クルマでソロキャンプ🏕

アーエル

第1話


ぶおんっとエンジンが鳴るとキャンプが始まる合図。

駐車場から公道へ。

その道はキャンプ場へと続いている。

ふとガソリンメーターを確認した。


「半分、かあ……」


キャンプ場までまっすぐ向かうつもりはない。

ほかの人が観光してホテルに泊まるように、あちこちを観光したり自然を満喫した先にキャンプがある。

ホテル同様、今ではキャンプ場もネットで予約が可能だ。

私はそんなキャンプ場を優先に選んでいる。

今日も予約済みな上、入場予定時刻も連絡済み。

とはいえ、許可証を受け取れば出入りに制限はない。

近場のスーパー銭湯にいくのも、道の駅へ地元食材を探しにいくのも自由だ。

その代わりに、譲れない決めごとがある。

私が借りるのはいつも、車を横づけにできるオートキャンプ場。

少し割高だけど、テント泊の予定だったのが急な雨天で気温が下がるなどよくあること。

初夏のキャンプ場ほど雨を甘くみたら痛い目にあう。

そして女性キャンパーは、トラブル回避と保身のために車中泊推奨だ。



「この時間なら、あそこのガスステーションのセルフを使うか」


今は早朝に含まれる4時台後半のため、選択できるガスステーションは24時間営業くらいだ。

『朝から営業』の看板が出ていても7時から。

観光地なら週末や休日に6時30分から開くこともあるけれど、開店前から長蛇の列になっていることもある。

それなら近場で入れた方が早いだろうと、大通りへ向かった。





お腹がふくれた愛車が楽しそうに曲を流して走る。

目的地まで高速や有料道路を走らず下道を好んで走るのは、今回の場所が隣の県だからだ。

そして、立ち寄り地を決めていないため、看板に書かれた文句につられて進路を決める。

これもまた、ひとり旅の醍醐味というもの。


『おいでませ』という大きな看板につられて駐車場に入る。

数年前から充実し始めた、道の駅。

キャンパーにとって、地元の特産物を購入して楽しめるようになったことは大きい。

それまではスーパーに寄っていたからね。


店内に入るときにカゴとカートは必須。

店によっては戻れないように通路が決められているからだ。

これは万引きの防止策だと聞いたけど、レジを打っている途中で「あっ、アレを入れておけばよかった」と後悔するハメに陥る。

地産の食材の中でも果物は格別だ。

キャンプに自然の甘味を持ち込めるのは極上の贅沢。

市場に出回らない特別な果物や食材を見つけたときほど、心躍る瞬間はない。

いまは多く出回っているドラゴンフルーツ。

地元で栽培を始めたばかり、と聞いて購入した1パックの美味しかったこと!

今では旬になると多く出回るようになったけど、あの味は忘れられない。


買ったものを持ったまま店を一周し直すのを禁止する店さえある。

それの対処法として、最初に常温の買い物をしつつ店を一周。

購入した荷物を車に置いてきてから、折り畳めるアルミタイプのクーラーボックスをカートの下に入れて再トライ。

開けるのは会計後のサッカー台で。

牛乳や肉をクーラーボックスに入れるけど、家からちゃんとキンキンに冷やした保冷剤を大量に詰め込んでくるのを忘れない。

……忘れたら、スーパーやコンビニで売っているブロック氷を購入して入れておくと便利。

解けた氷は飲料水にもなる。


お店で用意されている氷に制限があるのは、以前に氷を大量に持って行った若者がいたことが原因だったりする。

店が用意する氷は食用ではない場合がほとんど。

業務用水や飲用不可の井戸水を使っているため飲用・飲食に向かない。

飲用不可なのは保健所の検査を受けていないから。


「そいつを設置したビニール袋ではなくレジ袋、下手すりゃクーラーボックスに詰めて持ち出す奴がいるのさ」


氷を直接入れて、そこにビニール袋に移した魚や肉など突っ込んで帰る人はもちろんいる。

ただし、氷の詰め過ぎは総重量が重くなるのを知っているため、底に薄く詰める程度。

クーラーボックスに半分も詰めれば『目的外の使用』になるため、十分に窃盗案件で警察へとしょっ引かれる。


なぜそんな話を知っているか?

私のクーラーボックスは45リットルのハードタイプ。

この中に冷蔵保存の調味料や下拵えした食材も入れているため、大きな保冷剤を入れて車内に置いている。

保冷剤を多く入れていれば、長時間冷たさが持続する。

互いの冷たさが溶けにくくするからだ。

そして買い物のときに使うアルミのソフトタイプは18リットル。

保冷剤を入れるために大きめのものを使っている。

購入した肉のパックに持参したミニ保冷剤で上下に挟んでビニール袋に入れて、空気を抜いて口を巻いたらセロハンテープで留める。

これで夏場も肉が傷みにくくなる。

その上で、野菜や牛乳を冷やすために袋に入った持ち帰り可能な氷を1袋か2袋貰う。

保冷剤やクーラーボックスを使私は、何度か同じ店を使っていると信用してもらえる。

そして、疑ったお詫びに店の事情を話してくれるのだ。


新顔で複数人が来たとなれば 監視される白い目で見られるというもの。

たとえ買い物客であっても、招かれざる者は少数でも存在しているのだ。

彼らの半数はクーラーボックスに氷を詰めて車に運んでいく。


「対策として袋に入れた氷だけにしたら、それを全部持っていかれた」


そんな被害を受けた産直市場では、購入量からレジで袋に入った氷を渡すようになったところもある。

…………そこまでしないと被害は減らないのだ。

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