創造主が異世界を統べる
白銀優真
プロローグ
ゲーム。それは現代人にとって、生きていく上で欠かせないものになっている。学生や社会人が現実を忘れて遊べる。
そんなゲームには企画者がいて、発売者がいる。自分達のアイデアを用いて、一からゲームを生み出していく。だから全てが自分の思い通りのゲームなど、存在しないはずだった。
だが、突如として現れた、ゲーム開発用AI【CG】。これにより、ゲームの常識が全て変わった。
CGは王手企業が開発したものではなく、それまで無名だったプログラミング技術を扱う小さな企業が開発した。
このCGを使うことによって、人々は誰でも簡単にゲームを創ることができるようになった。しかも、自分好みのゲームを。
まずゲームのジャンルやストーリー、システムなどを設定する。次に登場人物の設定を行う。これが異常なまでに自由度が高い。キャラクターの名前、性別はもちろん、口調や口癖、性格などを入力できる。更には見た目をキーワードを使って設定し、AIがその人物の立ち絵の候補をいくらか出してくれる。自分の気に入ったものになるまで何度でも繰り返すことができる。
そして最後にそのキャラクターの概要を設定できる。ゲーム本編に関わりないような裏設定まで事細かく詳細に記入することができる。
こうして、世界に一つしかない、自分だけのゲームを創ることができるのだ。
そして俺、
そしてようやく、よ・う・や・く五十万ためて、CGを買うことが出来た。遂に俺の理想のゲームを作ることができるんだ!
_____________________
弱者は淘汰され、蹂躙される。それこそが強者の特権。敗者は所詮、勝者の思うがままなのだ。
つまるところ、世界で最後に立てる強者は唯一無二、最強の勝者のみだ。それこそが世界を統べる存在。世界の支配者だ。
「ぐうぅぅぅ!」
「があぁぁぁ!」
夜で真っ暗で少し開けた山道に五人の男達が俺の目の前で血を吐いて、倒れている。皆苦しそうだ。こいつらは、盗賊で愚かにも俺に襲い掛かってきた馬鹿達だ。少しは骨があるかと思っていたが、ただの雑魚だった。一撃ノックアウト。これでよく盗賊をやってこられたな。
それを見ている俺は可憐な少女に膝枕されている。上を見れば彼女の整った美しい顔がよく見える。胸も大きすぎず、小さすぎず、俺の好みだ。俺は巨乳が特に好きじゃない。かといって、全く包容力がないのもあれだ。だからこそこの丁度いいバランスがいいんだ。
「はぁ~、眠っ」
俺は大きなあくびをする。正直このまま眠ってしまいたい。
「マー君、眠いの? 私の膝でゆ~っくり、眠っていいからね〜」
甘〜い口調で彼女は心から俺に言ってくれる。本当に意識を手放してしまいたい。
「駄目よ、こいつらの持ち物でめぼしいものを全部取ったらすぐ出るんだから。宿だってもうすぐそこにあるんだし」
「うん、寝ちゃだめ。私の膝で寝るべき」
「そうゆう話じゃないでしょ! 別に私だって膝枕したくないわけじゃ……」
赤い髪のツインテールの少女がそれを止め、長い金髪の少女が自分の膝に来るよう促す。
「そうは言っても眠いわけで……まだかかりそう?」
「いや、もういいだろう。神、めぼしいものは何も」
青い髪の青年が俺に言ってくる。うーん、何にも無しか。
割りと時間をかけた割に収穫は何も無かったか。まあ、冒険ってそうゆう無駄な時間も楽しいものだし、全然いいんだけど。ただまあそんな事わからない彼女らからしたらとんだ時間の無駄なわけだけど。
「そっか。無駄させて悪いな」
「いや、問題ない。神」
神、か。もう何年も言われているけど、そう言われるのはなんともむず痒いものだ。だが、彼にとっては俺は本当に神に見えているんだろうな。
「よし、それじゃあ行こうか」
俺は起き上がって、腕を伸ばす。眠いけどもうひと踏ん張りできそうだ。
「うぅ……ま、て」
あー、息あるんだった。
「……お前らごときに俺の歩みを止められる資格があると思っているのか? ならば、その驕りを俺に見せてみろ。できぬならそのまま朽ち果てろ」
決まった。完璧な中二病発言。支配者にふさわしい。風格のある発言だ。
俺の前世、広町幸希はCGで夢のゲームを作った。他人がプレイすることなんて考慮していない、俺の俺による俺のためのゲームを。
だが、ゲームをプレイする前に俺は死んでしまった。
そして俺は転生した。今の世界に。この世界では、人物や建物、歴史の全てが俺が作ったゲーム通りになっている。
そう、俺は俺の作った世界の中に生まれ変わったんだ。しかもだ。俺が主人公として設定した人物に。
話の展開通りに俺が進めれば、俺は王道ファンタジーの主人公として輝かしい生活を過ごすことができるはずだ。
けどさ、それってつまんなくね? ゲームでプレイするならいいけど、実際に生きてる世界で決められた日々過ごすだけなんて何にも面白くないだろ。
それに俺にはこの世界のあらゆる知識がある。登場人物の性格や強さも話の展開も、アイテムも何もかも。
そして俺がたどり着いた結論はただ一つ。この世界を統べる支配者になる。
時には懐柔し、時には蹂躙し、自由気ままに世界を統べる。
この世界に来て割りとすぐに前世の広町幸希っていう人間は捨てた。今の俺は……。
「冥土の土産に教えてやろう。俺の名を」
盗賊たちは動きを見せない。まあ、こんな雑魚に期待なんてしてないし、いいんだけど。せっかくだから俺の名前を聞いてから死んでほしいな。
「我が名はマギア・エンペラー! この世界を統べる、最強の支配者だ!」
盗賊たちは戦慄する。俺の名じゃなく、俺から発せられる覇気に。
さあ、旅を続けよう。俺の物語はまだまだ始まったばかりだ。
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