第36話 隙間産業の一形態
まずはマクミランによる収支の流れを確認。
そんな風に実際に数字にしてみると、確かに利益が膨大になっていることがはっきりとした。
原因はといえば人件費の少なさだろう。何しろ二人しかいない。その上、最近は「ポッド・ゴッド」を訪れる観光客も増えている。
以上の点を踏まえて――
「まず、ミオさんに育成をお願いしましょう。チキンを焼くための練習は絶対に必要ですから」
「それは確かにそうね」
当然ここで人件費が発生するわけだが、それぐらいではどうということはない利益率なのである。屋台計画を実行に移すためには必須とも言える段取りでもある。
「そこで、私からの提案なのですが若い、というか子供を育成してみませんか?」
だが続いてのマクミランの提案にミオは待ったをかけた。
当たり前に、その提案に不審さを覚えたのだ。
だからこそマクミランも丁寧に説明した。
彼が目をつけたのは東地区の子供達だ。この地区の父親達は数日、留守にすることが多い。その間、子供達は置いてけぼりだ。
この状態で子供達が無事であることは「ポッド・ゴッド」の民度の高さ、言ってしまえば田舎故の、のんびりした雰囲気が危機感を抱かせなかったのだろう。
だが「ポッド・ゴッド」は変わろうとしている。
いつまでも田舎町という意識のままでは問題があるとマクミランは主張した。
で、あるなら目の届く場所で仕事をさせておいた方が安全ということにもなる。そして、実利もある。ちゃんと給金を支払うからだ。
「ああ、それでゴーレムが必要になるんですね……」
そういった説明をされたパシャはマクミランの考えを理解した。
謂わば、子供を守るためにもゴーレムを同行させる必要があるわけだ。
それに子供と言っても、当たり前に幼児にまで仕事は振らない。
働きに出るまであとわずかという半端な年代の子供達をスカウトする。
そして仕事をして貰って、それから改めて屋台の仕事を本格的に始めるか、あるいは余裕が出来たところで他の職に就くかは、それぞれの判断に任せるわけだ。
しっかりした形での「お駄賃をあげる」という形式と考えればそれほど違和感は無いだろう。
そしてこれは「ラスシャンク・グループ」との競合を避ける意味もあった。
人材の取り合いをしていれば、共倒れになる可能性もある。
あるいはそれが最も強くミオに判断を促したのだろう。
それに、そこまで上手くいくかどうか――とりあえずやってみないことにはわからない部分が大きい。
何よりも子供を育成するという第一段階は、ミオの目がしっかりと行き届くのだ。
これなら、いつでも止めることが出来る。
そう判断したミオは首を縦に振った。
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