晴れときどき病み

死神王

プロローグ

 きっと、死は私たちの隣に居たいんだと思う。


 昔はすぐに死んでしまう時代だった。だから寂しくなかった。


 けれども、時が流れて、私たちが死ににくい時代になってしまった。


 死が私たちから離れてしまった。


 死は悲しんでる。


 だから、私たちは死に近づこうと、魔法を自分にかけて、死に「独りじゃないよ」って伝えなきゃいけない。


 だってそれが、孤独の辛さを知っている人間が、彼にできるたった一つの事だから。


 私が辛いんじゃない。開放されたいんじゃない。この世を生きる私たちの「生きがい」よりも、彼を助けられるという「死にがい」が勝っただけなんだ。


 ふと見上げた雑木林の隙間から差してきた月は零れた光が目に余るくらい、爛々と輝いていた。


 春が散って、夏が枯れて、秋が腐って、冬が溶ける。


 いずれ皮はしわくちゃに、肉はふてくされて、骨はかぼそくなる。


 何も残らない私に、私が私を私に刻む。


 それが私が彼にできる事だから。

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