105 新たな物語
カラフル王子を撃退したフィリップは、風魔法に乗ってバルコニーに着地。ニヤニヤしながら下を見ていた。
「クリちゃんを助ける主要キャラだと思うけど、まだ立ち上がれるのかな~?」
フィリップがカラフル王子をおちょくっていたのは、ここカールスタード王国を舞台とした乙女ゲームがあるのではないかと仮定しているから。
それに気付いたのは、カラフル王子の髪の毛の色。誰もおかしいと言い出さないし、ラーシュですらスルーしていたから、フィリップは続編か違う物語があるのだと仮定したのだ。
ダグマーに調べさせたところ、カラフル王子は全員、魔法適性の複数持ち。バルタサールに至ってはみっつも使える。大人になった頃には、かなりの脅威だとダグマーが分析していたほどだ。
なのでフィリップは、カラフル王子の性格もおちょくりながら確認していた。正義感が強く真面目だったから、文句なしの主人公気質。ただ、色から察するに、もう1人ぐらい居てもおかしくないと思って、ラーシュで試していたのだ。
この物語は、フィリップの予想ではこう。学校の在学中か卒業後に、町中でクリスティーネが出会ってどちらかが恋に落ちる。事情を説明したら、ふたつ返事でカラフル王子がクーデターに加わり、成功の
その時のクリスティーネの年齢は20代半ば。年下の男の子に振り回されるような物語になるから女性がターゲットの乙女ゲームとしては、かなりアリなのではないかと予想している。
ただし、その未来はすでにない。フィリップがやっちゃったもん。
「もしもクリちゃんと絡んでも、もう結婚までいかないだろうな~……王子様との結婚、阻止しちゃったけど、よかったのかな? ま、いっか。さっさと隠蔽工作しよっと」
こうしてフィリップは、気絶している警備兵には「整備不良で壊れたドアに下敷きになっていたのと、賊にしてやられて僕が殺されそうになったのと、どっちを報告する?」と脅して秘密を守らせ、階段を下りて行くのであった……
時は少し戻り、フィリップが自室に戻るちょっと前、1階にあるお風呂から帰って来たダグマーがベッドに入った直後、薄らと悲鳴が聞こえたので音魔法を展開した。
位置的に聞こえづらいが複数の少年の悲鳴だと確認が取れたダグマーは、パジャマのまま悲鳴が聞こえた場所を目指して走っていた。
「あなた方は……」
そこに到着すると、ガクガクと震えて失禁しているカラフル王子。その周りには剣が落ちていたので、ダグマーに嫌な予感が働く。
「そこで待っていてください! すぐに人を寄越します!!」
ダグマーは焦りながら
そして、またダッシュ。警備兵に止められるが、「殿下が緊急事態だ」と怒鳴りながら脇を走り抜け、時には殴り、階段を駆け上がっていた。
「あ、ダグマー。そんなに急いでどうしたの?」
「殿下!? ご無事でしたか!?」
3階を超えた辺りで、のん気なフィリップを発見。ダグマーは顔を見た瞬間、駆け寄って抱き締めた。
「ぐるじ~。どうしたんだよ~」
「も、申し訳ありません。異変がありまして、殿下に何かあったのかと心配で……」
「うん。ありがとう……なんか兵士の人が怒ってるけど、ひょっとして強引に上って来た?」
「緊急事態でしたので……」
「姫を助けに来てしまったか~」
礼を言ったフィリップであったが、ダグマーが塔の天辺に幽閉されている姫を助けようと兵士を倒して進んでいたので、一緒に謝罪するのであった。
「殿下こそ、こんな時間に何をしているのですか? やはり、何かあったのでは……」
警備兵を追い払ったら、ダグマーの質問が来た。
「いや~。部屋のドアが老朽化か整備不良で壊れちゃったみたいでね。ダグマーの部屋で寝れないか聞きに来たの」
「ドアがですか? 侵入者がそこまで上って壊したのでは……現場を先に見させてもらってもよろしいでしょうか??」
「見ても何もないよ? ドアの下敷きになっていた兵士に留守番頼んだし」
「それでもです。いえ……その兵士が怪しいですね。拷問して吐かせます」
「拷問はいいから!?」
ダグマーが暗部モードに入ってしまったので、フィリップも背中に乗って6階へ向かう。階事にいる警備兵にはフィリップの顔を見せてフリーパス。いや、フィリップが今回だけと説得して通してもらう。
そうして壊れたドアの前にいた警備兵には、ダグマーは恐ろしいほどの殺気を放ちながら何があったかと聞く。その殺気を浴びた警備兵は、フィリップの考えた言い訳を大量の汗を流しながらなんとか言い終えた。
「何か隠していますね。指を切断してもいいですか?」
「こわっ。かわいそうだからやめてあげて~~~!!」
フィリップが説得して、やっとこさダグマーも整備不良を渋々受け入れてくれたのであった……
それから場所を変えようと階段を下りていたら、騒ぎを聞き付けた眠そうなラーシュが廊下に出ていたので、事情を説明してラーシュの部屋で会議となった。
「カラフル王子が外にいたって、何してたの?」
「事情聴取はしていませんので、わかりません。ただ、4人とも武器を手放して怯えていたので、何者かと戦闘をしていたのではないかと予想しております」
「あ、だからダグマーは僕の元へ飛んで来たんだ」
「はい。悲鳴を聞いた時点で、殿下の元へ行くのがベストでした。申し訳ありませんでした」
「そんなのいいって。僕のほうはたいしたことなかったし。それより、あいつら大丈夫かな~?」
フィリップはカラフル王子を心配してから、自分の話に戻る。
「とりあえず、ドアが直るまでダグマーの部屋で寝させてよ」
「私の部屋は狭いので……ラーシュ様の部屋で寝てはどうでしょうか? おふたりなら一緒に寝ても、ベッドも狭く感じないと思われます」
「えぇ~。男と一緒じゃ眠れないよ~」
フィリップが嫌がるので、ラーシュが代案を出す。
「わかりました。私がソファーで寝ますので、殿下はベッドを使ってください」
「ラーシュ君。ここはそんな気遣いいらないんだよ?」
「どうしてですか??」
「僕はダグマーと一緒に寝たいの!」
「ますますダメですね。ダグマー、殿下のことは任せてくれ」
「はい……それでは失礼します」
普段やることやっているダグマーとしては、フィリップと一緒に寝たいとは思ったけど、職務を優先して部屋から出て行くのであった……
「いやだ~。ラーシュに犯される~~~」
「変なこと言わないでください!!」
なのでしばらくフィリップは、子供みたいに駄々を
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