第3話


そして第二の情報。

天気予報にも降水確率にも加わらない小雨が降っている点。

山の上の方で雨が降っていても、風の具合によっては川下、山の中腹にまで雨が降る。

だからこそ、この地域には日中でも小雨が降り、夜のうちに湿度の含まれた空気が冷えて地面を濡らしている。

この情報を得ていなければ、テントの中で寝てて風邪をひく。

予報を覆すほどの気温低下が予想されるからだ。

天気予報は観測所で計測されているのであって、キャンプ場で詳しく計測されているわけではない。

百均で買える簡易の温度計持参、湿度もわかるなら尚良い。

電池式の時計一体型では湿度一発で故障、というか電池が液もれする。

キャンプ場によってはライブで温度と湿度の情報を公開していることがあるため、情報収集は大事だ。


夏でも朝方は一気に気温が下がることがある。

放射冷却現象も関係しているけど、山の気温は思ったより低くなる。

山頂や川上の冷気は、キャンプ場にまで下りてくる。

「夏だから大丈夫だろう」という甘ちゃんな考えは、翌朝、風邪症状や腹痛などという形で自分に返ってくる。

夏に寝袋は蒸し暑いからイヤだろう。

その気持ちはよく分かる。

しかし…………蒸し暑いということは、朝方に気温が下がるということだ。

自然を甘く見てはいけない、ということを我が身で思い知るがいい。

暑くて飛び出すというなら、簡易扇風機や充電式の冷風扇を持っていこう!

そして腹巻き持参。

暑くて寝袋から飛び出しても、お腹は守られる。

翌朝、トイレと友だちになったり、恋人のように離れられないってことも起きない。

寝袋は足下が開くタイプもある。

虫刺されに注意だ!



最後に第三の情報。

これは第二の情報の延長線上にあるのだけど……連日の湿度を含んだ空気は、キャンプに必須な焚き火に不向きだ。

今では焚き火をするのに焚き火台の使用が必須になっているキャンプ場が多い。

マナーの守れないが増えたせいだ。

通常、焚き火は芝のない地面に石を組んでおこなうか、地面を10センチほど掘っておこなう。

周囲にむき出しの地面がなければ、焚き火台を使うのがルール。

数千円で購入できる、コンパクトに折り畳める焚き火台が多いのだから、ひとつくらい買えばいいのに、と思うけどね。

バカ者たちが、わざと芝生に火をつけて黒焦げにして笑っていたこともある。

……彼らは芝生の張り替え代金も含んだ弁償金を支払ってたけどね。

20万円以上だったかな?

そのことは規約に書かれているのでご注意を。


通常は地面に不燃性の専用マットを敷いて、その上に焚き火台を乗せて使う。

私もそのタイプ。

これだと、ぜた薪が芝に黒焦げをつくらないのと、焚き火台が汚れないため、片付けるのは残った煤を捨てるくらい。

以前、民芸品で購入した小さな竹箒を、煤を落とすのに重宝している。


過去には「後片付けが面倒」などという理由から、数千円のバーベキューコンロがそのまま廃棄されたというニュースもあった。

下手したら、設営に失敗したのか、ポールが曲がったテントやタープ。

片付けるのが面倒になったのか、一部が泥で汚れたイスやテーブルなどのキャンプ用品をそのまま置いて帰る連中までいるくらいだ。

……1回だけ使って要らないならくれって言ってもいいか?


【閑話休題。】


湿度が高ければたきぎは使いにくい。

一般的に液体の着火剤が有名だけど、それを使った事故は起きる。

湿度が高いため、うまく燃えないからと言って追加で着火剤を撒いたり、最初から着火剤をボトル1本使った結果、思った以上の火力や火柱がたつことも。

その事故防止に、私はカセットコンロを持っていく。

テーブルでカセットコンロを使った料理、それを「キャンプに来てまで?」と馬鹿にする人もいる。

キャンパーの数だけ、その人にあったキャンプ時間というものが存在する。

本人がその過ごし方を望むなら、誰も口を挟む権限などない。




観光地を巡り、その土地の土産物を見物。

中には『本日のデザート』としてプリンなどを購入する。

これもまた、キャンプの醍醐味。


こうして、私が予約したキャンプ場に到着したのは12時を過ぎた頃。


「利用は3泊でしたね」

「はい、お願いします」


予約を確認後、キャンプ場によっては許可証代わりの札が渡される。

それを車の前方の見える位置に置いておくことで、「このキャンパーは使用許可を受けています」という証明になる。

たまに現れるのが、「バーベキューの日帰り客が無許可でキャンプ場を使用している」という迷惑な連中。

……残念ながら、この日もそうだった。

「先にきたもの勝ちだ」なんて勘違いしたファミリー層。

それも車3台で乗りつけているうえ、その隣で子どもたちが遊んでいた。

しかし、許可証を持っているこちらが有利。


「無料じゃないのか!」

「違いますね」


遠くからでも分かるマナー違反。

駐車する芝生とテントを張れる芝生の広さは違う。

その駐車が許された芝生とキャンプ用の芝生にまで車を乗せて3台も停めた上、隣のスペースに大型のテントを張っていた。

キャンプ場には専用のルールが決められている。


『テントは決められた場所に張ってください』

『車は1サイトに1台まで。2台目以降はバーベキュー場の駐車場を使用してください。また許可のない場所に車をとめないでください』

『テント用と駐車用の芝生の破損には、一面30万円を徴収します』


騒いでいた家族は顔面蒼白。

それもそうだろう。

自分たちがバーベキュー場だと思っていた場所は、実はキャンプ場だったのだから。

代表者として男性たちが管理棟まで連れて行かれたことで母親はソワソワしていたけど、子どもたちと一緒にバーベキューの続きを楽しんでいた。


「ここがキャンプ場なら、お金を払えばこのまま泊まってもいいわよね」


そんな声すら聞こえていたよ。

子どもたちが自転車など置いていて、芝がところどころめくれていたのは、砂遊びのようにスコップを使って掘られたからだろうか。

ペグを地面に挿して穴があいたとしても、それは破損には含まれない。

軽く踏めば元に戻るからだ。

それを『道具を使って掘り起こした』のと一緒にしてほしくはないね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る