161 ハンター
町に出て女性2人をナンパしたフィリップとボエルは、作戦会議を経て女性の両隣に移動した。フィリップはボエルをアシストするとか言ってたけど、さっそく背の高いギャル系お姉さん、ピーアの手を握って楽しく喋ってる。
片やボエルは背の低いゆるふわ系お姉さん、モニカと会話を始めたけど、たどたどしい。会話もいまいち続かないみたいだ。
そんな4人がやって来た場所は、お高そうなカフェ。ケーキが名物らしく、モニカたちは入ってみたかったけど高くて入れないから連れて来たっぽい。
「けっこう高……」
「お兄ちゃん! 僕、これとこれね! みんなはどれにする~??」
「じゃあ私も同じ物を」
「私はケーキこっちにしよっかな~?」
「わ~。美味しそうだね~。お兄ちゃん、早く頼んで」
「あ、ああ……」
ボエルがケチくさいことを言いそうだったので、フィリップが割り込んで阻止。ボエルはなんとか店員を呼んだけど、自分の物は決まってなかったのでフィリップと同じ物にしてた。
「あっ……そこそこ美味しいな……」
飲み物とケーキが並ぶとフィリップは毒見もなしですぐに食い付いたら、感想がピーアに聞こえてしまった。
「え~。すっごく美味しいよ? ひょっとして君たちって、すっごいお金持ちだから口が肥えてるとか?」
「まぁね。ツバ付けるなら、早いほうがいいよ~?」
「あ……宿屋にしけこまないっての、本気だったんだ……」
エロイ顔でピーアの手を握り口説き出したら、ようやくフィリップの本気度が伝わったようだ。
「子供はちょっと、ね? お兄さんとなら、いいかな~??」
「お兄ちゃん? お兄ちゃんはモニカさん狙いらしいよ。だから、僕にしとかな~い?」
「最初からモニカ狙いで声掛けてたんだ……」
「どうしたの? 顔、曇りまくってるよ??」
フィリップが質問すると、ピーアは顔を近付けて小声で喋る。
「モニカはやめたほうがいいわよ。いま3股してるし、最高7股の記録持ってるし」
「わ~お。なかなか手強いハンターだったんだ……てか、お姉さんはなんでそんなハンターと一緒に行動してるの? 獲物取られちゃうじゃない?」
「まぁそうなんだけど、お零れが美味しいし。フラれたところを優しくしてあげたら、コロッとね」
「お姉さんはハイエナだったんだ……」
2人の女性はけっこうな遊び人だと知ったフィリップは、アリ寄りのナシとか考えている。
「じゃあ、お兄ちゃんには荷が重いかもな~」
「でしょ? 私のアシストしてくれな~い?」
「子供に頼むお姉さんもお姉さんだね」
「あ……本当ね。私、なんでこんな話してんだろ……」
「似た者どうしだからかも?」
フィリップもハンターなので、ハンターどうしは話が合うみたい。だけどボエルを見ていたら、モニカはつまらなさそうな顔になっていたのでフィリップが介入する。
「タイムアーップ!」
「「「タイアップ??」」」
その声に、ボエルたちは同時に首を傾げた。
「ハンターどうしがかち合っちゃったから、もうやめとこう」
「ハンター? いやいや、もう少しで落とせそうなんだから、いまやめなくても」
「だから、モニカさん、彼氏いっぱい居るの。その1人にされたくないでしょ?」
「え……」
フィリップがぶっちゃけるとボエルは信じられないって顔をして、モニカは鬼の形相でピーアを見た。ゆるふわ系が台無しだ。
「ということで、ここからは後腐れない体の関係だけを提案させていただきます! 駆け引きなんてやめたほうが手っ取り早くな~い??」
「「まぁ……」」
「いやいやいやいや。なに言ってんだ!?」
さすがは女性でもハンター。割り切りが早い。しかし、この中で唯一清純派のボエルだけは大反対みたいだ。
「なにを言ってるもなにも、お兄ちゃんは普通の恋愛がしたいんでしょ? だったら今日のところは、ワンナイトを楽しんだほうが時間を有効に使えるってもんだ。そう思うよね?」
「「まぁ……」」
「え……いいのか? おかしいと思ってるのオレだけ??」
「「「おかしいのはこっちかな~?」」」
「どういうこと!?」
何故か少数派が絶対的多数になっているので、ボエルは大混乱だ。
「で……どうする? それ相応のお礼はするから、4人で宿屋にしけこまな~い??」
「「う~ん……子供とそんなことしていいのかな~?」」
「いいのいいの。こう見えて、経験人数多いし。あっ! 実はお兄ちゃんはお兄ちゃんじゃなくてお姉さんだけど、大丈夫だよね?」
「言ってる意味が……え? 女ってこと??」
「そそ。金貨1枚ずつで手を打たな~い??」
「「そんなにいいの!?」」
子供と女ペアと一緒に宿屋に行くのは渋りかけたモニカたちであったが、お金の力は絶大。こうして昼間の初ナンパは、大成功となるのであった。
「ダメだ! ダメだダメだダメだ~~~!!」
いや、女性童貞ボエルだけが大反対して、モニカたちを追い返してしまうのであった。あ、ケーキは残らず2人が平らげてお土産まで持って帰りましたよ。
「まったく……何が気に食わないかな~」
せっかくナンパが成功したのにボエルが追い払ってしまったので、フィリップは不機嫌にジュースを飲んでる。
「気に食わないとか以前に、殿下は皇族だろうが。平民の女に手を出したらヤバイだろ」
「……あっ!!」
「完全に忘れてやがったな……」
フィリップ、完全なミス。1人ならなんでもできるのに、ここには従者と護衛の目があるんだから、そりゃ止められても仕方がない。
「黙ってることは……」
「オレだけだったら、まぁ……」
「だよね~。でも、あんなにひよっていたのに、ボエルもあの子抱きたかったんだ~。プププ」
「ひよってねぇし! 殿下がいなかったらやってるし!!」
「本当かな~? アハハハハ」
ボエル、失言。願望が口から漏れてしまったので、しばらくフィリップにからかわれるのであったとさ。
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