フロンティアポイントの開拓者たちってこんな感じ?

霜月かつろう

開拓者1

 フロンティアポイントの大人たちはいつだってピリピリしている。それはいくら小さくたって住んでいる人なら理解できる。

 朝日を感じながら日差しが気持ちいなと気分良く歩いていると。向こうから頭をツルンと光らせて長い顎髭を自慢するように撫でながら歩いている筋肉ダルマを見つけてあいさつする。

「おはようございますっ」

「おっ。おはよう。今日も元気だねぇ。ロゼッタは。これからお使いかい」

 ドワーフのデリー親方は片方しかない眼でウィンクしてくる。かなり機嫌がいいみたいなのはお酒でも飲んできた帰りだからだろう。もう朝だというのに困ったものだ。きっと帰ったら孫娘のハナちゃんに怒られるんだろう。

「お父さんがちょっと気分悪いみたいだから、薬を買いにね」

「おっ。大丈夫なのかいそりゃ」

「大丈夫。いつものことだから。ただの二日酔いよ」

 デリー親方はドワーフだから二日酔いというものが理解できないみたいだけど。お父さんは人間だからそういう日も多々ある。今日も起きてこないと思ったら。具合が悪そうに布団に寝っ転がっていた。

「そうかい。それならいいけどよ。最近は妙な魔物の目撃情報もある。気をつけるんだよ」

 いくらなんでもフロンティアポイントまではないってこないはずだ。開拓者がたくさんいるこの場所でそんな心配は無用。デリー親方は心配性だなぁと、ため息を付きながら背中で見送る。

 開拓者。

 このフロンティアポイントから西は人がほとんど住んでいない。正確には住めないのだ。

 どこまで大陸が続いているかもわからない。それでも開拓をし、把握していくこと。それが開拓者の努めだ。

 父さんもそのうちのひとり。クラスはファイター。詳しくは知らないけれどデリー親方が造った剣を振るっているらしい。

 らしいと言うのは、危ないから言う理由で開拓に連れて行ってくれず。戦っている姿を見たことがないからだ。いつかは一緒に開拓の手伝いをする。それが私の夢だったりもする。

「二日酔いに効く薬をくださいな」

 フロンティアポイントで一番賑やかな場所。

 それが市場だ。

 城塞都市ルンデンから運ばれてくる物資はフロンティアポイントにとっては生活に必要な物資が集まる大切な場所。

 だから市場に着くなり目を回しながらそれっぽい屋台を探す。

 しばらくそうしていると薬草が並んでいる屋台を見つけてそこの店主に下さいなと声を掛けたところだ。

「おっ。お嬢ちゃんはいい子だね。お父さんが具合悪いのかい。ほらこれを持っていきな。今日はサービスしてあげるよ」

 そんなことを言われても困ってしまう。しっかりとお金を用意したのだ。

「おっ。ロゼッタじゃないか。おい。あんちゃん。その子はしっかりものだし、真面目だからよ。ちゃんと大人扱いしてやってくれないか。きちんと用意しているはずだぜ」

 見知った顔からそう助け舟が出て、ホッとする。ここで駄々をこねるのは子どもっぽいかと悩んでしまったのだ。

「ロゼッタよ。バンガのやつは無事だったか。魔物に襲われて軽く怪我をしたみたいだけど大丈夫って聞かないもんだからよ」

 無事に二日酔いに効くと言われた薬草を手に入れた所でそんなことを言われて、えっとなってしまった。

 昨日は帰ってきても上機嫌でお酒を飲み続けていた。確かに珍しくはあったけれど。よっぽどいい成果でもあったのだと特に気にしていなかったのだ。

 もしかしたら、傷が良くなくてそれを紛らわすためにお酒を飲んでいたんじゃ。そそしたら今日、具合が悪そうにしていて起きてこないのも。

「私帰りますっ」

 そう必要以上に大声を出すと、踵を返して家へと急いだ。

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