第59話 爆発の連鎖
数日後、ミオは参事会に赴いた。当然、約束を取り付けてある。
「こんな仕事、本当はしたくない」という本音があるからであろうか。ミオは大胆にも議長ウェストとの面会を望んだ。
間にマリーを入れる事にまどろっこしさを感じたのだろう。
「ポッド・ゴッド」の参事会はそこまでしゃちほこばった団体では無かったし、何より「ダイモスⅡ」には借りがある。
そういった事情が重なることで、ウェストだけでは無く幹部が会議室に勢揃いしてしまったが、ミオにしてみればますます話が簡単になった、と思うだけである。
何しろ、まず切り出す話は参事会にとっても悪くない話だからだ。
「――新しい酒については確かにそれだけの潜在力はある。しかしそれだけに、貴店は随分損をするように思えるが……」
新酒に関してはすでに提出済みだ。というか先に幹部に屋台に足を運んで貰って、冷たい新酒を振る舞っている。
だからこそ副議長のアイザックは懸念を表明したのだ。
「えっと、ウチだけで独占すると色々トラブルが予想されますので。参事会からの要請で醸造法については広く知らしめる事になった、とした方が良い。……とウチの者が。その代わり参事会からは醸造にあたっての使用料を頂きます」
しっかり勉強して来たミオが、歌い上げるように言葉を並べる。
「……そして参事会は逆にギルドから使用料を徴収すると。名目はそちらに払う使用料の他に、想定される酔っ払いの対応のために、か。確かにこれなら波風は立たないねぇ~」
アールが感心したように、ミオの説明を先取りしてしまった。
それだけ自然な仕組みを提案したと言うことなのだろう。言うまでもなくマクミランが。
参事会としては仕事が増える事になるが、そこに文句を言っていては始まらないし、何より先に無茶振りしたのは参事会なのである。
そして新酒によって「クーロン・ベイ」の一派から要求された、穀物の新たな価値を生み出す、についても十分応えることが出来たと考えても良い。
だが、ここでミオが爆弾を落とす。
以前自分に落とされたように。
「……ウチは新酒を『クーロン・ベイ』でも販売すべきだと考えています。というか、そのための準備を進めてます」
「なんだと!? それなら話が逆になる! さらに儲けてどうする?」
激しやすいのだろう。アイザックがすぐさま吠えた。
それでも一瞬でそう理解した点は、確かにアイザックの鋭さを表していた。
だが、ミオは慌てること無く説明を続ける。
「私も最初はそう考えたんです。でもこの新酒で『クーロン・ベイ』に変化を起こしたいなら、これは必ずやらなくてはならいと思うようになりました。だって『ポッド・ゴッド』で頑張って売り続けてもすぐに限界がやってくるからです」
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