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『音楽で誰かの居場所を作りたい』
ライブハウスの前には整理券を持った女の子達が
スタッフの指示に従いながら長蛇の列を作っている。
箱としては1500人規模だろうか。
時折、戸惑いながらスタッフに何かを尋ね、
列に参加する子を2階の窓際から見つめる。
洪太にとって福岡は思い出の地であり、
グループで初めての全国ツアー、さらにはその初日を迎える事に嬉しさと緊張が入り混じっていた。
「洪太、福岡は大切な場所なんやろ?」
後ろから声がかかる。
中性的で関西訛りの柔らかい声は、大事なグループのメンバーだ。
窓際で外を眺める洪太の横に腰を掛け、同じように外の女の子たちを見つめる。
「そうだね。今日はちょっと...」
緊張が喉元まで込み上がってきたおかげで、洪太はうまく返事が出来なかった。
初めての全国ツアー、その初日が福岡だと知ったときは、運命だと感じた。
誰かを特別視することはダメだと分かっているが、どうしても今日の姿をステージで見せておきたい人がいる。
同じものを好きになって、正しく苦しみ
正しく悩み、音楽を誰よりも2人で楽しんできた。
全ての始まりで
思い出の詰まったこの場所で
ステージに立ったら、1番に君を見つけたい。
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