第13話 サジェスト ②
出題権は後がないアリスへ。
ユウマの出題してくる問題はどれも
難しい問題ばかり。
さらにこちらが出題する計算問題も
時間はかかれど必ず正解を導き出している。
『彼、ひょうひょうとしているけど
自頭はいいわね、でもね少し頭がいいくらいじゃ
私には勝てない』
意を決した。
「歴史の問題よ。
この国の先代国王、ファフニールは20年前、隣国【キリトネ】に行き、
(○○○○○○○○○○)した。
その後、互いの国の友好関係は強くなり、
現在に至るまで数少ない貿易関係国になりました。
この空欄にあてはまる空白の歴史を埋め、真実を答えよ」
答えは、
【キリトネ国王と会談、キリトネ国土に流れる大河を利用し、
水産貿易交渉に成功】
である。
当然、歴史上真実の答えであり、
嘘偽りはない。
答えの証明は城の書物に書き記されているので問題はない。
『さぁ、どう答えるの?勇者様』
ここに来て日のない彼が知りえない問題と解答、
当然国民は皆知っている常識問題。
勝ち方としては多少汚いかもしれない。
生まれて間もない赤子に、道を尋ねるようなものだからだ。
その為気が進まず、出すのを渋っていたが、
❝この世界は勝者こそが正義。
正義は勝つのではない、勝つから正義なのだ❞
この世界の
「私と勝負をした時点で、勝敗は決まってたのよ。
貴方の世界の歴史は、ここでは証明出来ないけど、
私はこの世界の歴史問題を、いくつでも出題できる。
そっちが出せる問題は、数字問題、なぞなぞに限定される。
使える知識の幅がまるで違うのよ。」
目を強くつぶり、小さく
アリスは緊張を解いた。
肩に入っていた力が空気のように抜けていくのを自身でも感じながら。
彼が初めて苦悩する姿。演技ではない。
こちらの嫌味すら、まともに聞けないくらい深刻な表情。
❝もしかしたら❞と思っていたが流石に分かるわけがない。
ひとまずの敗北を避けられたと安心し、
そして勝利を確信した。
『私が歴史問題を出し続ければ相手は一切答えられない』
勝てずとも負けなければいい。
卑屈な考えかもしれないが、命さえ賭けることがある勝負の世界では
❝負けないということ❞は絶対的な強さであり安心だ。
「相手の言うことを一つ聞くって条件だったわよね」
「ん?・・・あぁそんなこと言ったっけか」
ユウマは腕組をしたまま、
身をよじりながら話半分に聞き流す。
「とぼけたって無駄よ。この世界の賭けは絶対。
更には勝者は相手の❝いうことを聞く❞と貴方は言った。
それはね、一生這って歩けと言われたら二度と立ち上がることは出来ない。
死ねと言われたら、死ぬ。
二度とワケの分からない賭けが出来ないように、
自分が賭けた言葉の重み・・・教えてあげるわ」
「ちょっと待って今答え出そう」
トイレを我慢するようにユウマはお腹を抑えた。
「分かったでしょ。この世界は
«ゲームしましょうねぇ»なんて
無知な者を騙し、騙し合う世界なんだって。」
「・・・」
「でも、流石にハンデが過ぎる問題だし、私も勇者相手に大人気ないから
ヒントくらいならあげるわヒントは―――」
「答えは。【ま】だ!!!」
ぎっちりと
突然大きく開いた。
一時の静寂
「なによ、【ま】、ってそれ答えなわけ?
答えはおろか、史実でも文章でもないんですけど」
期待外れの答えだ。
そもそも答えられるなんて思っていなかったが、
征服したとか、会議に出席しただとか、
そんなありきたりの答えにすがって来ると思っていた。
予想にも及ばない幼稚な回答に、妙ながっかり感がアリスの肩にのしかかった。
「いや、この世界の歴史問題で起きた真実を答えたらいいんだろう?
じゃあ【ま】だ!文章ではないが答えにはなる」
組んでいた両手を腰に当て、
清々しい顔でユウマは勝ち誇った。
「あっそ、はい不正解。だって
この国の先代国王ファフニールは9年前隣国キリトネに行き、【ま】したってそんなふざ・・・け・・・」
問題と解答を照らし合わせ気付く。
「ほら!答えは❝行きました❞だ。真実だろ?」
「ちょ!そんなふざけた答え―――」
「真実を答えろってしか問題に出てないだろ。
よし俺の勝ちだな。願い事は何にしようかなぁ」
頭の後ろで手を組む勇者。
気が付けば
辺りは先程と同じ夜の闇が広がっていた。
それはゲームの勝敗が決定し、終了したことに他ならない。
意味するのはアリスの敗北。
「そんなイカサマで。またで勝つなんて・・・」
「騙し合うゲームの世界なんだろ?そういうのもいいけどさ、
ゲームってもっと楽しく思った方がいいぞ。
・・・だって❝ゲーム❞。なんだから。」
ユウマは夜の街へと歩き出した。
「ちょ・・・ちょっと待ちなさいよッ!」
城内とは変わって今度がアリスがユウマを追う形になった。
こうして、この世界の最初の夜が始まった。
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