第4話
「な、なんで体がないのに動く・・・」
通らない道理に立ち尽くすしかなかった。
「ハートレリアの近衛兵、
クラウンによって生成された命だもの体なんてないわよ。」
振り返ればつまらげに長い睫を伏せ、ため息をつく彼女。
「これで理解できた??貴方の前の世界は知らないけど、
ここはワートンダイスランダー。
それ以上でもそれ以下でもないの。」
彼女の落ち着きはかえって少しでも冷静になろうとしていた意志を簡単に溶かす。
「いやー!待て待て!!アンタ達が言っていることがまるでわからない!俺はどうなっちまったんだ」
先ほどまでの不満と怒りの色は一瞬で褪せり、焦りと驚嘆の大きさが、独りでに手先をわなわなと動くことを許してしまう。
「それより!さっきからアンタアンタってなんなの?
私の名前はアリス!アリス・クローバー・ノーエッジよ。
で?アンタはえっと・・・」
彼女―――アリス・クローバー・ノーエッジは、
起伏の激しくなってしまっている自分を前に腕組をした。
記憶に彼の名前が入ってきていたかと首をかしげ時、
タイミングよく声がかかる。
「この者はユーマですぅ!!」
また一人牢内に声がした。それも今度は石畳の方から。
ぎょっとした目ですぐさま声の主を捉える。
その声の主は頭に土をかぶり石畳を掘りぬけてきた穴から身を捩りながら抜け出した。
突如地下から這い出てきたのは女の子、
年は自分とも変わらないくらい、
髪は限りなく白に近い銀髪を肩にかからないくらいのところで整えられ、
160程の背丈、淡いコバルトブルーの大きな瞳、
服装といえば、服といえるのだろうか、
ストラップレスのふわふわの布が胸部を巻かれ地面から這い出るときに苦戦したであろう大きな胸は、
上から見ても下から見ても際どいラインでその布いっぱいに詰め込まれているこまれている。
腹部は完全に晒され、わがままな胸回りとは裏腹に素直すぎるまでにくびれ引き締まっていた。
下はショートパンツに似た召し物を着てはいるがこれもまた白く毛羽立っている。
大きな胸部に目を離すのは名残惜しいが、
何より頭部から伸びる細く長い耳が、彼女の白い指ぬきグローブのような手で土埃を払う動きに合わせ揺れ動き存在を主張させていた。
はぁ、と、ため息をつきながらすらりと伸びた長い脚と、
冬用のスリッパでも履いているような精白に膨らんだ足の甲の毛並に被った土も払って見せた。
「リーファ、貴女遅いじゃない!」
離れている兵士に気づかれないように、その声は小さくも不満の色をちらつかせる。
長い白耳と、わがままボディが印象的な彼女―――リーファはその配慮に気づき声量を合わせる。
「申し訳ありません!何分地下の土が硬くて、それとやっぱり無理ですぅ!テーブルには近づけませんよぉ。」
急な彼女の出現に唖然とするユウマを余所に甘ったるい声で、
いやいやと子供のように体を揺するが、
態度とは反比例するように胸は立派な観測を見せてくれた。
「やっぱりだめね、こうなったらクラウン一つ失う覚悟はしないと乗り切れないかも。」
「えぇ!!だめですよぉ!それを失ってはこれから先リーフリリアの存続ぁ。」
アリスの冷静な言動一つ一つにリーファは、
オーバーなリアクションと甘く垂れた声色で応える。
「大体リーファ!貴女が使えないの寄越すからでしょ!。」
「それはそうかもですけどぉ・・・他に誰もいなかったしせめてあの子の変わり身になればと思ってぇ・・・」
「こんなのなるわけ―――」
「ちょっと待ってくれ!!」
会話を割って入ってしまった。
状況が読めていない自分が口挟むのはどうかと思っていたが、
どこか大事な何かが身勝手に傷付けられている。
そんな思いに私情を挟まずにはいられなかった。
「事情が分からない。まずは俺に説明してくれないか?」
「そういえば説明もしてなかったはね、この世界も、この世界のゲームの話も。」
最初に見惚れた姿より大分、アリスという子の印象が変わってきているように感じる。
いや、変わっていたのは自分の勝手な偏見だろう。
しかし見た目の判断とは恐ろしい麻酔だ、
誰にでも優しい美少女が実は裏であれこれ人の悪口を言うような悲しい事実も存在するように、
見た目だけでは判断できないことが数多あるのは
いつどこの時代も同じなのだ、仕方ない、さらば遠い日の思い出。
「―――ということよ。・・・ちょっと聞いてるの?・・・つまり貴方と私は処刑されるのよ。」
え?。今なんだって?処刑?処刑ってあの命を刈り取られる的なほうの処刑?
「え?しょ!処刑?なんでそうなる!たまたま居合わせただけだろ!釈明の余地だってあるはずだ!」
声が少し裏返ったが恥ずかしがってなどいられない。
「はぁ・・・私から話すことは以上よ、あとは後ろの御三方にでも聞いたらどうかしら。」
アリスの横に伏せた目線の先には、先ほど捕えらここへ放り込んだ甲冑の兵士が三人、武器と鎖、それから枷を手に待っていた。
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