147 ダンジョン実習
「2回でおしまいかな?」
悪役令嬢の「ヒロインお腹ピーピー作戦」は、フィリップは時期的にこれ以上はないかとイーダからも確認を取っていた。
その策略をフィリップが防いだ方法は、単純に毒物とそうではない物を交換しただけ。この毒はたいした毒ではないし、酷い便秘の人が使う薬で販売もされているとキャロリーナから確認も取れた。
仮に疑われても、誰でも手に入るしいくらでもとぼけられるので証拠には薄すぎる。なのでフィリップも簡単な方法を取り、証拠も消すなんて面倒なことはしなかったみたいだ。
「これでいちおうは、強制力が働いても止められると確証が得られたな」
フィリップがルイーゼを守った理由は、単なる確認。自分の逆ハーレムルート入り阻止だけでは自信が持てなかったから、しょぼい事件を止めてみたのだ。
「問題は、聖女ちゃんたち、しばらくダンジョンに潜るんだよな~……どうやってついて行こう?」
近々5年生はダンジョンでの課外授業が始まるので、下級生のフィリップでは近付けない。さらにルイーゼたちは、夏休み終了までに最下層まで潜るのだから、このビッグイベントはフィリップはどうしても見たいのだ。
「姿を消せるアイテムでもあればいいんだけど……ないかな??」
見たくて見たくて仕方ないフィリップは、夜になったらダンジョンに忍び込んで、カールスタード王国で手に入れたアイテムを引っくり返して確認するのであった……
やって来ましたヒロインたちがダンジョンに潜る「ダンジョン実習」の日。参加する5年生は、各々用意した武器防具を装備して先生の話を緊張して聞いている。
ここで一番いい装備をしているのは、フレドリクパーティ。乙女ゲームまんまの装備だと、フィリップは興奮して見ている。
そのフィリップがどこにいるかと言うと、ダンジョンである四角い建物の上。結局姿を消すアイテムは見付からなかったので、隠れて見ている。
ちなみに授業は仮病を使わずに、シンプルにサボり。その旨を書いたメモをボエルのポケットに入れておいたから、今ごろ捜し回っていることだろう。
「兄貴たちから入るなら、先に入っておけばよかったな~……」
フレドリクたちの凛々しい顔とかを前から見れたのは嬉しかったフィリップであったが、他の生徒が全員ダンジョンに入ってからしか行動に移せないので失敗を悔やむ。
そうして全員入ってダンジョンの前から人が消えたら、フィリップは服装を整えてから飛び下りる。今日のフィリップの服装は、ちょっといいフード付きマントの盗賊風。モブでこんなヤツがいたような気がしたので選ばれた。
その姿で開いてる扉を勝手に潜ると生徒が並んでいたので、フィリップは人に紛れるのであった。
「ヒト、多っ」
「だな」
とあるパーティの後ろについて地下に進んだフィリップは、生徒が多かったのでつい口から出てしまい、リーダーらしき男子がそれに応えてしまった。
なのでフィリップは慌てて口を塞ぎ、振り向いた女子の目をしゃがんでかわしていた。
それからそのパーティがスライムとの戦闘に突入すると、フィリップはキョロキョロしてから本気のダッシュ。ここまで速いとレベル差もあって、他の生徒には見えない。
フィリップは次のパーティ、次のパーティと寄生しながらフレドリクたちを追うのであった。
「みっけ。さすがメインキャラ。安定した動きだ」
先に進むほど生徒の数は減り、地下2階の奥にてモンスターと戦っていたフレドリクパーティを発見したフィリップ。メインキャラということもあり、初期レベルから高いのでこのフロアは余裕そうだ。
「イケイケ~。あ、カイがダメージ喰らってる。あんなザコ相手に何やってんだ。いや、まだレベルが低いのか。だったら先にレベル上げしろよ~」
地下3階になると、フィリップは壁に隠れながら見学。お菓子まで食べて応援したり文句言ったりしてる。
「てか、真っ直ぐ正解の道を進んでるけど、地図とか持ってるのかな? ズッルイな~」
フィリップは自分で地図を作って進んでいたので、文句タラタラ。そりゃ学校主催の授業なのだから、上の階なら地図ぐらいあるに決まってる。
「しかし、回復役2人もいるのは羨ましい。ある程度ダメージ受けても回復してくれるから、安心して先に進めるもんな~……アレ? 道を逸れた。レベル上げでもするのか??」
フィリップは自分の地図と照らし合わせながら追いかけていたら、途中でこの行動の理由に気付いた。
「なんてご都合主義……アイテムボックスの場所に一直線だ。これも強制力ってヤツか……ん? そういえば、アイテムボックスって
ここで「やらかしたかも?」と気付いたフィリップ。しかし、もう先回りすることもできない道に入ってしまっているので、祈るしかない。
それでもフィリップは、モンスターを倒しながら進むフレドリクたちを楽しく見続けて、行き止まりではルイーゼがこけて一発で隠し部屋を引き当てたことには悔しがっている。自分は何度も壁にぶつかったのにと……
そのままどうなるかと待っていたら、フレドリクパーティが隠し部屋から出てフィリップの下へ向かって来たので、ダッシュで逃走。道を塞ぐモンスターの横を駆け抜けて、逃げやすい通路まで戻って来た。
そこで追いかけて来ていたモンスターをあっという間に倒したら、ドロップアイテムは急いで拾ってアイテムボックスへ。フレドリクパーティが戻って来るのを待つ。
「来たけど……モンスのリュックの膨らみは変わってないな。これはやっちまったな~」
見た感じ荷物は減っていなかったから、アイテムボックスは取得できなかったとフィリップも反省。でも、こんな便利な物をフィリップが手放すわけがない。
「今日はここでレベル上げで終わりそうだな。か~えろっと」
フレドリクパーティはモンスターを探して3階から移動する気配はなかったので、フィリップは来た道を戻るのであった。
「おい、君? 仲間はどうした? モンスターにやられたのか??」
「おかまいなく~~~!!」
「消えた……」
ただし帰り道には生徒がいっぱい居たから時々フィリップは見られてしまったので、幽霊が出たのではないかと噂されるのであった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます