230 サプライズ
夏休みでお城に帰って来たフィリップは、からかいすぎてボエルがグロッキー状態。ちょっと言い過ぎたと反省し、献身的にマッサージして機嫌を直してもらった。
次の日のフィリップはどうしたものかと考えて自室でボーッとしていたら、昼食
「なに~? まだ怒ってるの~??」
「いや、すまん。そっちじゃない……」
「そっちってなに??」
「貴族の馬鹿女どもだ! クッソ……思い出しただけで腹立つ!!」
「なになに~? なんかやられたの~??」
ボエルがこんなにキレているのに、フィリップはニヤニヤ。しかし愚痴を言う相手はフィリップしかいないので、ボエルは当たり散らすように今日の出来事を語る。
朝の内はいつもより酷い嫌味を言われまくったボエルは、腹は立つけどいつものことなので聞き流していたら、小石や洗濯物が飛んで来たらしい。
誰がやったのかと問い詰めても、メイドたちは全員でとぼけて答えは得られない。隙を見せたら死角から何かを投げ付けられ、それがずっと続いたからこんなに怒っているそうだ。
「わ~お。嫌味だけで終わらなかったんだ」
「ガキみたいなことしやがって……」
「ま、貴族子女だもんね。学校でもそんなのばっかりだったでしょ?」
「ああ。ぜんぜん成長しやがらねぇ。身分が上じゃなかったら、絶対ぶん殴ってるぞ。1人になった時を狙ってやろうか……」
「アハハ。そうとう来てるね~……仕方ない。僕が復讐手伝ってあげるよ」
「いいのか? いや、殿下に任せると、なんか嫌な予感がする」
ボエルの予感は大正解。フィリップは悪い顔で笑ってるもん。
「大丈夫だって~。ちょっと昔の案を採用するだけだよ~」
「その顔やめろ! 絶対ろくなことしねぇだろ~~~!!」
ボエルが拒否しても、フィリップは第二皇子。身分が違いすぎるので、ボエルの意見は一切通らないのであった……
この日はボエルに帝都学院の寮に忘れ物を取りに行かせるだけで、できるだけフィリップの部屋に隔離。フィリップも準備があるので1人で動き、翌日、行動に移す。
「誰? あの執事……」
「カッコイイ……」
「あんな人いた??」
フィリップの作戦は、ボエルの執事デビュー。お城では皇帝やメイド長の目があるからボエルも持ち帰っていなかったから「それが悪いんだよ~」とフィリップは悪い顔でやらせたのだ。
その結果は、見ての通り。メイドたちは鳩が豆鉄砲食らったような顔をする者や、頬を赤くする者が続出だ。
そのメイドが固まっている場所に、ボエルはわざと突撃。そこで口を開く。
「フィリップ殿下のお洋服や寝具を取りに来たのだが、そこを開けてくれないか?」
「あ、はい……」
「ちょっと待って。その声……」
数人は道を開けてくれたが、その中の1人がボエルの声に反応した。
「あんたボエルね! まさか本当に執事の服着て来るなんて……キャハハハハ」
「うわっ! 本当ね!? キャハハハハ」
「なに無様な格好してるのよ! キャハハハハ」
1人が笑ってからは、集中砲火。全員で服だけでなく「男女」と
ボエルはというと、黙って嫌味が終わるのを待っているわけもなく、フィリップの作戦通り一番位の高いヴィンクヴィスト侯爵家の女性、アルフヒルドをロックオンして一気に近付いた。
「な、なに? 私に手を上げたら、あんたの家なんて吹き飛ぶわよ!」
「……」
「なんとか言いなさい!! ……え?」
怒鳴られてもボエルはお構いなし。アルフヒルドのアゴを掴んでクイッと上げた。
「離しなさ……ンッ……」
そして、口で口を塞ぐ。いわゆるキッスだ。フィリップにやれと言われた時は抵抗していたけど、実際やってしまうと「こんな美人に……役得」とかボエルは思っている。
「ンンッ! いい加減にしなさい!!」
数秒、全員の時は止まっていたけど、アルフヒルドは我に返ってボエルを突き飛ばした。
「なんてことするの!?」
「お嬢様があまりにも綺麗で我慢できませんでした。申し訳ありませんでした」
ここでボエルは、大袈裟なセリフとお辞儀。この行為で、アルフヒルドと過半数のメイドは頬を赤らめた。
「こここ、こんなことしでかして、わかっているのでしょうね!?」
「はい。責任を取って、結婚する所存です」
「けっ……ち、違うわよ! 私を
「「「「「は、はい!!」」」」」
ちょっとボエルに惚れてもうたアルフヒルドだったが、気を取り直してメイドを焚き付けた。
「え~? もう終わり~? もっとエッチな展開期待してたのにな~??」
その中心から男の子の声が聞こえて来たので、全員キョロキョロと探し、下を向いたところで金髪パーマの男の子を発見した。
「フィ……フィリップ殿下??」
「うん。第二皇子様だよ~?」
「い、いつからそこに……」
「ボエルが嫌味言われてるところから。第二皇子の従者を攻撃するってことは、全員僕の敵ってことで合ってるよね? 父上とお兄様にチクッちゃおっかな~??」
フィリップの発言で、アルフヒルドたちは顔を青くし、全員飛び退いて土下座した。
「申し訳ありませ~~~ん!」
「「「「「申し訳ありません!!」」」」」
さすがは第二皇子の権力は絶大。いや、その後ろにいる皇帝と次期皇帝だ。
「ボエル、これ。切り捨て御免だよ」
「はっ!」
「「「「「え……」」」」」
謝っているのにフィリップが物騒なことを言ったので、全員顔を上げたらボエルが鞘から剣を抜こうとしていた。
「さっきキスした人からやっちゃって」
「はっ!」
「ま……待ってください!? 殺されるほど酷い仕打ちをした覚えはありません!!」
「僕の従者をリンチしようとしてたの、もう忘れたの?」
「ア、アレは冗談です! ちょっと怖がらせようとしただけなんです!!」
「言い訳は聞きませ~ん。やれ」
「はっ!!」
「助けて~~~!!」
アルフヒルドが涙ながらに助けを求めるなか、ボエルはついに剣を引き抜いた。
その瞬間、ポンッと赤いお花が出現。
「はい??」
「サプラ~イズ」
そして、ボエルが驚くなかフィリップはドッキリ成功の掛け声。フィリップ以外、誰も笑ってないけど……
「アハハハハ。さっきの言葉、そのまま返してあげる。これ、冗談。ちょっと怖がらせようとしただけなの~。アハハハハ」
ネタバラシしても、全員ポカン。驚きすぎて声も出ないみたいだ。なのでフィリップも気まずくなって、ボエルに撤退しようと歩き出した。
「あ、そうだ。ボエルには帯剣させるから、次からは気を付けてね。父上にも2人までは殺していい許可もらってるから。くれぐれも、ボエルを怒らせないでね~?」
「「「「「はははは、はいっ!!」」」」」
ラストは最大級の脅し。メイドたちは再び土下座してフィリップとボエルが立ち去るのを待つのであった……
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