103 飽き飽き


 カラフル王子と接触してから3日。カラフル王子は短い休憩時間を使い、なんとかフィリップと会話するところまでやって来た。ラーシュがこのままではいつまでも決めポーズをやらされると思って、アシストしたのが大きいけど。


「で……なんだっけ?」

「ですから、暴力や暴行を受けた人に謝罪しろと言ってるんですよ~」


 あまりにも毎日会いすぎて、バルタサールも怒りのボルテージは激減してるな。


「そんなのそいつらに被害届け出させたらいいことでしょ。てか、なんで今まで出してないの?」

「それは~……時間ですね。また来ます」


 フィリップの反撃に返せなかったカラフル王子たちは、少し早いが撤退。次の休み時間には勝ち誇った顔で戻って来たけど、自発的に決めポーズをやったから、普通の顔になってた。


「裏から手を回しているのですね! 被害届も何度も握り潰されたと言ってましたよ!!」

「お~。新情報が出て来たね~」

「拍手していると言うことは認めるのですね!!」

「認めないよ。証拠持って来たら考える。被害者でもいいよ~?」

「ああ言えばこう言う……わかりました! 目に物見せてやります!!」


 というわけで、カラフル王子はフィリップの悪事を暴こうと走り回り、2日後にやって来た。


「汚いぞ! 官憲にも被害者にも裏から手を回しただろ!!」

「決めポーズ忘れてるよ~?」

「クソ~~~!!」


 せっかく勢いよくやって来たのに、決めポーズをやらされて負けた気分になったカラフル王子。


「それで~……証拠は??」

「だから、殿下が握り潰しているから出て来ないし、被害者も怖がってついて来てくれないんですよ~」

「だったらもう諦めな。敵が強大すぎただけだよ」

「こ、これが帝国の力か……私たちは諦めないぞ~~~!!」


 カラフル王子は帝国の力におくすることなく、フィリップと戦い続けるのであった……



 カラフル王子が教室からダッシュで出て行くと、ラーシュは哀れんだ顔で自分の席に座った。


「いい加減、無駄なことをしてると教えてあげたらどうですか?」

「無駄なことなんてないよ。これも経験だ。ニヒヒ」

「なんの経験なんですか。噂話を信じるなと、一言いってやればいいことですよね?」

「違う違う。あいつら正義の使者だと勘違いしてんじゃん? 悪者と戦うなら、それ相応の証拠を持って来ないと倒しちゃダメって教えてあげてるの」

「殿下が悪者……似合ってますね」

「やっぱり~? この制服、黒く染めてもらおっかな~??」

「ダメですからね! ただでさえ勘違いされがちなんですから、服装ぐらい普通にしていてください!!」


 ラーシュは嫌味を言ったのにフィリップが乗って来るので、慌てて止める。フィリップではやりかねないと思ったらしい……



 それから2日経つと、フィリップはいつも通りクリスティーネの寝室を訪れて、マッサージをさっそくやってからお喋りしていた。


「小国連合の王子と揉めてるらしいですね」

「ん~? クリちゃんの耳にも入ってるんだ」

「はい。揉めてるだけならフィリップに任せておこうと思ったのですが、4人から直訴状が届きまして」

「プッ。あいつら、クリちゃんに泣き付いたんだ」

「要約すると、フィリップが帝国の権力を使ってやりたい放題してると書いていたのですが……女子生徒をレイプしたのですか??」

「けっこう効果あるみたいだね……」


 クリスティーネは信じないと思っていたのに、怒って問い詰めて来たからフィリップも驚きを隠せない。


「僕がそんなことしないの一番知ってるでしょ?」

「そうですけど~……私の時は近くなかったですか??」

「近いけど、ギブアンドテイクじゃ~ん。クーデターにいくら使ったと思ってんの? クリちゃんの体ひとつで返せないよ~??」

「ですよね~。フィリップは、そんなことしないですよね~」

「話、逸らしたね……」


 お金の話を出したら、クリスティーネは従順に。フィリップはスラム街全域にお金をバラ撒いていたのだから、とても返せる額ではないもん。


「小国連合の王子には、いい加減にしないと死刑にすると返しておきますね~」

「やりすぎだから!!」


 ただし、クリスティーネが怖いことを言っていたので、フィリップは「一切手を出すな」と止めて、クリスティーネに手を出してから帰って行ったのであった。



「「「「「色彩戦隊ブンテレンジャー!!」」」」」


 今日も今日とてやって来たカラフル王子。


「飽きたから、もうそれいいや」

「「「「「ええぇぇ~……」」」」」


 でも、フィリップは冷めた感じで断るので、5人はガックシ。今日のは会心のできだったらしいけど、我に返ったら「うっひゃ~!」と心の中で喜んでいた。パープルのポントゥス以外。


「それで……今日はなんの用?」

「女王陛下にも手を回していたとは驚きです。どれほど悪事を隠したいのですか!」

「別に隠してないんだけどな~……」

「ここまで証拠が出て来ないということは、隠しているからでしょう!」

「それは、僕が悪いことしてない証拠というのでは?」

「被害者は泣いていたのですよ!!」


 このやり取りにもフィリップは飽きて来たので、わかりやすいヒントを与えてあげたけど、バルタサールは聞く耳持たず。


「僕なら被害者を疑うな~」

「なんて外道なんだ! 殿下がやったことだろう!!」

「もういいや。タイムア~ップ」

「タイムアップ??」

「明日からこのフロアに立ち入り禁止」

「逃げるのか!?」

「逃げるも何も、お前たちはなんの証拠も持って来ずに、僕を非難しているだけじゃん。そういうのなんて言うか知ってる? 冤罪って言うんだよ」

「え、冤罪……」


 フィリップに睨まれたカラフル王子は、周りを見渡したけど味方になってくれそうな目はないので、冤罪が事実じゃないかと頭によぎった。


「そ、そんなことない! 必ず証拠は見付け出してやるからな~~~!!」

「もう来るなよ~~~」


 それでも諦め切れないカラフル王子は、捨て台詞を残して走り去るのであった……

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