109 待ち構えていた者
フィリップは初代硬貨にビビって、ビクビクしながらボス部屋の奥に進んでいた。
「やっぱりこの玉座って気になるよね~?」
そう。ケルベロスが現れる直前に目に入った玉座がずっと気になっていたから、まだ帰らずに奥に進んでいたのだ。
「ケルベロスは座れないんだから、ここには誰かがいたことになる。ということは、ケルベロスは番犬ってところか。それじゃあ、主人はどこに行った?」
フィリップはブツブツ言いながら玉座を2周してみたが、何も見付からないので座ってみた。
「う~ん……わからん。正規ルートがあるとしたら、カラフル王子とクリちゃんがケルベロスを倒して、ここに座る者と戦うとは思うんだけど……時期的に合わないとか? まさか前の国王が、何かしらのアイテムを持っていてここに座るとかないよな?? それだと、めっちゃストーリーぶっ壊しているな。アハハハ」
フィリップは勝手にストーリーを作り、笑いながら立ち上がった。
「考察はもういいや。それよりも、裏ボスだ。こういうパターンだと、玉座の裏が怪しいだよね~? でも、継ぎ目みたいな物も無かったんだよな~……」
玉座の裏に回ったフィリップは寝転んで見たり叩いたりしてもよくわからない。
「空洞とかわかんないよ~。もうっ!! ……へ??」
なので、八つ当たりで地面を強く踏み締めたら、2メートル四方ぐらいの底が抜けた。
「うわぁぁ~~~……」
フィリップはいきなり開いた穴に落ちて行くのであった……
「ど、どうしよう?」
フィリップは落下したことに驚いて焦っていたが、途中で風魔法で減速して氷の足場を作ったので悩んでいる。なまじ落下耐性があって対応できてしまったから、行くか戻るかという選択肢が生まれてしまったからだ。
「あ、ハシゴあるじゃん。ということは、どこかにフタを開けるギミックがあったんだな。失敗失敗。ま、反省はまた今度するとして、ここまで来たら行くしかないよな~。念の為、MPポーション飲んでおこう」
こんな面白い場所に足を突っ込んだどころか全身を突っ込んだのだから、その先が気になるフィリップ。MPを回復したら、覚悟を決めて足場を消した。
そして風魔法で減速しながら長い縦穴を下り、赤い光と地面が見えたらシュタッと着地。
「10点満点! ……とか言ってる場合じゃないな。あっつ~!!」
そこは足場と後ろの壁以外、マグマが沸き立つ灼熱地獄。目の前には橋のような床が伸びており、
「暑いけど、耐えられない暑さではないか……マグマがあんなに近いのにどうなってんだろ? 空気も普通。若干、硫黄くさいか。ま、最終ステージに足を踏み入れたら、ガス中毒で全滅しましたじゃ話にならないから大丈夫かな??」
ひとまずフィリップは、熱魔法で自分を冷やしながら休憩を兼ねてしばし待機。空気を吸っても体調に変化がないことを確認したら、やっと橋を渡り出した。
「うお~。これ、本物のマグマなのかな? そんなに熱く感じないし、偽物の可能性も……」
橋の下に見えるマグマに感動していたフィリップだが、疑問に思ったらなんでも試したいお年頃。いらない服を取り出して落としてみた。
「うお~。マグマに落ちるまでに燃えた~。こえ~」
服はマグマに触れることなく着火。それが面白かったのか、いらない鉄製品なんかも放り込んでるよ。
「うん。落ちたらダメなヤツだね。気を付けよ」
でも、ふと我に返ったフィリップは恐怖が勝り、テクテクと奥に進んで行くのであった……
「なんか馬鹿デカいドラゴンが寝てるんだけど~?」
橋を渡りきった広い円形の床に乗った直後、先程までいなかった真っ黒なドラゴンが寝息を立てているので、フィリップもチビリそう。全長は100メートルを軽く超えてるもん。
「よし。今日の探索はここまで。帰ろっと」
というわけで、フィリップは勇気ある撤退。帰還アイテムを取り出して握り潰した。
「アレ? 景色が変わらない……逃げられないヤツじゃな~い??」
けど、脱出不可能。元来た道も見えない何かに塞がれていたので、ふざけた言い方をしているフィリップでも冷や汗が止まらない。
そんな折り、目の前のブラックドラゴンは鼻をピクピクさせたと思ったら寝息が止まり、目を開けた。
「フアァ~。我の眠りを妨げる愚か者は、どこのどいつだぁぁ」
そして頭を持ち上げると大口を開けてあくびをし、腹に響くような声を発したので、フィリップは度肝を抜かれている。モンスターが喋るとはこれっぽっちも思っていなかったっぽい。
「あの~……もう少し寝ていたらどうですか?」
なので、揉み手で戦闘の拒否。懐柔策に出た。
「その意気やよし。ならば、我が相手になってやろう」
「はい? 僕、戦いたくないですよ??」
「かかってこい!!」
「ちょちょちょ! ちょっと待って! 話を聞いて!!」
「来ないなら、我から行くぞ。消し炭になれ!!」
「ぎゃああぁぁ~~~!!」
だがしかし、話は噛み合わず。ブラックドラゴンは灼熱の炎を口から放ち、戦闘が始まったのであった……
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