負ける要素はどこにも見当たらないぜ!」
「俺、帰ったらキリシマに告っていい?」
「キリシマとミリアちゃんとハルナさんは私の愛玩であります!! お前の物じゃないであります!!」
「勝手におれも含めるなよメスマセガキが!」
「響きが孕ませに聞こえるであります!! いつでも良いでありますよ!!」
「一応戦争中だぞ。さては無敵かこいつ」
「ともあれ、ようやくエルフ共に一泡吹かせられる。生きてりゃ、良いこともあるな」
「なんかあそこ、見えなかったか?」
「どうせ太陽光かなんかだろ」
口々に楽勝ムードを漂わせるダークエルフたちを、わたしとミリア、ハルナは死んだ目で眺めていた。
わざとやっているのかしらね?
わたしは混ざらないわよ。
流石に混ざらないわよ。
わたしはミリアに一目やる。
ミリアもわたしに目線を返してきた。
「ガーリックの武器ってスナイパーライフルなのよねぇ……」
「フラグとオチ見えたわ」
ミリアの呟きにハルナが反応する。
血飛沫が舞う。
わたしに告ろうとしていたダークエルフが背中を地面につけた。
足音の数が十、二十、三十まだ増える。
これは。
「はめられたわね」
ミリアが今の状況を簡潔に表した。
さっき戦った相手はわたしたちをおびき寄せるためだけの囮に過ぎなかった。
そして今、退路すら塞がれた。
ラオウさんとメラチャルさん、みんなもすぐさま戦闘態勢に入る。
三十以上のエルフに囲まれて、さらにスナイパーもいる状況。
ラオウさんたちの指示に従って動いているけど、みんなもどこから対処していけばいいのか分からないみたい。
陣形が崩れていく。
特に問題なのはスナイパー。
弾速が早すぎて塩もお湯も間に合わない。
さらにはその精密度。
ラオウさんがわたしへと指示を送る。
「キリシマ! 神装を使え!」
大森林が大紅蓮に包まれた。
それはダークエルフとミリアを守護するかの如く、炎の波がエルフたちを一切の容赦なく飲み込んでいく。
例え実力者であってもこの炎を受けて無事な者はそういない。
無事なのは範囲外にいるスナイパーくらいだろう。
いえ、範囲外にいるハルナも当然のように無事ね。
無事というか無傷?
終始観客に徹しているのよね。
それはそうと自分で発動しておいて、とんでもない火力になっているわと少し放心してしまう。
カグツチってここまでの出力があったのね。
流石は炎の神とでもいったところかしら?
なんて、その一瞬の隙が命取りになる。
「危ないッ」
ミリアはわたしの肩を掴んでしゃがませる。
そのすぐ数舜、何かがわたしの頭を通っていった。
髪の毛がはらりと落ちていく。
「助かった」
「ガーリックは健在なのよ」
よね。
族長を何とかしないとこの戦争は終わらない。
炎に当てられた大森林はとても寒々しかった。
酸素を燃焼させて燃えているわけでも、可燃物を無差別に燃やしているわけでもない。
大火事に見えるけど、これ以上燃え広がることは無いのである。
ラオウさんが足止めをしながら声を響かせる。
「キリシマ! メンマ! ここは俺たちに任せて先に行けっ!」
ラオウさん。
ミリアに肩を叩かれてわたしは走る。
わたし、メンマ、ミリア、ハルナの四人でガーリックの場所へと。
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