第7話 ダスティ達の理不尽
「ダイモスⅡ」は復活しつつある。
名物のポッドチキンの焼き物については万全とは言いがたいが、他のサイドメニューが充実し始めたのだ。
チーズや燻製肉など、用意するのに簡単な食材がメインだったが一手間を加え、綺麗に切り分けられているので、そこそこ見栄えがしたのである。
後は
その上、三白眼のおじさんが目に入らなくなったのである。
これは大きい。
こうなればミオの成長を見守るという雰囲気はさらに助長される。実際にミオの手際も良くなり、焼き加減も父親であるスタディに近付きつつあるとなれば、毎日の楽しみも増えるというもの。
営業再開した「ダイモスⅡ」は良い方向に向かっている。
それは誰の目にも明らかだった。
だが、それを喜べない者達もいる。
物事は何事も二面性だ。
だが、この問題はそれほど難しくはない。喜ぶことが出来ない者達とは「ダイモスⅡ」から秘伝のタレを持ち出した犯人――ダスティ達だ。
「どうして、あの店が開いてるんだよ!?」
言葉遣いも乱暴な、立派に育たなかった不良少年といった風情の人間種族。これがダスティだ。
「あ、兄貴~……どうするんだよ~」
と、気弱げに肩を落としているのは竜人族のケーンだ。ダスティを兄貴と慕い、デカい図体ながらすっかり子分らしさが身についている。
青い鱗肌がなんとも悲しげだ。
「それよりもよ! どうしてタレがダメになっているのよ!?」
ダスティと負けず劣らず、乱暴な口調で二人に圧をかけるのは鳥人族の女性、メイだ。鋭い目つきで二人を睨み付ける。赤い羽毛が似合いと言えば似合いである。
三人が責任を押しつけ合っているこの場所は、本来なら新しい店をオープンする予定の家屋だった。
街の中心部に位置し、ここで秘伝のタレを使った新しい店を開店できるなら繁盛間違いないところだったろう。
だが、持ち出した――言葉を飾らなければ盗み出したタレが異臭を放ち、使い物にならなくなっていたのだ。
有り体に言って腐っている。
「兄貴~、店長は特別なことしてなっかったよなぁ?」
「俺も覚えてねえよ!」
ザンバラにカットされた茶色の髪をかき上げながら、ダスティがケーンに怒鳴り返す。だが、それで事態が変わるわけではない。
「ねぇ、ミオがチキンを焼いてるみたいよ。あの子、ちゃんと焼けたっけ?」
「ああ、それは店長が『まだ早い』って……」
メイが唐突に疑問の声を上げた。評判になっているから、そういう事情も自然と耳に入ってくるのだろう。ケーンが律儀にそれに応じたが――
「それだ! そこもおかしいんだよ!」
ダスティの興奮した声が部屋中に響く。
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