第70話 話が違う
「ポッド・ゴッド」は「クーロン・ベイ」からの無茶振りにきちんと答えた。
同時に自らも更なる発展を遂げたのだが、それは非難されるに至らないだろう。「クーロン・ベイ」も十分に儲かっている。
その税収を適切に使えば「クーロン・ベイ」もまた発展の波に乗れるだろう。
だが現在、そういう劇的な変化は訪れていない。半分がその気になっても、半分がそれを妨害するなら、結局は同じ事。
内訌によって都市の力は無駄遣いされてしまうからだ。
ましてや片方が実力行使を厭わなければ――
「クーロン・ベイ」は内乱前夜とも言える剣呑な空気に包まれている。
~・~
「ポッド・ゴッド」参事会の幹部面々は、ウェストを除いて全員が沈痛な面持ちだ。「ダイモスⅡ」を始めとして、大いに協力して貰ったというのに、その成果が無に帰そうとしているのだからそれも仕方がない事だろう。
自分達の努力が無駄になったこと以上に、協力してくれた者達に顔向けできない、という思いがあるのだ。
しかし、それを打破するにはどうすればいいのか見当もつかない。
「あの……『クーロン・ベイ』ではどうしてこんなことが起こるんでしょう?」
今更聞いてもどうしようもない事とは知りながら、マリーは尋ねざるを得なかった。その質問を聞いた他の幹部達は、一斉にウェストに視線を集めてしまう。
「――言ってしまえば身分の違いだな。最初は戦いを受け持ってくれる者達へ尊敬の念が街に満ちる」
ウェストが重々しく説明を始めた。
「それが慣例化して、今でも武力を持つ者は『クーロン・ベイ』では強い力を持っている。――つまり、かつて最前線で戦った者達の関係者だ。先だっての北の帝国との戦いで実際戦った者もいるだろうが、果たしてそういった階級の者達がどれだけ戦ったのかどうか……」
それを聞いてアイザックがフンと鼻を鳴らした。
「やはりそうでしたか。では今は武力を持っている者達が剣を向ける相手は、むしろ自分の足下。自分達の立場を守るために。……ははぁ、それで農民を貧しいままでいさせようとしているのか。自分達の代わりに戦場に放り込むために」
農民に金を持たせれば、色々逃げる手段が増えてくる。仕事も選べるし他の都市に移住しても良い。だがそれは保守派にとって都合が悪いのだ。
その理由はわかったが、やはり打つ手を思いつけない。
実際、打つ手も何も「クーロン・ベイ」の出来事は「ポッド・ゴッド」にとって対岸の火事に近いものがあるのだ。しかし、この火事は容易に延焼するだろう。
その時――
コンコンと、会議室にノックが響いた。
ウェストが「来たか」と短く呟く。それを幹部達が訝しげな表情で聞き、次に開け放たれた扉を見た。
そこには「クーロン・ベイ」の渉外担当、コンゲの姿があった。
「不躾な事ぉでぇぇえ~、申し訳ぇないぃぃい」
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