277 護衛の追加
皇帝との面会は短時間であったが、執務室から出て来たフィリップはフラフラ。そのおかげでボエルは怒られたのだと思って、フィリップの説明が遅れたことは許してくれた。
城から出たところで、フレドリクの親友、カイ、ヨーセフ、モンスに囲まれた不審者パーティを発見。
なのでフィリップは脅しの追い足し。皇帝たちに「めちゃくちゃ足して報告しておいた」と指差してゲラゲラ笑いながら去って行くので、不審者パーティは恐怖に震えることに。
「助けようとしてたクセに……」
優しいのか悪者なのか、ただの意地悪な子供なのか、いつまで経ってもフィリップの性格が掴めないボエルであった。
フィリップが寮に帰った夜には、皇帝から2人の護衛騎士が送られて、交代で24時間警護に当たるとのこと。移動と自室や教室の前で待機するらしいが、ダンジョン実習にもついて来るみたいだ。
「そんなのいらないのにね~?」
「いや、いるだろ? 死にかけたばかりじゃねぇか」
「そんなことあったっけ??」
「マジで忘れてるのか? そういえば全然ビビってねぇな……アホなのか??」
「ちょっとボケただけでしょ~」
ボエルが「こいつならありえる」って返しをするので、フィリップもいまさら怖がる演技。でも、まったく通じてなかった。胸に顔をグリグリ押し付けるてるだけだもん。
翌日はどうしたものか悩んだ結果、フィリップは登校。護衛騎士を連れて歩くとどうなるかの反応を見るためだ。
ボエルを含めると男3人に守られて歩いていたら、フィリップを心配するってテイの女子は寄って来ていたが、護衛トライアングルに邪魔されてあまり近付けず。
フィリップは女子の胸を揉もうと手を伸ばしてみたけど、ボエルにドコンと叩き落とされて届かずだ。
この日のフィリップはずっとエロイ言葉をブツブツ呟いて護衛騎士の様子見。その護衛騎士は「いつもこんなもん?」とボエルに尋ね「だいたいこんなもん」と返って来たので初日で呆れ果てたんだとか。
フィリップは試しただけなのに、ボエルがフォローしてくれないどころかそう見えていたのかと、ちょっと落ち込んでいた。
その翌日は、ダンジョン実習に参加。前回途中だったリネーアパーティの試験だ。当然護衛騎士もついて来ているので、フィリップの出番はなし。
ただ、フィリップは戦う素振りも見せずにリネーアパーティばかりに戦わせているので、「こいつ何してんだ?」と護衛騎士に不思議がられていた。
そのまま進んでいたら、リネーアパーティは地下4階の後半辺りでレフェリーストップ。ボエルと護衛騎士にモンスターを倒させて、地上に帰還するのであった。
「ちょっと引き際が悪かったね~。疲れが溜まってたんだから、すぐ引き返さなきゃ」
いちおう試験なので、フィリップが悪い点を指摘したり改善点をあげると、リネーアパーティは真面目に聞いている。
「ま、それ以外はまずまずだ。地下3階でレベル上げして、全員のレベルが10を超えたら地下4階のクリアを目指そう」
「「「はいっ!」」」
これにて、フィリップの試験は終了。リネーアパーティはいい返事をして帰ろうとしたけど、全員、途中から首を傾げた。それは護衛騎士たちも一緒だ。
「なんで殿下が偉そうに言ってんだ?」
「俺たちに守られて1回も戦わなかったクセに……」
「本当だな……オレも真面目に聞いちゃった……」
「「
だって、馬鹿皇子の言葉だもん。いいことを言ってはいたのだが、なんだか素直に受け取れないし、ボエルは同情されるのであったとさ。
急に仮病になると怪しまれそうだから1日置いて、フィリップは急な発熱。おかげさまでやって来る護衛騎士は部屋の前で待機するだけなので楽そうだ。
ボエルもフィリップが寝てる時間は彼女と逢瀬を重ねて楽しそう。フィリップも毎晩夜の街に繰り出して遊びすぎ。奴隷館のキャロリーナにも心配されている。
「そんなに1人で出歩いて大丈夫なのぉ?」
「なんのこと?」
「暗殺されそうになったんでしょぉ? 危ないから自粛したらぁ?」
「ついにここまで届いたんだ……」
いまは第二皇子暗殺未遂事件から1週間。箝口令が敷かれていたが、キャロリーナは4日前に聞いてフィリップが来るのを待っていたらしいから、噂が流れるのは早すぎるな。
「あたしは貴族にツテがあるからよぉ。フレドリク殿下の時はもっと早かったから、よく持ったほうじゃなぁい?」
「確かに……いや、僕のネタは面白くないとか思われていたとか??」
「ありえるわねぇ……話のネタに困った感じだったしぃ……」
「大スキャンダルでしょ~~~」
フィリップ、貴族に人気なし。詐欺でお金を奪ったことがあるので、殺されても当然とか思われてるっぽい。
ちなみに不審者パーティはフレドリクみずから尋問して、恩赦をチラつかせたら簡単に黒幕の貴族を教えてくれたとのこと。なので実行犯の男2人は1年の禁固刑程度。泣きながらお礼を言っていたらしい。
黒幕は2年の軟禁プラス爵位の剥奪。ただ、当主だけなので、若い息子が跡を継ぐからお家は残る。これはフィリップの策を皇帝がマネしたみたい。当然、息子は皇家に並々ならぬ忠誠を誓っていたんだとか。
実はこれが、フィリップが学生の罪を帳消しにした本当の狙い。学生を無罪放免にしたことで、フレドリクも皇帝もそれが基準となって、甘い量刑にしてしまったのだ。
ただ、黒幕の地位が伯爵だったのがフィリップとしては腑に落ちない。皇帝とフレドリクが、誰かを守るために手打ちにしたんじゃないかと怪しんでいるけど、聞くに聞けないみたいだ。
「それでぇ~……しばらくはこっち来ないほうがいいんじゃなぁ~い?」
「それはいまさらだよ。どっちかというと、城や学校のほうが危険かも? 誰も僕が抜け出しているの気付いてないから、こっちのほうが安全でしょ」
「そうなのぉ? せめて誰かに行き先告げて出て来なさいよぉ。死んだらどうするのよぉ」
「行き先告げたらどうなるんだろ?」
「……やっぱりなしで! 墓まで持って行って!!」
フィリップが行く場所なんて、皇族の子供が行くような場所ではない。それがバレたら何人首が飛ぶのやら。一番最初に罰せられるのは自分の可能性が高いと気付いたショタコンは、早口でお願いするのであった。
「たまにキャロちゃんって早口になるけど、どっちが本当のキャロちゃんなの?」
「それは女の秘密よぉ」
「それいいね~。ミステリアスな女って、そそるよね~」
「う、うん……もう少し聞いてくれてもいいのよぉ?」
フィリップが受け入れるのが早すぎるから、本当の自分を知ってほしくなるキャロリーナであったとさ。
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